何処までも空は白が良い

紫陽花の花びら

第1話

疲れた。何も考えたくない。

瑞穂は屋上に向かっていた。

「判ってない! お前は! 想像力の欠片もない。てでけ……」

はいはい。どうせそうですよ。感性を持ち合わせてない左脳人間です!

その左脳だって、凡人並みですから!

向いてないのは百も承知のすけだよ。


 でも……だから目指していけないのか。体で表現することを。

ゴロッと寝転ぶと、目の前には青、青青、なんだよ!これ。一点のくもりもない青がとびこんてくる。

「嫌いなんだよ!! 嘘臭い青はあ!」

目をギュッと瞑ると、嘘臭い青は消えていく。そして零れ落ちる体液。

チクショウ……チクショウ……

 怖すぎるんだよ。皆と同じ感じている事の安心感が。吸いこまれそうな青空が気持ち良いねとか。ぽっかり浮かぶ白い雲がある方が好きとか、どうでも良いんだよ。なのを感じるかなんて人それぞれなんだ。やけか? やけなのか?

瑞穂は呟く。

「吸いこまれそうな青空をみると、息を取られ、口を塞がれそう。だから見たくない。それが幸せの象徴みたいに言うなよ」

起き上がり左脳人間瑞穂が踊り出す。歌い出す。

「空は白が好き。ここにいて良いんだと思える。何色にも為れる白が好き」

体は軽く何処までも飛べる。

軸はぶれず、ピルエットは何十回も廻れる。心は誰にも迎合してたまるか。


肉体よ話せ。心よ歌え。全ては意のままなんだ。


幸せも悲しみも怒りも抑圧も其処此処に散らばり放題。


それをどれだけ掻き集め、ごちゃごちゃに混ぜられるのか。

そこに疑問も正解もない。


見て! これが私なんだよ!

さあ見てよ!


醜くても、いやらしくても、

それが今の私なんだ。


ああ……空は相変わらず嘘臭い青空を見せている。


そして、今にも吸いこんでやると言ってくる。


ラインだ。


「ラストチャンスをやる、戻ってこい」



肉体よ謳え。心よ踊れ。


全てを白に染めてやる。


見とけよ!  嘘臭い青空。



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