第80話
「キュイのご飯が入ってんのか?でも、それだけじゃ腹減るだろ?パン食うか?そうだ、おいらパイナップルも出せるんだ。特別に食べさせてもらったからな」
ミック君の言葉に、キュイちゃんが首を傾げました。
もしかしたら、パンもパイナップルもどんなものか知らないのかもしれません。
と、いうより……。
「キュイちゃんは、何でも食べれる?私とミック君と同じもの食べる?」
確認しなければなりません。いくら人の形をしていても、人とは食べるものが違う可能性があります。
「キュイ!」
うんとキュイちゃんが頷きました。真っ白な髪が光を反射してキラキラしています。
天使みたいです。かわいい。魔物とか魔族とか言うけれど、天使とか妖精の類じゃないかしら?
「だったら……ミックくん、玉ねぎを出してもらっていい?」
「お安い御用だよ」
ミック君が玉ねぎを一つ出してくれました。
あ、そうだ。
革袋からグレイルさんにもらった魔石をいくつか取り出してミック君に渡します。
「もう少し玉ねぎ出してもらっていい?」
ミック君が出してくれるのは新玉ねぎです。外の皮が茶色くないやつです。つるして干しておけば皮が茶色くなって日持ちするようになります。ミック君と行動をしなくなった後も玉ねぎが食べられるように、つるしておきたいです。
私の手のひらの魔石を見てミック君が首を横に振りました。
え?無理なお願いをしちゃいましたか?
「魔石がもったいないよ」
いや、もったいなくないですよ?玉ねぎは大好物なので、どれだけあっても足りないくらいです。
「ちょっと貸して。見てて」
ミック君が私の手から玉ねぎを手に取ると……あ、ちなみに玉ねぎといっても、上にネギみたいな葉っぱがついた状態なので、葉っぱみたいなところをむんずとつかんでやり取りしております。
……このネギみたいなところって食べられるのでしょうか?上の方は堅そうで食感が悪そうですが、下の方は食べられそうです。
なんてミック君の手に移った玉ねぎを見ていたら、ミック君は地面に穴を掘り、玉ねぎを埋めてしまいました。
「え?ええ?え?」
何が起きているのか分からないのですが、キュイちゃんが楽しそうに真似して穴を掘ってニコニコしているので、全部どうでもよくなりますね。
かわいいです。
「じゃあ、見ててよリツ兄ちゃん」
ミック君が手に着いた土をぱんぱんと払うと、埋めたネギに向かって手をかざしました。
「おおきくなぁれ、おおきくなぁれ」
はい?
まさか、魔法?
巨大な玉ねぎに成長するとか?
昔読んだ、大きな大きなサツマイモが収穫できて、皆で食べる絵本を思い出します。さすがに大きな玉ねぎの中をくりぬいたりしても、目が痛くて中に入って遊ぶとかできないと思うんです……いえ、食べようとしても大きなものだと目の痛みとかの問題が……。
なんて杞憂でした。
玉ねぎは、あっという間に葉をさらにぐんぐんと伸ばしてネギ坊主を作り、枯れていきます。
「あああ、枯れて……玉ねぎ、玉ねぎは?」
土を掘り返そうとしていると、ミック君はネギ坊主の方を手に取りました。
「キュイ、偉いぞ、種を入れる穴を掘ってくれたんだな。穴にこれを入れて土をかぶせてくぞ」
は?
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★や❤や🔖などありがとうございます!
ミックくん何気にチートw
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