第14話 計画

「遠慮せずどんどん食ってくれ」


俺がそう言うと、子供達が配った食料を一斉に食べ始めた。

店で買った出来合い物なので別段高級な物ではないが、彼らは美味しい美味しいと勢いよく口に放り込んで行く。

よほど腹が減っていたのだろう。


「最近は食事がアレだったんで……助かります」


普段からあれな食事をしているであろう浮浪児がそう言う位だ、余程酷かったのだろう。


「ごめん、俺達のせいで……」


「ごめんね」


ゴンザとカニカがチャゴに謝る。


道中ゴンザから聞いた話だが、追い出される際、彼らはチャゴからお金を渡されていたそうだ。

病気で追い出される者達への、せめてもの餞別として。


まあその額自体は微々たる物だったみたいだが、厳しいその日暮らしをする浮浪児達にとっては貴重な貯蓄である。

本来なら稼ぎの少ない日なんかを凌ぐためのお金。

それを渡した事で、彼らは以前にもまして貧しい生活を迫られていたのだと思う。


だからゴンザ達は謝ったのだ。


「別に……お前達のせいじゃないだろ。そもそも、追い出す時はそういう決まりだしな。それと言っとくけど……俺達はその事を謝まったりしないぜ」


「……分かってる。もし立場が逆なら、俺だって同じ事をしたから」


「ま、なんにせよ……お前達のお陰でこうして美味い飯にありつけた。ありがとう。感謝してるよ」


「いや、俺達はただ案内しただけだけさ」


チャゴとゴンザが、お互いに屈託のない笑顔を向け合う。

正に仲間同士の絆って感じだ。

そんな様を見せつけられると、カルマ値目当てで施しをしている自分が恥ずかしくなってくる。


まあでも、こっちも命がかかってるからなぁ……


必ずしもゲリュオンの体の死が、俺の死に直結してるとは限らない。

死んだら元の世界で目覚める。

そんな可能性だって十分考えられる事だ。


が、その確信が無い以上、死ぬ事前提で行動しておかないと。

後悔先に立たずというからな。


「さて、俺も腹減ってるし……山田さん、頂きます」


「ああ、遠慮せず食べてくれ。ゴンザ達も」


「はい」


「うん」


チャゴやゴンザ兄妹も食事を始める。

俺も腹が減っていたので、彼らと一緒に夕食だ。


「中々いけるな」


この世界にやって来てから口にしたのは、袋に入っていた干し肉や、露店で買った果物位だ。

本格的――というにはアレだが、この世界の食べ物も中々悪くない味をしている。


「ふー」


食事を終え、カルマ値を確認してみる。

数値は-574になっていた。

順調に上がってはいるが、どうも計算が合わない。


今回食事を振る舞った浮浪児達は全部で16人。

そこにゴンザ兄妹を含めると18人になる。

だが、上がったカルマ値はは16だった。


ストレートに考えるなら、ゴンザ兄妹の分が入ってないと考えるのが妥当だろう。

それで数字はピッタリ合う。


「ふむ……」


それを前提に考えるとして、何故ゴンザ兄妹の分が入らなかったのかを考える。

パッと思いつくのは三つだ。


一つ。

ゴンザ兄妹はそこまで腹が減ってなかった。


昼過ぎに、俺の買って来た果物を結構食べてたからな。

特に腹が減ってる訳でもない相手に飯を奢っても、まあ善行とは言えないだろう。


二つ。

ゲーム的な感じの、再受付の待機時間が存在する。


連続不可。

要は、同じ相手に同じ様な事をしてカルマ値を得るには、ある程度時間を空けないといけないって事だ。


ただ、病気の治療と果物の差し入れの際には問題なく上がっているので、行動さえ違えば相手が同じでも問題ないとは思われる。


三つ。

同じ相手に同じ行動をしても、カルマ値を得る事が出来るのは一度きり。


一度手に入れてしまうと、同じ相手にたいする同じ行動では二度とカルマ値が手に入らなくなる可能性が……

二つ目でも説明してるが、行動が違えば問題ないのは確定だ。


三つ目じゃないと良いんだが……


もし三つ目だったら『浮浪児達に三食喰わせるだけでカルマ値がプラスになっちゃうよ』計画が完全に崩れる事になる。

計画内容は……まあ語らなくても分るだろう。

そのまんまの計画名だし。


「取り敢えず……検証して確認するとするか」


……どうか一か二であります様に。


その日、俺は浮浪児達の身の上話を夜遅くまで聞き。

ホーム――掘っ立て小屋で、少々臭くて狭いのを我慢して俺は彼らと一緒に眠りについた。

子供だけの集団なので、ちょっとした用心棒代わりだ。


金のない浮浪児達にそんな物が必要かどうかはアレだが、まあカルマ値が入ったらラッキーって事で。


結果は上々。

朝起きて確認したら、カルマ値はマイナス564になっていた。

プラス10。

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