異世界帰りだけど、異世界のヤツらが続々と俺の世界に来る

αNI

第1話 ただいま日本。

 俺はごくごくありふれた異世界召喚物語のように、学校での授業中に召喚されて始まったばかりの高校生活に別れを告げ、異世界で勇者と呼ばれ数々の仲間たちと困難を乗り越え、数年の後にその世界を救った。

 リザードマンの男は言った。

「お前の世界にも行ってみたいな。ぜひとも話で聞いた牛とやらを食べてみたい!」

 エルフの少女は言った。

「君の世界の書物。私たちの世界のような物語ファンタジー小説読んでみたいものだ」

 魔法使いの初老の男は言った。

「化学というもの実に興味深い話だった。俺はあの話で自らの未熟さを知った。化学の奥深さを知れば俺はもっと魔法人生の高みを目指せそうだな」

 獣人の女の子は言った。

「君の世界のお魚食べてみたい!マグロとか鮭とか!」

 元盗賊団長の男は言った。

「お前の世界の宝石とか警備システムだっけか?それめっちゃ知りたいわ!俺の他から守れるじゃねえか。トラップ直すのもダルいんだよ」

 僧侶の女性は言った。

「そちら医療?医学でしたっけ?卓越した技術みたいな話を聞いたけど。魔法をそちらの医療に携わる方々にお教えして、苦しむ人をなくしたくなっちゃうわね。医療、繊細だけど失敗もありえて、治せない場合もあるなんてダメよね」

 王様は言った。

「君の世界の王…総理大臣?だったか?その者に礼を伝えたいものだ。君のおかげで我々は安寧を手に入れれたのだ。最大限の感謝を伝えたいものだ。」

 王妃様は言った。

「あなたの世界の衣服すごく興味あるわぁ!あなたの着てたセイフク作りがしっかりしていて、すぐほつれることがないなんて!!羨ましいのよ!ぜひどう作ってるのか知りたいものだわぁ!!」

 姫様は言った。

「絶対帰っちゃっても私は【 逢いに行くわよ】ほかの女なんかに現を抜かすんじゃないわよ」

 などと皆言いたい事を言いながら、俺を見送ってくれた。召喚された時の魔法陣とは違い門のようなものをくぐると……。

 俺が召喚された教室。教卓とは正反対の入口付近に門は出現し俺ワックスのかかった床を踏む。

 突然門が現れて驚いたのだろう。クラスメイト達は俺を見てなのか、背後の門を見てなのか唖然とした顔が伺える。

 懐かしさが押し寄せる中で授業中の教室の黒板を見ると。

「──10月?マジで?」

 俺が召喚されたのは7月初めの授業中だった、今は10月21日。

「ま、まさかお前見上蒼みかみあおいなのか?」

 教壇に立つ教師が驚きの表情のまま俺の名を言った。

「はい、三上です。というかみんな変わらないね?5年以上はあっちで俺過ごしたはずなのに」

 と言った瞬間クラスが湧いて、教員はいそいそと教室を出ていった。

「5年どころか3ヶ月くらいしか経ってねえって」

「おまえ5年とか言う割には見た目変わってねえぞ?嘘コクなよ」

「どんな世界だったんだよ、アニメとかで見るやつでお前消えて、羨ましかったんだぞ!?教えろよ」

 クラスメイトたちは口々に疑いの声や期待の声など色々質問を飛ばしてくる。

 その中で1人だけ俺に鏡を見せてきたヤツがいた。

「ほら見ろよ俺らが知ってるお前のままだ」

 そいつはナルシストとして入学当時からクラスで浮いていた男子生徒だった。

「!?若返ってる…!?嘘だろ?時間操作系の魔法も複合されてるってのか?それともあっちが時間の流れがそもそも違うのか…あ!」

 そうだ、ステータス!それを見ればわかるはずだ。年齢や性別スキルやら色々数値と文字で見れるあの世界での共通スキル。いや…でも出るのか?戻ってきて魔素やマナなんてのはなくなってるはずだ…ぞ?

「なあ、ここ日本だよな?」

「当たり前だろ?俺らが証拠だ、鏡や黒板…それとスマホだって、ほら」

 確かにその通りだ。なのにおかしい!マナが見える。魔術を操るのに必要な力の源。

 ──ゴクリッ、俺は唾液を深く飲み込んだ。試そう。

「ステータスオープン」

 俺が一言言うとステータス画面が現れた。しかし周りには見えていない様子。

 年齢のところに目を配る。

【16歳】

「ま、マジで高一じゃん俺……」

 周りは何ひとりで言ってんだって顔と、当たり前だろという声が聞こえてくる。

 というかコレ、ステータス数値あっちのままじゃん。レベル表記は978。あっちで手に入れたスキルや特技、武道、技術スキルや魔法まで使えるのか?ステータス欄をスクロールすると全てある。

「やべぇ…」

 皆俺の顔を見ながら未だに盛り上がってる。

「魔法とか使えるのかよ?」

 1人の男子生徒が言い放ったことで一瞬静まり返り、より一層の盛り上がりをみせる。

 見せてくれ、みたい、やれよ。なんて声が耳を劈く。

「あー、はい。黙って【シャットアウト 発言】」

 俺がそう言い放つと皆が黙る。驚きと焦りとが入り交じった皆の表情を一瞥する。そして群がられていた位置から動き、窓際へ行き振り返ると皆その場から動かなかった。

 次に現れていたのは恐怖だ

「はぁ…あのさ俺は見世物じゃないから、それにみんなが喜んでくれるのは嬉しいけど、俺は数年ぶりなんだ少し黙っていてくれ…頼むよ?」

 シャットアウト。これは自分もしくは対象への任意で封じたいものを封じることは出来る魔法だ。魔法耐性が強いと効果は全くない。

 魔法を解くと皆、すまなかった。等と謝罪をして席に着く。

 俺はまだ残っていた自分の席へ座ろうとした時。

「──蒼!校長室へ来なさい!今すぐだ」

 そう言ったのは担任の先生。俺の姉だ。

「橘先生が汗だくで私のところに来たと思ったら、アンタが帰ってきたって言うでしょ?しかも門?みたいなのと一緒に現れたとか言うしさ。本当なの?でもって、どこに居たのよ」

「門は本当。どこに居たのかは異世界でファンタジー満載なところ」

「……まあ、3ヶ月前アンタが忽然と教室から消えて大騒ぎしてたけど、アンタのクラスメイトは異世界召喚だ!とか騒いでる男子多かったし…私も知ってるからわかるけど…にわかに信じられないのよね」

 そりゃあそうだ。と言いたいけど事実だ。

「じゃあコレ見て」

 そういうと移動中の足を止め手を広げる。姉も歩みを止め俺の手を見つめる。

焚き火ボーンファイア

 小さな炎が俺の手のひらで揺れる。マナがある限り術者の意思で消すことが出来る野営時重宝した魔法だ。

「あ……、うーん……本当に異世界で魔法とかあるところって証明にはなるけど手品とかじゃないわよね?」

「当たり前だろ、俺はマジックなんて…いや魔法だからマジックではあるけども、手品師じゃない勇者だったから」

 姉は頭を抱えながら唸っていたが思い出したかのように顔を上げた。

「いけない!校長に呼ばれてるのよ。手品ごっこは後で」

 信じてねえな…堅物め。

 だが久々にこの堅物な姉。三上翠みかみみどりとの会話は帰ってきた実感をはっきりとさせてくれた。


 ──ただいま、日本。






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