アシックスの決算120点だが、少し怖い

https://assets.asics.com/system/libraries/3293/2024%e5%b9%b412%e6%9c%88%e6%9c%9f%e7%ac%ac2%e5%9b%9b%e5%8d%8a%e6%9c%9f%ef%bc%88%e4%b8%ad%e9%96%93%e6%9c%9f%ef%bc%89%e6%b1%ba%e7%ae%97%e7%9f%ad%e4%bf%a1.pdf?_ga=2.114031951.953534783.1723594618-1899593993.1723594618


良いところ

・全事業で力強い増益となる。利益率が高く、高いPERが正当化される。


・【中華圏でも増益】となり、同地域で苦戦する日本の不動産や工業製品部門と一線を画す。現在、中華圏で増益を達成できる企業は世界でも限られている。

製品ジャンルは違うが、フランスのルイ・ヴィトン、英バーバリー、米スタバなど

鬼畜白人列強国の覇権的ブランドでも中国では苦戦が続く。


・政府保有株の売却により流動化を促進。

・自社株買いを決定

・来年のパラ五輪でもスポンサーとなり特需発生が確定。


執筆時点で株価が下がっているが、お金に余裕のある投資家ならば、

間違いなく買い増しのタイミングであろう。


怖いところ

・社長が調子に乗っている。

決算短信の経営説明からフランス語で挨拶をしたり、アシックスのブランド力は世界でも絶大だと、文章から油断と慢心が見て取れる。株主たる我々出資者に対し、

大企業の社長がこのような態度をとることは不適切だと俺は考える。


参考までに伊藤忠商事の岡藤会長(数年前まで社長)は、

「好業績の時、過去最高益を達成した時、社員に1日だけ喜ぶことを許します。

 でも明日になったらすべてを忘れます。これでいいんだと、浮かれてしまったら

 向上心を失い競争力を失うことになる」と戒めとしている。


これと同じことを、永守さん、稲森さんも各著書の中で繰り返し述べられている。

エジソンのゼネラル・エレクトリックは、かつて全米最大の企業として繁栄したが、最近ではダウ工業株30種から外されるほどにまで衰退した。


本田宗一郎は晩年になり、退職を決めた時、

障害の相棒とされた藤沢武夫さんにこう語った。

「なあ、俺らも、まあまあいい人生だったよな?」

「そうだな。悪くはなかったかな」


ホンダはすでに欧州においても覇権的な二輪自動車メーカーとなっていたし、

国内でも数々の賞を受賞し、宗一郎は天皇陛下の御前にも呼ばれた。

宗一郎は晩年に米国においてもその功績を認められ、米国自動車の殿堂に選ばれた。ホワイトハウスで勲章を受章したが、図に乗ることは決してなかった。


「おやっさんは、人から褒められたらその時は素直に喜ぶんだが、

 自分のことを決して誇ったことはない。自分のことをすごいと思ってないんだ」

ホンダの社員たちはこう言う。


良いものを作りたいがためにカッとなり、いい加減に作ろとした社員をぶん殴ったり、スパナを投げることは日常のことだった総一郎、「俺は本当は、弱い人間なんだよ」と自省する。それでも仕事が終わったら笑顔になりみんなと飲み明かす。

そんな彼だからこそ、社員ががついてきて現在は売上10兆円企業になった。


アシックスの社長君が調子に乗っているのは、パリ五輪に続いてパラ五輪でも

特需が続くからだ。経営とは明日もわからぬ未来に向けて命を懸けて戦い続ける行為を指す。「明日も勝てますよ」と確約されたら図に乗りたくなるのもわかる。


しかし、それでは10歳の子供と同じだ。


アシックスは、特需終了後の下落が怖い。おそらく株価は3,000円台まで順調に上がると思われるが、25年、26年以降にも同じ需要が続くとは限らないので注意が必要。もしアシックスが25年以降も生産ラインを特需のまま変更せず、過剰な製造を続けて在庫を抱えるようなら、減損を出すことを覚悟した方がいい。


村田製作所のごとくは、中国向けスマホ、PCの販売不振の際、23年度に操業度損を抑えるため、工場の生産停止を直ちに決定。その後、24年の需要回復、増産に向けて再び稼働させて営業CFの下落を最小限に抑える「製造の巧み」を実施。


デビューさんに今すぐ売れとは言わないが、AIバブルと同じように怖い株になりつつある。文章を読んだ限り短信からは感情優先で知性を感じなかった。特に25年以降にかなり注意してみた方がいい。

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