VSフォルティス・サクリフィス:決着
「流石にこれはもう俺の勝ちで良いだろ」
余裕の態度を示しつつ、しかし細心の注意をしながらクソ野郎に近付きながら言う。
「寝言は寝て言うものだよサース。そんなこともわからないぐらい馬鹿になった?」
クソ野郎が額から大粒の脂汗を出して空いた穴に手を当てながら相も変わらず強気な言葉を使う。
だが、今、目の前のクソ野郎は内心かなり慌ててることだろう。
「回復出来ないだろ」
「……なんのことだかわからないけど、だから何?」
「『傷口に指突っ込んでからワンと元気良く鳴け』」
「は?アガ……、グァ、ぐ……、ワン!…………僕の体に何をした?」
『奥の手』を使った訳ではない。当然それでも似たことは出来るが、思い通りに動かすなんてことまでは出来ない。
答えはトラトトだ。トラトトとトラトトが纏っていた水だ。
トラトトが纏っていた水は、当然だが三股の先まで隙間無く纏っていた。そして刺さると同時にその水はクソ野郎の体内入った訳だ。
ならあとは簡単な話だ。トラトトの権能は水の支配。見た目上ではそれほど入った量はそれほど多くは見えないだろうが、籠めた魔力と密度はクソ野郎の体全体に行き渡るまで時間を置かなくても良いほどの量だ。
トラトトの権能でその支配している水を操作してやれば良い。そうすれば今のクソ野郎と同じ現象を起こせる。
だから本当は命令内容を口にする必要も無かった。口にしたのは単なる嫌がらせだ。
どういう訳かクソ野郎は相当俺の言うことを聞きたくないらしいからな、なら屈辱を与えるのに『命令を聞かせる』というのはとても効果的と言える。
その証拠に今にもクソ野郎は舌を噛み千切って自殺しそうなほどカオが醜く歪んでいる。
あぁ、
「そのカオが見たかった」
「……これ、そんなに長く続かないよね?良いよ、わかった。僕の敗けだ。認める。
だからサース、早く僕を殺してくれないかな?」
長年の目的が達成された。
その事に胸一杯になっていれば唐突に、クソ野郎はそんなことを口走り始めた。
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