第90話

「えーっと、それは、結婚できないけど面倒を見るって……」

 グレイルさんは、私のことを子供扱いしている……と、言うことは……。

「養子にでもするつもりですか?」

「養子?いや、違う……すまん、結婚もできないが、養子にもできない……そうじゃなくて、その……俺が、そのリツの……住むとことも生活費も全部、面倒を見るというか……あー、それから時々会って様子を確認するというか……」

 ん?

 一夜を共にした責任を取って住むところと生活費を?時々会う?

「あ……愛人?妾?えーっと、そういうのになれって?わ、私が、グレイルさんの?」

 カーっと顔が熱くなる。

 私が、グレイルさんの……愛人……。

 めぐるめく愛の世界が頭の中に浮かびかけ……グレイルさんと私が並んでいる絵が浮かばなかったので急速に熱が冷めました。

 ないわ。ないわ。むしろ、本当に私が少年で、BLであれば絵も浮かぼうというのに……。

 落ち着いてグレイルさんの顔を見ると、グレイルさんも真っ赤になっていました。

「いや、リツをどうこうしたいとか、そういうことではなくて、あー、ほら、えっと、噂が広まると、リツは結婚もできないどころかつまはじきになれたり、変な男にまとわりつかれたり、買い物すらままならなくなったりと……いう、可能性が……あると……」

 話を聞いて、そこまでかと正直驚きました。

 確かに、貞操観念に厳しい時代とか国だったらそういうことがあると聞いたこともありますね。今だって日本では未婚の母はかなり白い目で見られたり明らかな差別を受けることもありますし……。未婚の母にした父親の方の罪はそれほど問われなくても。不公平ですよね。

 実際に産んで育てている女性が責められて、逃げた男性が責められないなんて理不尽ですよ。

 おっと、話がそれてしまいました。まぁそういうこともあり、結婚前の女性が男性と関係を持つことがとんでもない罪のように見られる国なんですね、ここは。

 ……流石に誰でもやれる女扱いされて襲われても困りますし、買い物を拒否されるのも困りますね……。

 私と一緒にいるというだけで、ミック君やキュイちゃんが白い目で見られるのもいやです。

 ……とはいえ、愛人も同じように白い目で見られるんじゃないんでしょうか?それとも、第二夫人のように暗黙の地位みたいなのがあるんですかね?

「あ、もちろん、その、もちろんリツが誰かと結婚を望んでいるのなら全面的にバックアップはするから」

「えーっと、結婚ですか?」

 私が、誰かと?

 うーん。日本にいた時もお付き合いしていた人もいなかったですし、あまり現実味がある感じはなかったんですよね。結婚って。

 周りの友達……大半がオタクだったので、似たり寄ったりで、既婚者がいなかったというのもあるでしょうけれど……。

「ちゃんと、お、俺より……いい男を、探して、リツが幸せになれるように……祝福……その、したくな……いや、違う、えっと、あ」

 なんだか、全然自分よりいい男を紹介したくなさそうな感じが前面に出ていますけど……。

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