第6話 滝壺の孤島編
■第6話■
胃液サーフィン!!
扉絵
1頁 滝壺の獣
滝壺へ落っこちていくウルスラとルーシー
「ヒャッホ〜!!」
天空から巨大な声が轟く
「マデェ〜ッ!!」
上空へふりむくウルスラとルーシー巨大なダイダラボッチが迫りくる
「ぎゃあぁ〜〜〜〜ッ!!」
空中をバタバタ泳ぐウルスラビート板でバタバタ泳ぐルーシー
「ヅガマエダゾ〜!!」「モウ…ニガサンゾ〜!!」
空中を泳いで逃げるウルスラ「きゃっ!!」とルーシーはさけぶ「ルーシーどうしたの?」ルーシーは下を指さす
滝壺いっぱいに獣の口が開いている
「ぎゃ〜!!」
ガシッ
ウルスラとルーシーはボッチに捕まると同時に
パクッ
滝壺の獣は口を閉じる
ごっくん!
「ぷは〜っ!!」
うまっ。とニンマリした顔をする壺の獣ゲップをして、ざっぶ〜ん、と滝壺に沈んでいく
2頁 腹の中に不時着
ひゅ〜。ころころころ〜、と滝壺の獣の喉のトンネルを転がる三人
ころころ、ぐねぐね、くねくね、途中、売店や団子屋や煎餅屋やトルコアイスの屋台などがあって、それぞれ一休みをするが、結局、大きな唾液の波と喉の蠕動運動で管が収縮し弛緩し押しながされて、ころころと奥へ奥へと進んでいく
滝壺の獣の胃のなか
胃液に孤島が浮かぶ見渡すかぎり地平線まで胃液に巨大なクジラが首をもたげ、イルカやトビウオの大群が跳ねる孤島に小さな一軒家がたつ
すぽっ
横穴から
三人はとびで
くるくるっ
パッ!!
孤島に不時着する
「10点、10点、10点、10点…」「…9.5点…ジャカジャカジャカジャカ…」「………99.5点!!」「9.5」の札をにぎるルーシー
「惜しい!!」ウルスラは悔しがるズコッー!!
ボッチはズッコケる
3頁 胃の中の一軒家
一軒家はアーリーアメリカン(コロニアル)スタイルだ外壁は細長い板を一枚ずつ重ね合わせ、丁寧に張りつけてある。一枚一枚の板には水色のペンキが塗られて、まだ乾いていない。一階の屋根から採光のための小窓(ドーマー屋根)が突きでている。階段をあがった玄関の手前にはウッドデッキがついている。左端にロッキングチェア、ハンモックがぶら下がる。右はビルドインガレージのような物置だ。
黒いフードを被った老人が壁に黄色のペンキを塗っている
「嬢、おしゃれな家ですね!!」ボッチはいうと、老人はふりむく「あ、君たちは………」「私たちを知ってるんですか!?」
孤島に潮騒がよせる。カァカァ、カモメはとぶ
「お尋ね者!!」ズコーッ!!
「ほれみろテレビに出ておるぞ!!」老人が窓の中のテレビを指さすテレビではナダル国王が、お尋ね者ポスターを掲げる「ワッー!!」大歓声画面にアップで《WANTED DEAD OR ALIVE》の
老人の両目はガルド札になって光っている「いや、いやいやいやいや」ウルスラたちは汗をかいてそろって片手を振る
老人はペンキの刷毛をバケツに入れるちゃぽん「さて、はいるか?」「私たちは、出口を探してるの!?」「急ぐな、急がばまわれじゃ」
4頁 パブロ爺の頼み
中に入ると質素な木のメイプルのテーブル、その周りにウィンザーチェア、窓際の壁にパッチワークキルトが掛かる、上半分が整理簞笥で下半分が化粧テーブルになった背の高い脚付き収納(ハイボーイ)が壁にならぶ。それらの家具の脚みな湾曲してまるで猫の足のようだ。家具のほかに、バンジョー、ハーモニカ、ポケットのある壁掛けにささったレターセット、毛糸の玉、裁縫箱、鹿やウサギの毛皮、ミニ樽、女性用の化粧瓶、オルゴール、人形、写真立てがある。それらはみんな埃を被っている
どっこい庄次郎、と老人はウィンザーチェアに腰掛けて、タバコ盆からパイプを取りだす「火、あるかね?」と老人は尋ねるとすぐにボッチが横にやってきて、尖った指の先に火を灯して、パイプの火種をする
ぷは〜!!
「この家、建て増ししたのじゃ、DIYで」「グレナダは、仮面ダンスデュオ…斬新料理…」「キャンプ…DIY…文化や観光で脚光を浴びて」「大成功じゃの」老人はウィンクする「健康にもいいし、頭の体操にもなっとるわい」老人の目がきらりと光る
「そこでじゃ」「頼みがあるんじゃが」
「なんでしょうか?」ボッチはメガネをきらりと輝かせる「わくわく、どきどき」ウルスラとルーシーは老人の言葉をまつ「………」老人はパイプを燻らせ遠くを見つめる。ボッチは話をつぐ「我々にできることならなんなりと…」「どこへでも出向いてくれるか?」老人は尋ねる「もちろんでございます…」「このウルス嬢をどこへでも派遣いたします!!」ズコッー!!
ウルスラは服についた埃をパンパンと叩いて「これでも派遣王女学院主席です!!」ウルスラはルーシーにピースサインをする
「ワシは…とある国の女性と…」「文通をしておるのだが…」老人の悩みを打ち明けようとする
「この人のことですか!!」ウルスラは棚の上の写真立てを渡す「そうじゃ!!」パブロ老人は写真立てを、見つめ「名前はエッダ…」「エッダ・マキナという女性じゃ」
「じつはこの孤島は特殊な場所での…」「郵便が来ん!!」
ズコッー!!
「ボッチ、よ〜くわかります」とボッチはうなずく「それで、世界の賞金首で」ガーン!「極悪お尋ね者で」ガッビーン!「ゴロつきのならずもののチミたちに…」「いいすぎじゃいッ!!」三人はツッコむ
「これを彼女に渡してもらいたいのじゃ」
机に手紙を差しだすパブロ爺
封筒の表には《愛する・エッダへ》裏には《パブロ・Z・マキナより》と書かれてある
5頁 出口は真上の逆さ井戸
孤島カァ、カァ、カァざっぷ〜ん遠くで巨人船が引き網漁をしているのが見える
ウルスラ、ボッチ、ルーシーはあんぐりと口を大きく開けて真上を見る高いたかい天井のように見える、ウルスラたちが出てきた胃の噴門部の横に穴が見える
「あそこなでしょうか? 出口というのは…」ボッチは手を丸めて双眼鏡の形にして真上を見る「あれが《ねじれ井戸》じゃ」パブロ爺は双眼鏡で見上げていう「ね・じ・れ・い・ど?」ウルスラはきく「お嬢、魔界の出口からイグアラン島の古井戸にあがったあの古井戸とおなじものと思われます」
「原因は定かではありませんは、あの類の古井戸は」
「世界中に17穴(けつ)、散らばっておるそうです」
6頁 17人のアウレリャノ
パブロ爺「時空のねじれた古井戸が世界に17……偶然じゃな」ルーシーは鋭い目つきになる「……どういう意味でしょうか…パブロ様……」ウルスラはルーシーに小声で「なんで急にパブロ『さま』ってつけたの?」ルーシーは厳しい目つきをする「…この世には世界と異界の穴を守る時の番人…」「…17人アウレリャノがいると耳にするが…」「…………」「……所によっては勇者と呼ばれ………」「時代によっては国王・皇帝・教皇……」「時空によっては……魔王と呼ばれる…」「……17人のアウレリャノ……」ウルスラとルーシーはじっ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜、とボッチを見つめる
あわわ、あわわ、とするボッチ
ウルスラとルーシーは密林の未開の土人の姿になって口に手のひらをあてあわわ、あわわ、とリンボーダンスを踊る
ズコッー!!
「チミはアウレリャノ・ダイダラボッチ・セグンドだ」
ガッヴィーーン!
「なんでそれをッ!!」「わかったのですかッ!!」
「チミのそのノートとえんぴつに名前が彫られておる」(ボッチの胸のメモ帳がアップされる)
ズコッー!!
ウルスラは「どういうこと!!」「ボッチはパパとどういう関係なの!!」ウルスラはさけび、ルーシーにアイコンタクトをやる「ぱ、パパじゃと………アウレリャノに娘が………」パブロ爺は目を光らせるウルスラの目の合図を受けたルーシーは呪詛を唱えようと手を組んで構える
ぎゃッーーーーーーー!!
「お嬢たちッ!!」「事情はおいおい、話します!!」「まずはパブロ様の文通相手に手紙を届けましょうぞ!!」
パブロ爺はルーシーの姿を睨むように見る
「ほほ、面白いメンツがそろうとるな……」「……はっはっは」
7頁 胃液でジュー
「さて、本筋に戻ります」ボッチはいう「ほーいッ!!」ウルスラとルーシーはワクワクする「わくわく!! ドキドキ!!」声に出していう
パブロ爺はボッチの肩に手を乗せ「大変じゃのう……がっはっは!!」
「ゴホンッ!!」ボッチは浜にウルスラとルーシーとパブロ爺を整列させるパブロ爺は先に指がついているさし棒をギュンと伸ばして上空をさし
「で、あの穴が異界に繋がっとる穴だ」パブロ爺は見上げていう「で、どうやってあんなところまで……」「……行くんでしょうか?」ボッチは訊ねる「知らん!!」パブロは即答する
ズコッー!!
「ただ、ここは滝壺獣の胃袋の中じゃ」「ということはつまり…」「生き物じゃ…生き物ならばときに…」「食べたものを戻す。胃液とともに」
ウルスラたちは孤島のまわりを見渡す。波が高いボッチはポケットからナダル国銀貨をだして海に放る
ジューッ!!
遠くでは人魚たちがビート板で泳いでいる
「当然、異物は消化されるわな」「がっはっは!!」パブロ爺は笑う
「笑いごとじゃな〜〜い!!」
パブロの顔はたん瘤だらけ
8頁 蝕・天獄吐瀉!
ウルスラはハッと思いつく「ボッチ、250魔力の呪いをおねがい」ウルスラはルーシーに耳打ちをするルーシーはパブロの家に駆けていく玄関の右側のビルドインガレージのような物置へと入っていく
「なにをするんじゃ?」パブロはいうルーシーはガレージから出てきて両手でOKサインをする
「よしいこう!!異界へゴー!!」ボッチはメガネを掛け直して呪文を唱え始める
《メゾイード・ドゥ・アルドドムラス・ソドム=ゾゾスク・ドゥルクヴァングル・グロスギュラルュガンドッ!!エクリプス・ディグラメルダ!!》 《冥界の書よ、虚空の門よひらけ、摂理よ地獄燼と化せ、無の鍵によって虚無の門を開け放てっ!!蝕・天獄吐瀉!!》
ウルスラは上空に浮き、黄色く輝き、瞬く間に熱風を放った大波を作った衝撃波は、まるで水面に垂らした水滴が王冠を作って広がっていくように巨大津波になって、獣の胃壁まで到達した
ゴゴゴゴゴゴ、グアァギャアアァゴゲアゴッガグゴオオッ〜
遠くからくぐもった呻めき声が聞こえる
「ルーシー、ボードを早く浜に置いて、ボッチ乗って!!」ウルスラは体の光が消えて浜に降り立つルーシーはサーフボードを置いた遠くから5kmはあろうかという巨大な大津波が押し寄せてくる
「ごめんねパブロさん」ウルスラはいう「なにを?」パブロは答える「また家、立て直してね!」「おう。時間ばかりはあるわい。ゆっくりやるわ」
渦が巻かれるように巨大津波は胃袋の中央にある孤島に迫りくる
ウルスラとルーシーは、ガバッと服を脱いでビキニ姿とスクール水着姿になるボッチも縞々の囚人風水着になる
9頁 サーフィンに乗って
「みんな、波乗りノリノリでいくわよ!!」ウルスラはさけぶ「嬢、このリゾート気分……一週間遅れですな」ルーシーは紺色のスクール水着でぶつぶつと文句をいう
ZAPPA〜NNッ !!
大津波が逆さまに山形に渦巻いて上空に上がっていく三人はサーフィンにのって上の穴へと向かうゲロゲロゲロゲロ〜
「ひゃっほおぅ〜!!」
水中深海魚や獰猛な魚たちがが泳ぐそれを美しい人魚たちが銛で襲いかかっている
スキューバの潜水スーツを着たパブロ爺は読者に……ゴボ…ゴボゴボ…ゴボゴボゴボ!!……(……今日はここまでじゃ!!…………)
第7話へつづく
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