祝祭の島

野村絽麻子

【1.作文】Aちゃんのこと(小学二年・女子児童のもの)

 わたしのクラスにはAちゃんという女の子がいます。

 Aちゃんは秋の運動会の終わったころに引っ越してきたので、二学期の途中からわたしのクラスになりました。

 自己紹介のときに、みんなで地図帳を開いてAちゃんの住んでいた■■島を探したら、ずいぶんと南の遠いところでした。飛行機と、船に乗って行くところだそうです。

 学校から帰ってお母さんに「今日、転校生が来たんだよ」と教えたら、お母さんは「二学期の途中から転校なんてめずらしいね。きっと何かご家庭の事情があるんだろうから、仲良くしなさいね」と言ったので、わたしは自分から話しかけるようにしました。

 Aちゃんは少ししゃべり方が変わっていて、クラスの誰かが「なまってる」と言った時に先生が怖い顔をしました。

「なまりはAちゃんの個性だよ。それに、文化を大切にするのはとても素晴らしいことなのよ」と言いました。

 なんとなく遠まきに見ていた女の子達のグループも、それからは誰もAちゃんをバカにしたり、仲間はずれにしたりとかはなくて、みんなAちゃんとおしゃべりするようになりました。


 Aちゃんといちばん仲良くなったのはBちゃんという女の子です。

 Bちゃんは少し、しゃべり方も動作もゆっくりで、みんなの中にいても子供っぽいなと思うことがありました。島から来たAちゃんも少しのんびり屋さんなので、きっと気が合うんだと思います。

 このまえ、Aちゃんのいた■■島はあたたかい所だったので、たぶん夏バテはしないと思う、と言っていました。

 そしたらBちゃんが「わたしは冬生まれだから寒さに強いってお母さんが言ってた」と言って、わたしはなんだかそれは少しちがうと思ったけれど、Aちゃんは「何月生まれなの?」ってふつうに聞いてたし、「三月だよ」ってBちゃんもふつうに答えてたので、わたしは(馬が合う、ってこういうことを言うんだなぁ)と思いました。

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