第87話
「じゃあ、二人とも手と顔も洗ってきて。それからお水を汲んできてもらえる?」
ミック君に桶を手渡しました。
さて。二人を見送ってからオニオンスープを作るために初めに収穫した玉ねぎの皮をむきます。
それから持ってきているぬれタオルで手をぬぐいます。細かく刻んだらフライパンに入れてじっくりあめ色に炒めないといけません。
「あ……」
フライパンのふたを開けると、中に牛乳がたっぷり入っていました。
「そうでした……。ワーシュさんにもらったのでした。せっかくの牛乳です。何に使おうかなぁ」
って、いつまでもフライパンに入ったままでは料理ができません……困りました……。
とりあえずコップ2つに牛乳をうつします。フライパンは空になりません……。
「とりあえず、ここに入れておきましょう……」
ミック君が買ってきてくれたスライムを入れる予定のガラス瓶に牛乳を入れます。
うーん。まだフライパンが空になりません……。そうだ。せっかくなので何か作って飲みましょう。
牛乳……何ができるでしょうか。あ、あれなんてどうでしょう。
米粒魔石をとりだして「チィロールチョコレート」を1つ出します。
牛乳の入ったフライパンを火にかけて、牛乳を温めます。そこに、刻んで細かくしたチィロールチョコレートを入れて溶かして混ぜます。
「できました!なんちゃってミルクココア!」
コップは使ってしまっているのではしたないけれどフライパンから直飲みになります。ということは少しフライパンが冷めてからですね……。
火からおろして、フライパンを置こうとしたところで、目の前にグレイルさんが現れました。
「ひゃっ」
「あ、すまん、驚かせた」
「グ、グレイルさん……え?どうやって来たのですか?」
足音も気配も一切感じませんでした……いえ、私が鈍いだけかもしれませんが……。
それにしても、一本道なのに全く視界に入らないままたどり着くことなんてあるでしょうか?気配を消し、姿を隠しながら移動するなんて、忍者っぽいですよ。
いえ、暗殺者?アサシン、グレイルさんくらいイケメンな暗殺者なんて……いえ、もしかしたら美少年だった故に敵を油断させるために容姿が役立つと暗殺者軍団に誘拐されその技を仕込まれた……可能性も――あるわけないですよね。はい。漫画のネタを考え出すのは癖みたいなものです。
「ああ、そうか。そうだな。リツは知らないんだよな。これだ、これ」
グレイルさんが腕にはめたごっつい金属の腕輪……いや、腕輪?鎧の一部?小手?なんでしょう、装飾品レベルではなくて、手首からひじまでの半分くらいを覆うものを見せてくれました。
「魔力増強の腕輪だ。これをはめれば、転移魔法が使える。リツの指輪を座標として転移してきた」
……!!!
情報が多い!
多すぎますよ!
えーっと、魔力増強装置……。そうです、なんか私、頭にはめられましたよね。そういうものが他にもあるってことですか?
一般的なのですか?だったら……それを使えば、もしかして私、もっと大きな魔石から食べ物を出すことができるんですよね?
お、おにぎり、おにぎりが食べたいです……。ぱりぱり海苔の鮭おにぎりが……食べたいでしゅ……。
「あの、魔力増強の腕輪……魔力増強する道具はえーっと、一般的ですか?」
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