第67話

 ……しかし、飲み水以外は魔石が減ることもなく水やお湯が使えるとなると、洗濯などにも使えるということですよね……。わざわざ水場に行かなくていいし、水を汲んだりする重労働も必要ない。……あれ?しかも、もしかして汚れを落とした後に戻れと言うと、水が戻る……干さなくても洗濯が渇くのでは?

 す、すごい……。魔法、すごい!魔石、便利!すごいです!!洗濯は試してみましょう!干さなくても乾くなんて最高ではないでしょうか?

「もちろん追加料金も不要さ。で、どうする?食事は付けるかい?いくつか特別な料理も用意できるからね。噂のハーブ鶏は高くて無理だけど。果実水とパンと塩焼きした肉とパイナップルがつくよ」

「パイナップル?」

 唐突に出てきたハイカラな単語に思わず目が丸くなります。。

 パンも肉もあんな感じの食生活がいまいちのこの世界でまさかパイナップルなんて単語を聞けるとは思いませんでした。

「ああ、知らないかい?なんでも南の方の国で食べられている果物らしくてね。神官皇様が南国から持ち帰ってこの街の教会で栽培しているんだよ」

 コウ様の名前がまた出てきました。有名人でしょうか?ミック君の保護者というだけではなく、多くの人を救う立派な神官さんなのかもしれませんね。

「あの、では食事をつけて、えーっと、小さい部屋で10日でお願いできますか」

 1日銀貨3枚と銅貨5枚なので、2日で銀貨7枚です。10日で銀貨35枚。

「前払いになるけれど、大丈夫かい?」

「あ、はい」

 金貨を取り出し渡します。おつりが返ってきました。

 ……金貨、大金だと思いましたが1か月宿に止まったらなくなっちゃう金額でした……。大きめのフライパンが欲しいとか桶が欲しいとかそんなことを言っている場合ではありません。お金を稼がなければ野宿生活に逆戻りです。

 えーっと……とりあえず10泊の間に身の振り方を考えなければいけませんね。

 米粒魔石拾いをしながら、お金を稼ぐ方法を手に入れないといけません。

 ミック君に美味しい物を食べてもらわないといけませんし。

 私自身も美味しい物を食べたい!

「じゃぁ、2階の一番手前の部屋だよ。これが鍵だ。夕飯はいつでもいいよ。声をかけてくれれば用意するからね」

「はい、ありがとうございます」

 ニコニコと人のよい笑顔を見せるマーリーさん。

 なんだか、私、この世界に来てから……いいえ、違いますね、城を追い出されてからと言った方がいいでしょうか。城を追い出されてから、いい人とばかりで会っている気がします。

 この世界の神様がどんな方かわかりませんが神様ありがとうございます。

 部屋に荷物を置きます。

 部屋はベッドと小さなテーブルと桶と荷物を置くためなのか棚が一つあるだけです。

 シンプルですが掃除が行き届いていて綺麗そうです。ベッドに腰掛けると、座り心地は、そうですね……小学校や中学校の椅子よりは柔らかいですが、オフィスの椅子よりは固いといったところでしょうか。ベットとしては固いです。地面で寝るよりは快適そうではありますけれど。

 あれ?

 小さな鉢が棚の中壇に飾ってあります。ピンクの小さな見たこともない花が咲いています。

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