降臨!新宿を断つ機神!

 二時間ぐらいかな。あちこち回り子供らは一通りの装備を揃えた。

 梨華ちゃんは希望通りのゴッツイガトリングガン。

 属性の力を弾丸に変えるタイプなので梨華ちゃんにはピッタリだろう。弾薬代も浮くし。

 まあ銃火器なんで定期的なメンテが必要だがそれは互助会で格安でやってくれる。そこは必要経費だ。

 他に欲しい武器はなかったのかあとは服の下に着れるボディスーツタイプの防具を買って終了。総額で大体、六十万ぐらいか。


 一方の光くん。こっちは意外や意外、予算ギリギリまで買い込んだ。

 まずは武器。大興奮の光線剣に加え当初の予定通りに刀も購入した。

 如何にもなポン刀って感じじゃなくサイバーパンクとかに出て来そうな高周波ブレード系ね。

 見た目は日本刀っつーか、サムライソゥド(良い発音)とか呼ばれそうな若干ゴテっとした感じ。

 「かかかかかカッケーで御座る……」とは光くんの言だ。わかりみが深過ぎて困る。

 それに加えて防具は同じくボディスーツタイプのに動きを阻害しない手甲も追加してギリギリ百万以内ってとこ。


(……普段は倹約家だけど今回は命に関わるって大義名分があるからな)


 財布の紐も緩んじゃったんだろう。普段我慢してるから抑圧されてる分もあると思う。

 まあ何にせよホクホク顔の子供らを見ていると俺まで嬉しくなってくるぜ。


「そいじゃあどっかで飯食おうか」


 俺の終業に合わせてもらったからな。二人ともまだご飯は食べていないのだ。

 光くんも百合さんに今日は遅くなるから外で済ませるって言ってたみたいだし。


「……」

「うん? どした梨華ちゃん」

「ああいや、ママと高橋さんに鈴木さんだっけ? 大丈夫かなって」


 あぁ……そういや忘れてたわ。


「佐藤さんは全然、心配してないんですね。事情はよく分かりませんが喧嘩、してたんでしょう?」

「そうだね。でも千佳さんも馬鹿二人も申し訳なさを引き摺ってるだけだし」


 そこに憎悪や敵意があるわけではないのだ。

 だったら向き合って気が済むまで話をすればわだかりも消えるだろうよ。


「アイツらも何だかんだ千佳さんには恩義を感じてるだろうしな」


 裏の世界に足を踏み入れる切っ掛けになった渋谷での一件。

 知恵と勇気を振り絞って抗ったとは言え千佳さんが来なきゃ俺たちは力尽きてた。

 友人であり恩人なのだ。千佳さんは。


「ママとオジサンたちって裏の世界に居た頃はどんな感じだったの?」

「んー……西遊記って知ってる?」

「うん。猿、豚、河童のあれだよね」

「西園寺さん。間違ってないけどざっくりし過ぎ……」

「まんまあんな感じだよ。千佳さんが三蔵法師で俺が悟空。高橋と鈴木が八戒に沙悟浄ってとこか」


 ただしお供は全員DQNみたいな?

 悟空(ウェーイ系DQN)。

 八戒(荒くれ系DQN)。

 沙悟浄(真面目系DQN)。

 改めて振り返るとクソみてえなお供だな。お師匠様であるところの千佳さんも当時は天然だったしストッパーがいねえ……。


「お、そうだ。西遊記と言えばさ。俺、マジもんの悟空から如意棒巻き上げたんだぜ」

「「え、孫悟空マジで存在するの!?」」

「神様だって居るんだしそりゃまあ……ってかアイツも神仏の類だし」


 最初は魔獣とかそういう分類だったんだろうが旅の終わりに仏として認められたからな。

 闘戦勝仏――――奴の別名だが日本じゃ知名度はイマイチだろう。


「じゃあオジサン、仏様からカツアゲしたの……?」

「巻き上げたつってもカツアゲじゃねえよ」


 アイツも昔はやんちゃしてたが今は……いや、天界での行状をやんちゃで括って良いかは微妙だな。

 ともかく昔は尖ってたから俺みたいなん居ればちょっかいかけていただろう。

 でも今はファンキーなジジイって感じで面倒見も良いし人間界のことも気にかけてくれてる守護者側の神仏だ。


「普通に麻雀で勝って巻き上げたんだよ」


 二十九の春のことだ。

 そろそろ三十路かー……と若干センチな気分の俺にある招待状が届いたのだ。


「世界中の曲者を集めたイカサマ麻雀大会さ」


 俺以外全員、人外だったが……まあ楽しかったよ。

 イカサマを仕掛けたその瞬間に看破出来なければそのまま通るってルールでもう皆、やりたい放題だ。

 特に悟空は仙術に長けた技巧者だからな。かなり手ごわかった。

 アイツが化けた牌があるって気付いた時は笑ったぜ。

 束の間見えたアガリ牌は猿に化け幻に消えた。佐藤、痛恨のチョンボ……! ってなもんよ。

 まあそれはともかくだ。


「その大会に参加する場合は何かしら貴重な品を提出するルールでな。勝った奴が総取りしてくんだわ」

「……それで如意棒を?」

「孫悟空、代名詞の武器を賭けたの?」

「いやあれってそもそも武器じゃねえし」


 江海だかどっかの水深を測るために使われたのを悟空がええやんとパクっただけ。

 使ってる内にもうお前ので良いよってなったそうだ。


「んで二度と作れないって代物でもないからな」


 今は太上老君が作った二代目如意棒を使ってる。

 まあこれも武器としてではなく孫の手や先っぽ変化させて遠いとこにある物を掴むマジックハンドとしてだが。


「英国からお越しのマーリンとかも……あ、マーリン知ってる? アーサー王伝説ね」


 エクスカリバー。名前ぐらいは聞いたことあるだろう。

 エクスカリバーⅡなるモノを大会のために妖精に用意させてたぜ。

 価値あるものだが唯一無二のモノを賭けてたわけではないのだ。

 その手の代物は本人の物でも神話や伝説全体のシンボルの一つになってるようなのばっかだからな。

 幾ら所持者でも勝手に賭けるわけにはいかないのだ。


「なるほど……あの、見せてもらって良いですか?」

「良いよ」


 異空間に仕舞ってある如意棒を取り出して見せる。


「お、おぉぅ……」

「ちょっと持ってみる?」

「い、良いんですか!?」

「あ、ずるい私も!!」

「はいはい。あ、伸ばす時は大体これぐらいって頭の中でイメージして伸びろって言って御覧」


 あんまり伸ばし過ぎると重さも半端ないので気を付けるようにと言って如意棒を手渡す。


「伸びろ如意棒! わ、伸びた! ホントに伸びたよ暁くん!」

「つ、次俺! 俺も!」

「はっはっは……っと着信か」


 スマホを取り出し確認すると、どうやらあっちも終わったらしい。

 飯行こうぜという誘いが来たのではしゃいでる二人を落ち着かせ、闇市を後にする。

 アルタ前で待ってるということなので俺たちもそっちへ向かい千佳さんらと合流。


「ママ、仲直り出来て良かったね」

「ええ、あなたのお陰よ」

「ところで佐藤くん。そっちの男の子は? まだ名前も聞いてないんだけど」

「あ、失礼致しました。暁光です! 佐藤さんには本当にお世話になっていて……」

「……真面目だ。鈴木みてえな似非じゃねえマジに真面目な子の匂いがする」


 和気藹々とした空気だが、


「む」

「「「!?」」」


 俺と、少し遅れて千佳さんらも気付く。


「佐藤ォ!!」

「もうやってる」


 巨大な何かが転移で出現しようとしている。

 それを察知した俺は即座に出て来ようとしている何かと自分たちを隔離させた。

 その数秒後。影絵のようになった新宿にそいつは姿を現したんだが……。


≪…………ロボ?≫


 それはどう見ても巨大ロボだった。

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