第14話 決戦前の準備
「おっそーい!」
ユリウスの家のドアを開けると同時にタックルしてきた少女を
「何すんだお前」
「あのね、あのね。こっちきて! こっち!」
ガタガタの
リビングを開けるといい
「いよいよ、明日ね」
「だなー……まぁなんとかなるだろ――ぐはっ」
「いてぇよ」
「……なんとかしなさい」
「え?」
「なんとかするの! わかった?」
「わかったわかった」
「さ、ご飯にしよう」
ユリウスの言葉に異論のない三人は素直に従ってテーブルを囲む。
ラスターの
用意された料理は……どれもこれもびっくりするほど美味しい。
「これいいな」
パクリと食べた
「どーかしたか?」
「はにゃ!」
ラスターに声をかけられたルーナは、ぶんぶんと首を
「そかそか、美味しいからお前も食べてみろ」
ルーナからスプーンを
「あわあわ、あーん……はふっ!」
小さい口を
「美味しいな」
「うん……まぁ……」
もし、作ったのがミレアなら
「作ってくれてありがとうな。美味しいよ」
「はわあああああ」
自分が作った料理を
「ほらほら、私たちが作った料理も食べてね」
ミレアがサラダとピラフもラスターの目の前に置いて食べるように
「よかったね」
ルーナに言った小声を、ラスターは聞こえなかった振りをしながら食べていく。
「これもいいな」
ルーナはガクガクと首を縦に動かして、激しく同意する。
自分のことだと
たわいもない話で盛り上がり、作ってもらった料理に
ペコペコの腹も大きく
「ReXは慣れました?」
「あぁ、問題ないよ」
食事の手を止めて質問するミレアに、ラスターは気にすることなく平らげていきながらあっさりとしたようすで答える。
「結局どの大きさに乗るんだ?」
「一五M級だと思うよ……これまで乗ったのはだいたいそれだ」
ReXにも種類があり、大きさでざっとした区分けがされている。
予備兵だったり、小隊に入っていない武術科だったりする生徒は八M級のReXを動かし、ラスターのような小隊に所属していると一五M級、隊長格や一部のエース機であれば一八M級となる。
もっとも各種装備や、機体次第で大きさが異なるが、
「小隊で
隣で心配そうな様子を見せるルーナの頭を撫でてあげる。
「八M級に乗るよりむしろ安全だと思うよ」
後ろでガヤ要因として、弾幕を張るのが仕事の八M級の仕事であり、隊長の近くでふらふらと飛んで、ワームビーストを
「だといいけど……」
心配そうな表情のままルーナは、はむっとご飯をつまんで食べる。
「そういや、明日の移動の準備は終わったのか?」
「うん、大体は終わってるよ」
ユリウスは
作戦の予定時間は大体8時間――決着は明日中に着く予定であり、その間、武術科以外の人たちはシェルター内で過ごすことになる。
「あとは
「「「ごちそうさま」」」
食べ終わった食器を流しへと持っていくと、ミレアとルーナは
小学生にしか見えない見た目とはいえ、自分で風呂にも入れないお子様というわけではない。単純に仲の良さが理由である。
手伝えと言われたら手伝うが、逆に言えば言われなきゃ手伝わない――だが、暇ではあった。
「そういや……ここに来る前、カンラギさんが告白されてた」
「へー」
ガチャガチャと食器を鳴らしながら、ユリウスは洗い物を片付けていく。
「で? 君らはいつになったら付き合うんだ?」
「……」
「そう言うお前らはどうなんだよ」
ヤケクソの反論に、ラスターは落ち着いて返す。
「どう見ても犯罪
「……本人には言ってやるなよ」
中学からの知り合いだけに、
「成長止まってるやん」
「
気まずそうに目を
「で? なんで付き合ってないの?」
ラスターの質問にユリウスは口を真一文字に結び言いたくなさそうにする。
気になると言えば気になるが、意外な頑なさにラスターは
「別れることを前提にして付き合うなんて……それに、
「ん? 別れる?」
「僕と彼女じゃ身分が違いすぎる」
「あー、知っちゃったのか……」
ユリウスはどちらかと言えば自己評価が低い男であるが、この場合はミレアの身分が本当に高い。
この学園生活においては関係ないが、卒業して、元の住んでいたコロニーに
ちなみにラスターはミレアと小学六年生からの知り合いであり、彼女がどこの生まれであるのかを知っている――ラスター自身は
「あぁ、中学の……いつかは忘れたけど、その
「それは
ユリウスは再度洗い物を始め、それを見ながらラスターはジュースを飲む。
「どうすればいいかわからんけど……そうだな、
諦めろとアドバイスをされると困るが、そもそもそんなことを言われなくても、彼の心は諦めに向かっている。
「王族とか、そうだな大貴族の
心当たりのないラスターは首を
「誰か心当たりが?」
「いや、確か副会長が貴族出身って聞いた覚えが」
「副会長って――カンラギ?」
「うん」
「あー、あり得そう」
探せば案外わかるかもと、スマホを起動して名前を打ち込む。
インターネット――かつては世界中と
今日見学した研究所などであれば、近くの衛生サーバーを経由して、他コロニーの情報も手に入れれたりもするのだろうが、経済価値の低い情報はそんなに出回らない。
「おっ、あった」
他コロニーの情報
「へー、ディートリーク出身……って巨大コロニーじゃねーか」
「そこで……やっぱ貴族なの?」
「フレアエクリプスのご
「……うわぁ」
ゴシップネタが好きな人間はどこにでもいる。
この学園に存在するマスメディア部も、話題性の高い情報を
悲惨な情報も知ってしまったが、それでも今回はありがたい。
巨大コロニーの令嬢と、よくあるコロニーの王族の系譜――同じ存在ではないが、良いアドバイスを
「機会があれば、聞いてみたら」
「……頑張るよ」
ジュースを飲みながら、ユリウスの仕事ぶりをただただ見つめる
「お風呂から出ました!」
「おぉ、どっち先にする?」
「お先にごめんね。洗い物は私がやっとくから、ユリウスくんとラスターくんも一緒にどうぞ」
「「それは断る!!」」
ずれたことを言うお
カタカタカタカタと
生徒会室で赤い光を灯すヘッドフォンをつけながら夜
(なぜ? しかも――よりにもよって)
モニターに表示される文字、画像、動画――様々な情報を表示しては消し、表示しては消して情報を集めていると、画面の上ににゅっと指が現れた。
「ヒヤマくん?」
「もう
時間はまだ十時――であるが、明日の作戦開始に
第一生徒会のメンバーは、今回の作戦においての指揮も
「ねぇ、ヒヤマくん。ちょっとお願いがあるんだけど」
「……何?」
「調べたいことがあるから……アレ、貸してくれない?」
しなっと
「これかい?」
「ありがと」
「あまり無茶しないで」
「えぇ、おやすみ」
ニコッと笑うカンラギにヒヤマは
彼女が自己利益を常に優先して考えるかなりエゴイストであることは知っている。
しかし、だからといって誰かを
エゴイストであり、他人を手玉に取るが、その後の関係性も利益まで考えての行動していく。
本人
「おやすみ、明日もよろしくね」
にっこりと笑うカンラギの姿を心に残しながら、
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