十一 ※無記載、無記名
その日は雨だったらしいです。
いつも人が少ない商店街には人がたくさん歩いてました。珍しいと思います。ほとんどシャッターのしまったお店ですから。
古びた肉屋の軒先で雨の止むのを待つんです。ざあざあという雨の音がうるさいなとおもいます。べしょべしょになったスカートを見ていたら、お肉屋さんがだんだんと包丁を叩きつける音が聞こえて、私は怖くなりました。その音と一緒に私も切られていく感じがして。だんだん、だんだん、包丁の音がシャッターの向こうから聞こえてくるたびに、手足も痛みます。早く雨が止んでほしいと思うんですけど、次々と軒下に人がやってきます。その人たちが私の代わりにだんだん、だんだんと切られていきます。私はずっとうつむいているので、みんなの足だけが見えていますけど、それでもだんだんと包丁が叩きつけられます。さっきまで一緒に立っていたみんなの足がポロポロと転がって軒下から転がっていって雨でぐしょぐしょになるんです。みずたまりがふえていきます。ふえていったみずたまりがひとつになって、私の靴もぐしょぐしょになります。靴の中がべたべたしてとても気持ちわるくなってしゃがみ込むんです。そうしたら転がっていったはずの足と手と内臓が私に集まってきますから、それをひとつひとつ食べるんです。お肉ですから、ひとつひとつ。
※編集部注 原文ママ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます