第98話 グレイル視点


「なぁ、ダン、お前さぁ、魔力指輪って何人にあげた?」

「はぁ?私が、そんな、何人もの女性をとっかえひっかえするような男だと思ってたんですか?」

 ダンが冷たい目を向ける。

「いや、そうじゃなくて、家族とか友人とか……」

「ああ。私の場合は幼少期に母親と父親からそれぞれ指輪を渡されてましたね。何かあったら助けを呼びなさいと。今はもう返してますが、妹はまだ両親の指輪をしていますよ?過保護なんですようちの親」

 そうだよな。別に女性に贈るだけじゃないよな。

「まぁ、お父さんなんて大っ嫌い!って言われて指輪がスポーンって抜ける悲劇を何回か見ているので……妹も早く好きな人から指輪をもらって両親の指輪を外すといいんですけどね……」

 ダンの話を聞いて、思い出した。

「そういえば、やたらと指輪を贈る人間もいるなぁ。家族親戚、友達にも。中にはもらった人間が勘違いしちゃってトラブルになったという話も聞いたな」

 もしかしたらリツに指輪を渡したやつもそのタイプか?

 ダンが苦笑する。

「嫌われているかもしれないと不安なんですかね?魔力指輪は安いものでもそれなりの値段しますし……自分の魔力を指輪に覚えさせるのには肌身離さず何年も指にはめていないといけないから量産するのも大変でしょうに……」

 ……ううう、確かにそうなんだ。指は10本。3年に10個できればいい方だ。魔力が低ければ10年ほどかかる。

 いや、足の指でも作れるって聞いたか。1本の指に5本の指輪をはめている御仁もいると聞いたか。いや、それは受け取った側の話だったか。いろんな人と連絡を取らねばならぬ立場の仕事についている者の中には、相当な数の指輪をはめているとか……。見えなくしているためどこの誰とつながっているのかは分からないが。

 ああ、分からん。

 リツに指輪を渡したのはいったいどんな男なんだ?

 立派な髭を生やしているのか?宿の隣の部屋に泊ってると言っていた。あの街の宿ということは、神官皇の作る本物の料理が目当てということにほぼ間違いないだろう。

 決して安くない本物の料理を食べに、泊りがけで来るということはそれなりに裕福なのか。

 それとお借金をしてでも一発逆転を狙って食べにきたのか……。

 指輪を渡すくらいだ。前者なんだろうな。

 宿に泊まっていれば……生活力のある男がリツの周りに入れ代わり立ち代わり現れる……のか。

 指輪を渡した男の他にも、次々と。

 こ、これは……由々しき問題。




========

こじらせグレイル……苦笑

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る