第64話 ★

「褒めてもらえてうれしいけれど、誰でも簡単に作れるし……ミック君今度一緒に作る?他に材料があればもっと美味しく作れるんだけど、あの味でよければ肉が手に入ればいつでも作れるからね?」

 ミック君の目が輝きました。

「え?おいらも作っていいの?作り方秘密にしなくて、大丈夫なのか?」

 作り方を秘密?

 ふふ。企業秘密です。隠し味は教えられませんみたいな感じでしょうか?

「秘密にするようなことは何もないから大丈夫だよ。もちろんミック君も覚えたら一人で作って……は、ちょっと火を使うから危険だからえーっと、誰か大人の人と一緒に作っていいからね?」

 ミック君がぽかぁーんとしている。

「大人と作るって、……そんなことしたら、その人にも作り方ばれちゃうぞ?」

「ばれちゃうって、別に秘密じゃないって言ったよね?ミック君以外にも秘密でもなんでもないよ?」

 ミック君がぶんぶんぶんと大きく頭を横に振りました。

「複製だって金貨1枚になったんだぞ?本物で作ったらすげーお金になるんだぞ?」

 あー、確かに。一切れ金貨10枚は大げさだったとしても金貨何枚かになるなら大金ですね。

「確かに、いっぱいお金は入るかもしれませんが……あぶく銭は身につかないのですよ?」

「は?え?」

 一時期はそれで儲かるかもしれませんが、たいして難しい作り方ではありませんし、いくら隠していても作っているところを見ればすぐに分かるでしょう。別の人がまねして作り出せばすぐに高いお金で買う人はいなくなるはずです。

 それに……。誰かが本物を作って多くの人に食べさせれば、あっという間に作らなくても食べられるようになるんですよね?作り方を知らなくても知っているのと同じように食べられるようになるんです。

 秘密にする意味はあるでしょうか。

 このまま同じように儲かると皮算用していて、お金が入らなくなってから困るのは自分なのです。もっと手堅い堅実な仕事を探した方がいいと思うのです。

「……やばい、リツ兄ちゃん泥団子だけでもヤバイのに、なんか、すげーヤバイ……」

 ん?

 泥団子がヤバイ?

「それにレンガ……いやハンバーグもヤバイし、どう考えても……危険だ」

 はい?何が危険なんでしょう?

「分かった。とりあえず神官皇様に相談するから。おいらがちゃんと伝えるリツ兄ちゃんはおいらが守るって決めたからな!任せといてくれ!」

 ん?コウ様と相談?コウ様と私が対立する構図はなくなったのでしょうか?謎です。いろいろ。

「まぁ今回は神官皇様の新作だと思われてるし、問題ないと思うけど……あー、おいらが売るって偉そうに言ったけど、リツ兄ちゃんの安全のためにはやっぱりあんまり今度から売れないかも。いや、神官皇様に売りつけりゃいいか……うーん、とにかく、一度神官皇様に相談してみるよ」

 ミック君がいろいろと頭を働かせてブツブツと独り言のように言葉を漏らしています。

 まぁ、私は大人だけれど、この世界に関してはど素人なので、むしろ子供とはいえミック君の判断の方が頼りになるでしょう……。コウ様に何かを相談するというのなら、相談してもらいましょう。



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