第81話

 ああ、玉ねぎのネギ坊主は玉ねぎの種……うん、間違いではないです。

 二人で穴を掘って種を入れて土をかぶせています。

 あー、そうね。魔石を使わなくても、これなら玉ねぎ畑ができて、いっぱい食べられ……ます?

 いやいや、こんな道端に勝手に畑作っちゃだめですよね?

 そもそも収穫までどれだけかかるんでしょう。お世話をしに森の中生活ですか?

 いろいろと、突っ込みどころ満載で、混乱していると、ミック君が手をぱんぱんとはたいて立ち上がりました。

「まぁ、こんくらいでいいか。んじゃ。おおきくなぁれおおきくなぁれ」

 また魔法の呪文を口にします。

 土の中から芽がにゅんっと出てきました。それからにょきにょきにょきっと芽があっというまに伸び、土から玉ねぎの頭っぽいものも見えてきました。

「うん、これくらいか?」

 あっという間に、玉ねぎが30個ほど収穫時期を迎えました。

「どうだ、リツ兄ちゃん。足りないようならもっと出すけど」

 言葉を失うとはこのことです。

「すごい、すごいです、ミック君、なんてすごいの?」

 これなら無限に玉ねぎ食べ放題ですよ!

「へへっ。おいら、緑の手の持ち主だからな。でも、せいぜいこれくらいの範囲しか成長させられねぇから、まだまだだけどな」

 ミック君がどや顔をしながら鼻の下を指でこすりました。

 あああ、土の汚れがミック君の鼻の下に。

 なぜか、キュイちゃんもミック君のまねをして指で鼻の下をこすって、土の汚れが。

 た、確かに3歳くらいの子なら、人の真似とかいっぱいするお年頃かもしれませんが……。二人とも、鼻のしたがちょび髭みたいになって……。かわいい。

 後で拭いてあげましょう。手も洗わないとね。でもその前に。

「ううん、すごいよ。すぐに玉ねぎを食べられるように成長させられることもすごいけれど……これ。これがすごい」

 べた褒めすると、ミック君が照れたように小さく首を横に振りました。

「すごくねぇよ……複製から育てたやつだからな。これ食っても玉ねぎだせねぇし……。これで作った料理ももちろん複製扱いだから出せねぇし」

 いやいや、どうせ、私は魔力が足りなくて魔石があって本物を食べたとしても出せませんしね。というか、玉ねぎは食べたことがあるので、30円の魔力に成長すれば出せます。……100円ほどのパンの魔石は10歳前後で祝福を受けると言っていましたので……。30円だと単純計算で3年ですか?もう少し早まりますか?それとも米粒魔石料理ばかり食べていたらもっとかかりますか?

 結局果てしなく先なのです。

 ファミレスで食べたオニオングラタンスープ……美味しかったけれど、400円だか500円だかなので、死ぬまでに出せる自信がありません。多分無理でしょう。

 となれば……。

 魔石で食べるものを出すということには頼らないでもいろいろ手に入る方法があるのはありがたいのです。

「すごいのは、こっちだよ!こっち!」

 ミック君に、残りのネギ坊主……玉ねぎの種を手に取り見せます。

「え?」

「これを植えて育てれば、玉ねぎをいつでも食べられる生活ができるんですよね?」

 収穫した玉ねぎを干して保存するということしか思いつきませんでしたが、確かに種で保存して、栽培するほうが持続的に玉ねぎが手に入ります。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る