イヤリングを破壊しろ
「えい!!」
イヤリングを破壊しようと紫炎が炎を出す。
しかし、威力が低く破壊するための温度に至らなかった。
焦りで目がチカチカし始め、血が素早くめぐる感覚に陥る、
「どうして、力出ろ!!」
紫炎は反ギレしながら、イヤリングに炎をぶつける。
紫炎をよく見ると杖を持っていない手が脇腹を抑えていた。
「おい、紫炎」
めまいがするほど、凄く嫌な気分だった。
「くっそぉ!!」
紫炎は炎を何度も放つが、そのたび炎は小さくなる。
「その炎を止めろ!!」
僕は紫音の手を止め、杖を投げ飛ばした。
「もういい……」
僕は紫炎の目をしっかりと見て言った。
おそらく、肋骨が骨折しているのだろう……
無茶させるわけにはいかなかった。
その瞬間、扉が爆発した。
「諦めるのにはまだ早いぞ、少年!!」
扉の先からノヴァが現れた。
「アトラクは? 」
「アイツなら、外でのぼせてるよ」
ノヴァは紫炎の様子を見た。
「後で診察しよう」
「頼む」
僕はノヴァにお願いした。
「まぁ、その前に、このイヤリングの破壊だ」
「出来るのか? 」
「私は『アルミ王』だぞ」
ノヴァは懐から、二つ袋を取り出した。
「君、アルミ粉は使ったかい? 」
「あぁ、助かったよ。 ありがとう」
「私は粉塵爆破を想定して渡したが爆発してない所を見ると別の使い方をしたみたいだな……」
ノヴァは顎に手を当てた。
「まぁいいだろう。 片方は『アルミ粉』、もう片方はアトラクから頂いた『砂鉄』言い換えれば『四酸化三鉄』だ」
僕の中で希望が見えてきた。
「この二つの粉を混ぜて着火すると、アルミが酸化鉄を還元しながら高熱を発する。 その温度は2000度に達する。 『テルミット反応』だ」
そんな事を話しているうちに、イヤリングの点滅は早くなっていく。
宮殿は老朽化しており、床のあちらこちらにも、ヒビが出来ていた。
「あそこに丁度いい穴が開いている」
ノヴァがお茶碗程の穴を見つけた。
そして、穴に両方の粉をぶち込み、点滅するイヤリングを埋めた。
「着火方法はどうする? 」
ノヴァが僕に声をかける。
「既に決まってるよ」
僕は懐からルビジウムを出し、紫炎の方を見て頷く。
紫炎は手を震わせながら親指をたてた。
「おい、埋められたイヤリングの点滅が急にすごく速くなったぞ」
ノヴァが焦り始めた。
「おいおい、ダウンロード中に10%から急に90%になるような事すんなよ」
僕は大急ぎでルビジウムの試験管を開けて垂らした。
「着火!!」
その瞬間、目を閉じたくなるほどの強い光とありえない程の熱で僕たちは後ずさる。
「これは修復が大変そうだ……」
ノヴァの顔が引きつった。
「うぅ……」
紫炎が痛みで唸り声をあげた
「君は無茶しすぎだ、痛むか? 」
ノヴァが紫炎の脇腹に触れて診察をする。
「完全に折れているわけじゃない、ヒビ程度だ。 3週間で治るだろう」
僕は疲れと安堵心で倒れそうになりながら、そんな二人を眺めていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます