君と出会うまでの8年間


りするが、そこには一定の距離が有って、なのに俺は構わず感情剥き出しにして張り合ってくれるからだと答えた。


 俺が街の学園や冒険者ギルドでせっせと我武者羅に頑張ってる間に、奴はいつの間にか手の届かない所まで一気に進んでいた。話しぶりを聞く限り、奴にとっては苦労なのかもしれないがやはりなんの苦労も無く全てを余裕で出来たらしい。


 学園での俺は戦闘系の授業でも1番だった。授業の締めであるテストでも満点以外を取ったことはなかった。冒険者ギルドではポーションが売れて、その上ランクも半年前にはDまで上がっていた。このDランクというランクは当時13歳という歳を思うと過去に前例が無い訳ではないが快挙と言えるほどの戦績だった。


 そういった幼少期から続く悲惨不運不幸が払拭され遂に報われた。もっと頑張らねばと上向きな気持ちで、悪く言えば調子乗ってる時にこれ等を聞かされた俺は、本当に自殺したくなるほど辛くなり、それ以上にフォルティス・サクリフィスに対して殺意を覚えた。

 「なんでお前ばっかり」「なんでお前だけ」「お前さえ居なければ」

 何より心が折れかけた。俺は毎日こんなに頑張ってるのに、なのにお前はなんの苦労もなく俺の上を行くのかと。なんでこんな理不尽なんだと。


 でも、それ等はよくよく考えれば今更だった。

 そこで俺は、何故これほど自分が頑張っているのかを改めて思い出した。そしてこう思った。


 「なんだ、見積もっていた目標が上方修正されただけか」と。


 そう、今までとなんら変わりはない。やることは同じなのだ。

 フォルティス・サクリフィスを学生の間に越える。それがただ、国規模になっただけだ。



 それを聞いた翌日から俺は、必修科目と魔法薬学の授業、それにギルドに卸す分のポーション作成だけの為に学園に通い、残りの時間はギルドでの魔物討伐や盗賊討伐の依頼ばかりを請けて、寮に帰ればより効率的に魔力を運用出来るかとオリジナル魔法の開発に取り組み、精力的に実力を磨き続けた。


 3ヶ月後には首都の学園の受験だったが、使える物は何でも使うと決めフォルティス・サクリフィスを利用した。

 搾れるだけ奴から帝達の情報を搾り取り、それから奴に俺に秘密を打ち明けたことがどれだけ危険性の高いことかを説き、自分が如何に不味いことをしたのかを説き、俺にとって大事な時期に何告白してくれてんだと詰めた。

 そして「俺も実は中等部からは首都の学園に通おうと思っててな」と溢し、奴に奴か他の帝達の権限で俺を街に居ながら入学受験させてくれないかと頼んだ。

 通してくれないなら獣人族やエルフ族の奴等に帝達の個人情報をバラすぞと脅して。


 マハラ帝国とアカバ王国はサクラ共和国的には表向きは同盟国という扱いだが仮想敵国だ。流石に仮想敵国に最高戦力であり国の重鎮の秘密をバラすことの不味さは理解しているらしく、それがわかっているなら俺がこの情報を持っていることつまり俺が秘密保持のために帝達に殺される可能性が高いということを物凄く噛み砕いて説いた。


 そこまで脅して受験を街でも出来るように無理矢理取り図らせた。


 結果は実技は水を司る帝である水帝との模擬戦で、筆記は水帝の持ってきた問題を1時間以内に全て解けというものだった。

 奴から搾り取った情報曰く水帝は女だ。そして魔法専門だ。対して俺は基本近接専門だ。この時点でかなり無茶な部類だったが、渡された筆記は後から調べると高等部レベルで、尚且つ量は普通に読めば40分は掛かるようなものだった。

 つまり帝達が出した結論は、恐らくフォルティス・サクリフィス的に物凄く弱い近接しか出来ない水属性しか使えない俺に、水属性の頂点たる水帝を当てて実技を封殺。筆記についてもどうやっても合格点未満になるよう条件を付けて落とそうというものだった。

 普通に首都の編入試験は受けて良いとか馬鹿にしたような笑みを浮かべながら言われたから、我が儘を言ってきた俺に対して制裁を咥えに来たということだと察した。

 奴自身も苦笑いしていたから、恐らく間違ってないと思う。



 だから本気を出した。本気で筆記は問題を読みながら右手で回答をして、回答を書いてる間に次の問題を読んで左手で回答を書いて、次の問題を読みながら回答を終えた右手で次の回答を答えた。

 それで無理矢理40分で筆記を終わらせて、そのまま水帝と戦った。

 模擬試験のルールは水帝に一撃入れるというもので、模擬試験開始は物凄く離れた状態で開始された。

 だから散々開発したオリジナル魔法をこれでもかと使って水帝との距離を縮め、顔面を殴ってやった。

 そこで体力もスタミナも魔力も無くなったため、それに一撃入れたため模擬試験は終了。実技はその場で合格となった。


 ただ終わったあと、水帝にどうやったのかと色々詮索されて、1つだけオリジナル魔法を教えることでその場を逃れた。オリジナル魔法を教えた直後に「こんな苦労してこの魔法覚えなくても魔力が有れば似たことは再現出来るわね。ほらこんな風に」とか言って俺が教えたオリジナル魔法と同じ事象を俺に叩き込まれてズタボロにされた。

 総帝と言い、水帝と言い、一般人への意味の無い暴力を奮ってくるんじゃねぇよって本気でキレそうになった。

 でも流石にまだ届かないのは今回でわかったから我慢した。

 コッチは1発ぶん殴るだけで精根尽きたのに、向こうはあんまり疲れてない。そんな相手に条件無しで勝つことが出来ないなんてことは子供でもわかる。だからこの時はまだ堪えた。



 筆記は無事合格した。合格は8割正解だったが、奴曰く9割合っていたらしい。

 「サースって勉強出来たんだね」って言われたのはイラッとしたけど。


 合格が決まってからは奴が学園に居る時は嫌がらせするようになった。

 最初は足を引っ掛けて転ばすだとか、物を隠すとか、そんなレベルの低いことをやってた。でもそれに飽きて、他に何をやろうかと考えた結果、魔法や魔法薬学の応用で毒草とかを使ったイタズラを思い付いた。

 魔法は水帝との模擬戦で使った物を更に改良して範囲と威力を押さえて叩かれたら皮膚が赤くなる程度の物を使った。

 毒草とかを使ったイタズラは主に下剤やしゃっくりが出る物にした。この程度であれば大きな問題は起きない。

 仮にも奴はサクラ共和国のトップだ。効能も学園に居る間だけになるように調節した。




 そうやって半年を過ごし、次の秋口からは首都の学園に編入だって時期。

 既に街の学園の下等部を卒業して首都の学園の寮に入寮し、中等部からの奴へのイタズラのための毒草集めやポーション用の薬草集めをしている時、そんな時に俺は彼と出会った。


 唯一無二の親友、魔王のマー君と。



●  ●  ●  ●  ●


 水帝との模擬戦はこのままこの作品が伸びたらいずれなんらかの形で公開します。


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