第44話

「うん、おいら、お兄ちゃんが作るものだったらなんだって食べる!」

 いやいや、流石に私自身が食べられないものは食べさせるつもりはないから……なんだって食べなくていいんですよ。

「あ、そうだ。飲み物も飲む?」

「水ならおいら出せるよ!」

 ミック君がポケットから魔石を1つ取り出しました。小指の爪の先サイズで、パンが出せるものです。

 ふと、気になったのでミック君に尋ねてみました。

「水以外の飲み物……えーっと、口に入れる液体って他に何が出せる?」

 果実水、子供だからお酒類は無理として、牛乳とか何か出せないかなと思って聞いてみます。

「うん……と、おいらが飲んだことがある本物は、ちゃんとした水以外は……川の水と水たまりの水と、葉っぱの上にたまった水と」

 うぎゃーっ!聞くんじゃありませんでした。

 ごめんなさい、ごめんなさい。なんだか嫌なこと思い出させてしまってごめんなさいっ。

「あ!あと、本当は内緒なんだけど……」

 ミックが声を潜めます。

 え?内緒の話を私が聞いてもいいんでしょうか?

「この魔石では出せないんだけど、神官皇様が特別にリンゴの絞った汁とはちみつを入れた水を飲ませてくれたことがあるんだ」

 えへへと嬉しそうに話すミック君。

 へー。なんだか分からないですが、神官のコウ様という人はいい人みたいです。

 特別……なんだ。水以外の飲み物。パンが出せる魔石では出せないということは値段も高いんですね。

 リンゴが高級品だから?それともはちみつが高級品だからでしょうか?やっぱり、甘い物が高い世界ということかもしれません。

 ……と、すると……。

 チィロールチョコレート……って、この世界ではとても高価な品に位置づけられる物なのでは?

 少しはちみつを溶かした飲み物ですら、パンが出せるサイズの魔石では出せないって……。

 肉の出せる魔石では出るのでしょうか。それとももっと高価でしょうか……。

 いくら米粒魔石から出せるといっても、人前でポンポン出すものではないのかもしれません。高価な物だと勘違いされて、悪い人につかまって利用されたりする可能性もあると言うことですよね……。

 そういえば、綺麗なお兄さんに上げてしまいましたが……。

 ……パンを出してくれましたし、悪い人ではないですよね?

 それに、泥団子だって言われましたし。とてもチィロールチョコレートが高価な物には思われなかったですよね?

「ミック君、じゃぁ、私とミック君のお水を出してもらっていいかな?」

 巾着から小指の爪サイズの魔石を取り出してコップを渡します。

 私が出すと米粒魔石でも大量の水が出ちゃうからちょっと不便なんですよね。手を洗ったり、火の始末をするのには便利と言えば便利ですが。

「リツ兄ちゃんも水出してたけど、あれは飲めないやつだったのか?」

 いえ。普通にしっかり飲める水道水ですけども。

「だったら、おいらに任せてくれ。井戸から汲んだ冷たい水が出せるんだ!」

 嬉しそうなミック君。誰かのために何かをしてあげることを喜べるって、いい子です。

 ああ、もうっ。もうっ。ぎゅーってしていい子いい子したいです。

 まぁ、しませんけど。……頭なでなでくらいはしちゃだめでしょうか。……ん。ダメですね。一緒にハンバーグ食べただけの関係ですし。

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