【5.画像】地方紙の読者投稿欄

(■■県 40代 女性)

 数年前、家族旅行で南国の離島へ出かけた時のこと。乗るフェリーを間違えて全く知らない島に着いてしまいました。

 気付いた時にはもう遅く、私と両親は水平線しか見えない海の上でした。当然引き返す訳にも行かず、たどり着いたその島は数日に一度しかフェリーの運航がないそうで、仕方なく上陸したものの、海風も陽射しも心地良く、島の方々も快く歓迎してくださり、とても良い思い出になりました。

 その島には文字通り手付かずの自然があり、時間の流れがゆったりとしていました。

 天の国へ続いているという伝説がある波が削ってできた荒々しい洞窟や、岬に作られた石造りの階段、色とりどりの染め糸を編みあげた美しい組紐、珍しい郷土料理や聴いたことのない民族音楽なども。私と両親は、次のフェリーが来る日まで存分に島を楽しみました。

 惜しむらくはあの島の名前を忘れてしまったことです。母も父も私も、帰宅した途端に忽然と忘れてしまったのです。あの美しい島は幻だったのでしょうか。














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