第6話 見切り発車

レッカ・ドワーブン。

ジャスティスヒーロー終盤で加入する、ドワーフのヒロインキャラだ。


燃える様な赤い髪をしており、ショートカットを頭頂部で束ねて立てた――角の様な――髪型をしている。

背の低い、可愛らしい少女の様な見た目だ。


そんな可愛らしい見た目をしているレッカだが、彼女は愛らしい姿とは相反する二つ名を持っていた。


――狂戦士バーサーカー


これはドワーフ特有の圧倒的パワーと、彼女の恐れ知らずの猪突猛進の戦闘スタイルから付いた二つ名である。

豪胆な性格のレッカはそれを気に入っており、自己紹介の際には自らバーサーカーを名乗る程だ。


そんな彼女を一言で纏めると、パワー系ロリキャラである。


もっともドワーフは身長が低く、女性は童顔であるためロリっぽく見えるだけで、実際は主人公よりも年上な訳だが。

いわゆる合法ロリと言う奴だ。


「あの……どうかしましたか?」


「ああ、いや――」


レッカは好感度を上げてイベントを進めていくと、妹がいた事が判明する。

まあ名前は出て来ないのだが、名字からして、彼女がその妹である可能性は十分考えられた。


……という事は、病気ってのはレッカの事か?


パワータイプで暴れまくるバーサーカーが病気で苦しんでいる姿が、俺には想像できない。


「ドワーブンって事は、ひょっとしてお姉さんの名前……レッカって言わないか?」


名字が同じ親戚の可能性もあるので、一応確認してみる。


「おねぇちゃんの事をご存じなんですか?」


どうやら、レッカであっているみたいだな。

バーサーカーの二つ名を持つ少女が病気で苦しむとか、こう言うのを鬼の撹乱かくらんと言うのだろう。


「ああ、彼女は有名な傭兵だからな。名前だけは聞いた事があるんだ」


レッカは名うての傭兵だ。

主人公が騎士学園を卒業した時点で、イベントでその名が出てくる程に。

なら、現時点でも既に名は売れている筈だ。


「そうなんですね。確かにおねぇちゃんは、凄腕の傭兵ですから」


メエラは姉を褒められたと思ったのか、嬉しそうな笑顔になる。

姉妹仲は良好な様だ。


しかしアレだな。

この子が妹なら……


ゲームに妹は出て来ない。

何故なら、レッカ加入時に既に亡くなっているからだ。

それもイベントでわかる事だが。


なら目の前の少女は、此処で死ぬ運命にあった?


いや、それはないか。

後々レッカが主人公の仲間に加わるって事は、病気が治ったって事だからな。

後々何かあって、命を落とす事になるんだろう。


まあメエラはここで死んで、他の要因で病気が治る可能性もあるが……


ただその場合、彼女を手助けする事は、ゲームのメインストーリー進行に大きな影響が出る可能性が出て来る。


レッカと一緒に、メエラが主人公の仲間になったり。

逆に、彼女達が仲間にならなかったりと。


前者はともかく、後者は少し不味い。

なにせレッカは最高戦力だ。

彼女が加入しないと、間違いなく終盤の戦闘に弊害が出るだろう。


そう考えると手助けは……


「……」


ま、いっか。

なる様になるだろう。

多少干渉した位ならきっと大丈夫なはずだ。

俺は適当にそう結論付ける。


メインストーリーに影響が出るから、やっぱ手伝いませんとか今更とても言えんし。


「じゃあ、薬草を探すとするか」


「はい!宜しくお願いします!」


俺は何か起きても主人公が頑張って何とかするだろうと高を括り、メエラと共沼地で薬草探しを始める。


頑張れ主人公!

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