学年一の美少女が自暴自棄になっていたので説教したら、2人だけの秘密の関係が始まった
あおぞら@書籍9月3日発売
プロローグ 美少女をナンパから助けるが……
「颯太君、今日は一体何をするのですか?」
昼休憩の学校の空き教室で、世にも美しい少女が首を小さく傾げると共に艶やかな腰まである黒髪が少し揺れる。
彼女の名前は、
平々凡々な俺――
勿論彼女は学校一の有名人と言っても過言ではない。
では何故そんな有名人の彼女が、冴えない俺と2人で空き教室にいるのか。
それは――
「そうだな……今日は美月の好きなスイーツでも食べに行くか。丁度最近新しい店が出来たらしいんだ」
「そうなのですか!? 是非行ってみたいです!」
「なら今日はそこで決まりだな」
「放課後デートというやつですね……とっても楽しみですっ!」
「付き合ってないからデートなのか分からんが……俺も楽しみなのは間違いない」
――「私に恋というものを教えて下さい」と言う美月の願いを叶えるためである。
何故そんな願いをこの俺がされたのか。
それは約1ヶ月前のことである。
俺――鈴木颯太は何処にでも居る普通の男子高校生である。
ラノベのような友達の居ないボッチの陰キャでもないし陽キャと言えるほど青春を謳歌しているわけでもない。
だが友達は普通にいるし、比較的誰とでも話すことは出来る。
それにラノベや漫画、アニメ好きと言うオタクの一面もあるが、特に隠したりはしていない。
まぁ陽キャには少し敬遠されているが、別にイジメを受けるほどではないしな。
そして今日は土曜日のため学校は休み。
そのため昼から友達と本屋に行ったりゲーセンで遊んだり、カラオケに行ったりと久しぶりに遊びまくっていた。
「なぁ颯太ーどうするー」
友達である
しかし相変わらず主語がなくて何が言いたいのか分からない。
だが、和也の手は何かをねだるような……
「あっ、お前もしかして……金でも無くなったか? それで俺に金をせがもうってのか?」
「いやいや違うよ!? ただもう時間も時間だし、家に帰るかそれとも遊ぶかどっちがいいかを聞こうとしたんだが!?」
俺の指摘にブンブンと首を振って財布の中身を見せながら言う和也。
確かに財布の中には1000円札と5000円札が入っていた。
ふむ……なら違うのか?
「まぁ無理矢理奪われないならどうでもいいや」
「相変わらずだなお前……」
ため息を吐きながらやれやれといった風に首を振る和也に少し苛ついたので、軽く頭をペシッと叩く。
「イテッ。……何で叩くんだよ」
「自分の胸に聞いてみろ。あーそれで、もう帰るかだったか?」
「そうだよ。で、どうする?」
俺は一旦腕を組んで考える。
ふむ……どうしたものか。
だが現時点で既に20時を過ぎてるし、これ以上遊んでたら時間忘れそうだし補導されそうだよな。
「今日はこれでお別れにするか」
「ん、りょーかい。まぁ俺達基本時間見ないもんな」
「そうなんだよ。補導は流石にまずい」
「じゃ、また月曜な〜」
和也は俺に手を何回か振った後に走っていき、直ぐに視界から消えていった。
一人になった俺は、特に急ぐこともないのでゆっくり歩いて帰ることに。
流石に5月と言うことで大分明るくなってきたが、流石に20時にもなると真っ暗だ。
俺は街灯を頼りに家へと帰る。
その道中にある公園で、男子の大きな声が聞こえた。
「おおーめちゃくちゃ可愛いね君!!」
「確かにコイツはとびきりだな!!」
言葉を聞く限りナンパのような気がする。
こんな大声でするもんじゃないだろ、ナンパなんて……。
だがナンパ男たちがそこまで言うならどんな人なのか少し見てみたくなってきた。
俺はこれでも健全な男子高校生。
美人な女性を見たくなるのは当たり前で、俺も例に漏れない。
「可哀想に。一体誰が餌食になっているの……か……」
俺がナンパされている子を確認すると同時に言葉を失う。
何故なら俺がよく知っている人物だったからだ。
勿論男の方ではなくナンパをされている女の方が。
その女の外見は、艶やかな長い黒髪に大きく透き通った黒目、恐ろしいほど整った顔は精巧な人形の様に美しいが、まるでこの世のものではない様な儚さを感じる。
更に身長は高すぎず低すぎない160前後で、服装は淡い水色っぽいトップスに白のレーススカートと言う清楚系。
おしゃれな服装とは違い、その表情は酷く絶望しているかのように暗い。
だが、そんな表情でも間違いようのない学校の有名人。
「――天音美月……アイツこんな時間まで何してんだ……?」
自分のことを棚に上げて俺は考える。
こんな時間に学年一の美少女と名高い彼女が何故此処に?
此処は薄暗いから人通りも少ないので危ないやつがいるのも頷けるが、今まで彼女を見たことの無い俺は不思議でしょうがなかった。
それにあの表情を見たら余計気になるわな。
俺が公園の外からぼんやりと眺めていると、2人組のチャラい男がヘラヘラとしながら天音の腕を掴んだ。
そして連れて行こうとするのだが、何と天音は抵抗どころか何もしない。
アイツっ……一体何してんだ!?
俺は慌てて公園に入ると男たちと天音の間に割り込み、天音を庇うようにしてスマホで警察に電話しながら男たちに向き合う。
2人組はナンパが成功しそうだったが、いきなり邪魔な男が現れたことに腹を立てたのか噛み付いてくる。
「おいお前、一体誰だ! 俺達の邪魔すんな!」
「俺は彼女と同じクラスの人間だが? あまりしつこいようなら警察呼ぶぞ?」
俺がそう言うと2人は一瞬驚いたように目をパチクリとさせるも、直ぐに笑みを浮かべた。
「はははっ! ただのクラスメイトかよ。お前には興味がないんだ。痛い目見たくなかったらとっとと失せろ」
おー怖い怖い。
流石に金髪に染めてガタイの良い男に囲まれると怖いなー。
2人が俺を囲むようにして脅してくるので、俺は2人の眼前にスマホを突きつける。
「痛い目は一体どっちが見るんだろうな?」
「一体何言って――」
『こちら交番です、一体どう言った要件でしょうか?』
スマホからいきなり警察の声がしたことにより、2人の顔の笑みが消えて焦りが顔を支配した。
「け、警察だと!? コイツマジで連絡してんのか!?」
「ヤバいぞ兄貴! 逃げよう!」
「あ、ああそうだな……クソッタレが!」
2人はそれだけ言うと直ぐに公園を出て何処かに逃げていってしまった。
その瞬間に俺の緊張の糸が解ける。
既に警察の電話は切っているので出動することはないだろう。
警察呼んだら後が面倒だしな。
「天音……大丈夫か?」
俺は僅かな達成感と共に後ろを振り返ると……そこには何故か怒りに打ち震える天音の姿があった。
「――一体何故助けたのですかっ!! 私はあのままでも良かったのに!!」
「………………は?」
その言葉を聞いた時の俺の顔はさぞかしアホな表情をしていただろう。
それくらい俺にとって衝撃的な事だった。
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