お気に入りの空の話ー須賀原家三姉妹の場合ー
風と空
第1話 空?
須賀原家三姉妹のリビングで、次女
今日も朝から何やら起こりそうな須賀原家。
そこに今日は仕事が休みの長女
「あれ?佳奈早いね。どうしたの?」
すかさずあったかいこたつに入りながら、一枚写真を取る志帆。どうやら佳奈のもう一つの趣味の写真らしいが……
「ねぇ、志帆姉。どれがいいと思う?」
「は?何?」
「ほら私が好きなプロの写真家クロノヒョウさんが、ブログで『貴方の「お気に入りの空」募集』って昨日の夜にアップしていたの。それに出したいんだけどね」
とウキウキしながら説明をする佳奈。
それに対して沈黙する志帆。
そう、佳奈の趣味は変わった物好き。
写真の撮り方もまた斜めをいく。
「ねぇ…… この女の子の後ろ頭と空ってどうしてこのアングル?」
「あ〜、これねぇ。ほらお隣の美穂ちゃんいるじゃない?毎朝出社するお父さんに元気に「行ってらっしゃーい」ってベランダから声かける子」
「ああ美穂ちゃんね。昨日は面白かったよね。いってらっしゃいじゃなくて、必死に「パパー!パパー!」って呼ぶからなんだろうって思ってたら「まだチュウしてなーい!チュゥゥゥウしてなーい!」って必死にシャウトしてんだもん。
お隣のご主人さん顔真っ赤にして家に入って行ったんだよね。いやぁ、あれには朝からほっこりしたわ」
「そうなのよ。あの美穂ちゃんの可愛さと、青空を表すならこのアングルって思って撮らせて貰ってたんだ」
誇らしげにいう佳奈には悪いが、志帆にはどう考えてもバランスの悪い写真にしか見えない。ここは話題を変えようともう一つの写真を手に取る志帆。
「えーと、これは外人さんとお爺さんなのかな?これは駅のホームから撮った写真?」
電光掲示板が映り、またしても金髪の外人さんの後ろ頭と白髪のお爺さんの薄い後ろ頭が写されている。
佳奈が大勢の人の中でどういう格好で撮ったのか、あまり想像したくない志帆。かなり目立っていた事だろう。
「あ、これね。この金髪の外人さんがおにぎりのフィルム剥がすの出来なくてね。色々ひっくり返してた姿をみてね、隣に座ったお爺さんが手を貸してあげてたんだけど。
お爺さん英語言えなくて「ん、ん!」って言って動作で説明してて、まず真ん中のフィルム剥がすじゃん。外人さんが「Oh!」って驚いたもんだから、お爺さん自慢気に素早く左右のフィルム剥がして「ん!」って渡してたの。
もう外人さん「Oーh!」って大喜び。お爺さんになんか英語でお礼言ってたけど、お爺さんも「ん!ん!」って頷いていてね。なんか会話になっているの面白くて撮らせて貰ったの。ほっこりするでしょ」
「話はほっこりするわね…… 」
写真はどう見ても空が少ない。これは無いだろうと思う志帆。そこに、ガチャッとリビングのドアが開き、三女
「おはよう〜。何してんの?」
「あ、みーちゃんもちょっと来て〜」
まだ眠たそうな美恵を呼ぶ佳奈。美恵は佳奈に説明を受けながらこたつの上の一枚の写真を取る。
「で、このドラッグストアなに?佳奈姉。もはや空じゃないじゃん」
「あ〜、その日のドラッグストアは神がかってたのよ。入り口入ったら、レジのお姉さんに男の子が話かけててね。自慢気にこう言ってたの。
『僕のパパヤクザ!クスリ売ってるの!』って。
よく聞いたら男の子の子のパパ薬剤師さんでね。まず入った途端に一撃食らったのさ。
それでもって化粧品売り場行ったら、大体七、八歳の女の子が「これ欲しい〜!」って駄々こねてるわけ。指刺す先には『10歳若返ります』ってうたわれている化粧品があるわけさ。
その子のお母さん真剣に「死ぬわよ!」って女の子に言ってるの聞いて流石に吹いちゃってねぇ…… ってちょっと志帆姉!何で写真片付けてんの?みーちゃんまで!」
無言で写真を片付ける志帆と美恵。「さ、ご飯作らなきゃ」とキッチンに向かう志帆の手には佳奈の写真が。
「ちょっと〜!何で持っていくのさ!」
不満顔な佳奈に、美恵がため息混じりに話出す。
「佳奈姉。今日は休みでしょ?天気も良いし一緒撮りに行こう。絶対いい写真撮れるって」
最後は「ね?ね?」と強気でおす美恵。「う、うん」となんだか釈然としないが美恵と写真をとりにいけるのが嬉しい佳奈。「ま、いっか」と流される佳奈はいつもの事。
志帆も美恵も佳奈が好きなのは雲一つない空だとはわかったが、如何にして出させない様にするか思案中。
だが、そこは佳奈。ちゃっかりデータをアップしていたらしく後日発覚したのは、美穂ちゃんの後ろ頭の写真だった。
クロノヒョウさんの広い心には感謝しかない二人だった。
おわり。
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いつも企画ありがとうございます。失礼しました🙇🏻♂️
お気に入りの空の話ー須賀原家三姉妹の場合ー 風と空 @ron115
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