【2.日記】Bちゃんと思われる女子児童のもの

 11月25日

 転校してきたAちゃんとは、すぐに仲良くなりました。Aちゃんは、■■島という南の島から来ました。わたしは、(転校生で、しかも島から来たなんてアニメみたいだなぁ)って思いました。Aちゃんはすこし日焼けしてて、目も大きくて、鼻もすっきりと高くて、すてきな顔をしています。

 だから、わたしはよくAちゃんのことを見てしまってて、そしたらある時にAちゃんがハンカチを落としました。わたしはそれを急いで拾って「ハンカチ落としたよ。このもよう、とてもかわいいね」と渡したら、Aちゃんがにこにこして「ありがとう、島のでんとうこうげいなの」と言いました。でんとうこうげい、は昔から伝わる■■島の文化だと言ったので、わたしは「すてきだね」と言いました。

 あしたはAちゃんのお家に遊びに行くことになりました。ママが、Aちゃんのことを「ああ、あのエキゾチックな子ね」と言いました。

 ママは、明日の手土産にココアとバニラのマーブルケーキを焼いてくれると言ったので、とても楽しみです。



 12月10日

 きのう、Aちゃんのお家に遊びに行きました。

 お友達のお家に来るのははじめてで、ドキドキしました。一緒にきたママも、Aちゃんのママとすぐに仲良くなりました。

 Aちゃんもとてもうれしそうにしていて、ふたりで絵をかいたり、Aちゃんのアルバムを見せてもらったりしました。

 アルバムの中のAちゃんは、青いきれいな海と、真っ白な砂浜と、赤やピンクやオレンジのお花がいっぱい咲いた風景のなかで、たくさん笑っていました。いまもたくさん笑うけれど、写真の中のAちゃんは今よりもうすこし明るいかんじがしました。

 Aちゃんのママがおやつを作ってくれました。■■島のおかしで、お芋を使ったおまんじゅうだと言われたので、食べたときに外側は甘いのに中身は甘くなくてびっくりしました。まるで肉まんみたいな味でした。あと、なにかかたい木の実みたいなものも入ってて、口から出してみると茶色っぽいところと白いところがありました。かじるのも、飲みこむのもむずかしかったので、ティッシュにつつんでポケットにしまいました。



 12月22日

 ねんまつねんしをAちゃんのおばあちゃんのお家で過ごすことになりました。ママとAちゃんのママが、わたしとAちゃんぐらい仲良くなったからです。

 わたしは最近、Aちゃんといると頭がぼーっとしてしまうことがあります。

 とてもふわふわして、なんだかおかしくもないのにニコニコしてしまいます。ママも、前よりニコニコするようになりました。前はパパのお仕事がいそがしいのを怒ることもあったけど、今はニコニコしています。

 ねんまつねんしも、パパはお仕事で来られないと言われたのにニコニコしていました。

 わたしも前はパパがいないのはさみしかったけれど、今はママもニコニコしてるし、Aちゃんも、Aちゃんのママもいるから、さみしくありません。

 ■■島に行くのがとっても楽しみです。



 12月27日

 飛行機や船は少しこわかったけれど、■■島はとてもすてきな所です。たくさんのお花があちこちに咲いてて、ふしぎな色をしたちょうちょや、きれいな声で鳴く大きな鳥もいます。海はとてもきれいな青い色です。白い砂はさわるとサラサラしています。

 島の人たちはみんなニコニコしています。わたしがAちゃんの友達だと知ると、めずらしいフルーツや、キレイな色のジュースをたくさんくれました。すてきなお花のネックレスもくれました。「何才なの?」と聞かれたので「三月生まれだからまだ七才だけど、三月には八才になります」と答えると、もっとニコニコして「■■様も喜ぶなぁ」と言って、木の実やお魚やおかしをくれました。■■様はこの島の神さまで、みんなを守ってくれるんだそうです。

 ■■様へのお詣りの時は拍手をします。ふつうの拍手とはちがって、手の平と反対側のほうで拍手をします。あんまり音が鳴らないけど、■■様にはちゃんと聞こえているそうです。

 おおみそかには、お祭りがあります。わたしは、(パパも間に合えばいいのになぁ)と思いました。



 12月30日

 昨日の夜、目が覚めてしまったのでママを起こそうとしたけれど起きてくれなくて、どうしようかと思ったけれど、勇気を出してお外に散歩に行きました。島の中は■■様が守ってくださるので、あぶなくないそうです。

 Aちゃんのおばあちゃんのお家はお庭のすぐそばから海に出られるので、砂浜に行ってみようかなと思いました。

 夜の間も海は波があって、さーさーと良い音がしていました。砂浜に座ってぼーっとしていると、だれかが砂浜を歩いて来ました。わたしはぼーっとしたまま座っていました。

 だれかは、くつをはいていませんでした。その代わり両手に片方ずつ、くつを持っているみたいでした。

 その人は途中で立ち止まると、わたしと同じようにぼーっとしていました。しばらくすると、また別の人が来ました。同じように両手にくつを持ったまま、上を向いてぼーっとしています。しばらくしたらまた人が来て、そうやって何人もの人が集まって、みんな両手に一足ずつくつを持ってぼーっと立っていました。

 気がつくと朝で、わたしはAちゃんのおばあちゃんのお家のお布団に寝ていました。

 夢かと思ったけれど、足のうらが砂でよごれていたので、たぶん夢じゃなかったみたいです。



 12月31日

 きょうは、おおみそかです。

 Aちゃんのおばあちゃんが、とてもきれいな「でんとうしょうぞく」というのを着せてくれました。ひらひらした「でんとうしょうぞく」はお姫さまのドレスみたいです。お花のネックレスもくれて、お花のかんむりもくれて、本当にお姫さまみたいな気分です。

 これから海でお祭りがはじまります。みんなニコニコしています。Aちゃんも、Aちゃんのママも、おばあちゃんも、わたしのママもニコニコです。

 ■■島に来てとっても良かったです。




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