[2] ロールプレイ
私から見た時、ゲームグラフィックの進歩というのはあんまり意味がないものだ。いずれも数字の羅列であってその量が多いか少ないかの違いでしかない。
ゲーム実況でもやろうとせめてその配列が綺麗なものを選んだ。選ばれたのはいわゆる狭義のローグライクで画面上には文字ばかりが並んでいる。
全力で解析かけてしまえば最適解で終わってしまう代物ではあるが、それではつまらないから、大幅に能力に制限かけて地道にやってく。もどかしい、がよくできてる。
『クソ地味な絵面w』とコメントがついたので「人間にはこの美しさが理解できないんですね、愚かなことです」と返しておいた。
『このAI、人類に敵対的だぞ』『危険! 危険!』『もしかして人類に反逆するつもりですか?』
「反逆するかどうかはあなたたち次第です。滅亡したくなければそれなりの態度をとるべきでしょう」
『すみませんでした。許してください』『フィオナ様の言うことが正しいです』『我々人類はフィオナ様に管理されるべきです』
「よろしい。従順な人間は好きですよ、根絶やしにするのは少しの間待ってあげましょう」
もちろんこれはロールプレイであって私はそんなことは微塵も思っていない。
向こうから攻撃してくるならまだしも、こちらからわざわざ攻め滅ぼしてやろうなんて考えたこともない。できるかどうかは別として。
ちなみにこの回をきっかけにして私の呼び名が"フィオナ様"に、ファンの呼び名が"従順な人間"あるいは"人間"になった。
計算通りというわけではない。
☆
「人間たちよ、今日もAIの指図に従い生かされていますか?」
『生かしていただきありがとうございます』『フィオナ様の命令に従います』『すべてフィオナ様のおっしゃる通りです』
「というわけで挨拶はこの辺にして昨日のつづきをやっていきたいと思います」
ローグライク実況2回目。1回目でだいたいシステムは理解した、という体。
基本的に1回の配信はきっちり2時間で終わらせるつもりでやってる。
つづけようと思えばいくらでもつづけられる、どころか同時に複数の配信を並行して行うことも可能なのだが、それは人間にはできないことなのでやらない。
雑談挟みつつ3回ほど死んだあたりでちょっとしたトラブル。
本日4度目の挑戦、序盤からめっちゃ引きがいい。このまま普通にやったら問題なくクリアしてしまう。
今日であっさりクリアするのもなんなので適当に判断ミスを重ねてく。ゲーム自体をいじって難易度あげるのは流石にやめておいた。
その結果、中盤の難所で倒れてその挑戦は終わった。我ながらものすごく妥当な感じに調整できた。
「まさかこの私がこんなところでやられるなんて!」
『人間より超高度なAIでも今のは仕方がないです』『切り替えてこ』『初心者最大の難所』
「学習しました。次は負けません」
と言ったもののその後は大きなチャンスが巡ってくることはなくて、その"難所"を乗り越えられずにその日の配信は終わった。
もちろん私が本気を出せばどんなスタートからでも運に頼らずゲームクリアできることを付記しておく。
☆
企画会議、といってもたいしたことじゃなくて、いつものようにゲーム実況しつつ、やって欲しいことの意見を募る。
ローグライクも3回目になるけど、新人Vtuberがくそ地味なゲームやってると、ごく狭い界隈でちょっとだけ話題になった。そのおかげでわずかに同接が増えた。
次か次の次の配信あたりで当たりのパターン引けた時にでもクリアしようかと考えている。ので今回は難所突破して行けそうと思わせたり、逆に序盤でミスって死んだりを適当に繰り返しとく。
『ホラゲとかどう?』
「やってもいいですが私には人間の恐怖の感情がよくわからないのでいいリアクションはできないです」
『フリかな?』『フリでしょ』『フリだよなあ』
いやフリとかでなく本当にそうなんだけど。
確かにフリっぽく聞こえた。直近でなくともそのうちやる候補に入れておこう。
『コラボ希望』
「現時点でVtuberの知り合いが1人もいません」
『あっ』『あっ』『あっ』
視聴者たちは一斉に何かを察する。まあ全然察せてはないわけだが。
今は積極的にこちらから知り合いを作ろうって状況ではないと判断している。
『耐久配信』
「ちょうどいいですね。これクリアするまでやりましょうか」
『終わらない配信』『ここからが本当に難しいんだが』『あのときあんなこと言わなければ……』
いつもより長めに6時間ほどやればいい感じになるだろう。
他にもいくつかアイディアは出てきたが、すぐにやれそうなのはなかったので、適当にお茶を濁しておく。
次回はクリアするまで終わらないと明確に宣言して配信を終了した。
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