【BL】黄花竜牙2

@F_Y

第1話 再会

「何者だ?」


シユは、身を潜めていた茂みの中から、通りへと飛び出した。


左右の道からも、別の夜警たちが、走って来るのが見える。


こうなったら、捕まるより…


目の前の石段を駆け上がり、力任せに門扉を叩く。


すると、重厚感のある縦長の扉が、軋む音を立てて、左右に開いた。


助かった。


安堵したのも束の間、屋敷内に立っていた人物を見て、足を止める。


「その者は、ここ数日、屋敷周辺をうろついていた不審者です」


夜警団の一人が告げると、門番らしからぬ風情の男が、ぼそりと答えた。

「この屋敷の者だ」


胸元のあいた上衣を纏い、下ろしている髪は、腰ほどの長さがある。


随分と、恵まれた体格をしている。それに、妙に落ち着いている。


主人自ら、門を開けに来るとは、誰もが思わない。それも、ここは王家の屋敷だ。


捕えようとしていた少年は、いつの間にか、一団の背後へと移動し、身を縮めている。


団員たちは、このまま引き下がって良いものか迷った。


尋問すれば、余罪の一つや二つ、容易に吐きそうな類の若造なのだ。


その時。

雲が切れ、月明かりが、男の顔を照らした。


光を反射して、片方の瞳が、ほとんど色を失っている。


次の瞬間、皆が一斉に跪いた。ぞわりと、全身が粟立つ。


この三年間、あまりにも多くの血が流れた。流されたのだ。この男の行く先々で。


背後で、少年が走り去って行く足音が聞こえたが、頭を上げる者は、誰もいなかった。

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