第356話 ダンジョン産の素材とか



Side 五十嵐太郎


都内にある高層ビルにあるダンジョン日本のオフィス、そして社長室に代表とともにいる。

ダンジョン再開が早かったので聞きにきたが、上の命令のようで彼にはどうしようもないようだな……。


まあ今は、もう一つの案件の方を確認しておくか。


「まあ再開の方は分かりました。

後、もう一つの方を確認しておこうと思いましたね」

「もう一つ?」

「ダンジョンから産出される素材などの、買取の件ですよ」

「ああ、買取ですか。

それに関しては、研究用にいくらかこちらで引き取った後、残りをそちらに売却するという話でしたね……」


そう、実は北海道や秋田のダンジョンから産出される品物や、ダンジョンの魔物から採れる素材などは、今の地球では全く使い道がなかった。

そのため、ダンジョン企画に売却するということで話がついている。


もちろん、この先、世界中に出現しているダンジョンからの素材や品物も、使い道がない場合はダンジョン企画が買い取るということになっている。


実際は、ダンジョン企画という窓口からダンジョンパークへと品物や素材は移動している。

そして、ダンジョンパーク内の町などでその素材を使って魔道具や武器・防具などに変わった後、研究用やダンジョン探索用に買い取られダンジョン外へと出荷される。


ダンジョン日本と提携を結んでいる企業で研究されてはいるが、ダンジョン産の素材や品物は需要が無いのが現状だ。


何せ、地球では科学技術が存在し、資源が枯渇しているわけではないのだから。


「そうです。

で、こちらで買い取った際のお金は、ダンジョン日本の口座に振り込まれるということで大丈夫ですよね?」

「はい、問題ありません。

まあ、すぐに政府の会計担当が必要経費以外を国庫へと移動させると思いますが……」

「そうなると、提携企業などへは……」

「そちらは、国から支払われるそうですよ」

「……何だかダンジョン日本とは、日本政府の下請けといった感じですね~」

「まあ、間違いではないでしょうね……」


疲れた表情の彼を見れば、かなりもっていかれているということが分かるな。

どうやら本当に、日本政府の下請けになっているのか。


「あ、そう言えば出店の話はどうなりましたか?」

「ダンジョンパーク内の町にある、武器や防具などの店の出店ですか?」

「そうです。

今は、ダンジョン日本が仕入れてこちらの町で売っていますが、後々にはそちらでという話でしたが……」


ダンジョン日本からそう言う打診があったらしいが、颯太はそんな気はないようだ。

ダンジョンパークの町から出て、武器や防具が作れるか分からないし、制作過程を研究されても困るからということらしい。


まあ、科学技術だけでダンジョンの素材から、武器や防具などを作ることはできないらしい。

となれば、研究に一役買う必要もないだろうとのことだ。


「ダンジョンパークの店に打診はしていますが、難しいかもしれませんね~」

「そうですか……。

やっぱり、秘匿する技術とかあるんですかね?」

「かもしれませんね~」

「ですよね~」


またガックリと、肩を落としている。

いろいろとうまくいっていないようだが、こればかりは仕方ないだろう。




▽    ▽    ▽




Side ???


再開された北海道ダンジョンが見える場所で、一人の女性が待ち合わせをしていた。

冬の北海道でも寒くないようにしっかり着込み、ニットに耳当てまでして立っていた。


「……遅いにゃ~」


厚い手袋で持っているスマホの画面には、時間が表示されているが、どうも相手が遅れているらしい。


そこへ、厚着をした女性が走って近づいてきた。


「遅れてごめ~ん」

「奈央、遅いにゃ」

「ホント、ごめん!

……でも莉緒、語尾がおかしくなってるよ?」

「にゃにゃ!

あ、あ~、き、気をつけるわ」

「「……」」

「……とにかく、ダンジョンに行こうか」

「そうだね。

ダンジョン巫女の、エレノアさんからの依頼だしね」

「うん」


奈央と莉緒は一緒に、北海道ダンジョンの入り口へと向かう。

これから、ダンジョン前の町に入り登録をおこなった後、ダンジョンに入るつもりだ。

そして、ダンジョン内がどうなっているのか調査を行う。


本来であれば、虫ゴーレムを使って偵察調査するらしいのだが、なぜか北海道と秋田のダンジョンには侵入することができなかった。


この原因を、私たちは調べるようにエレノアさんから依頼されたのだ。

ダンジョンパークの外に出て、こちら側に来るのは少し怖かったが、興味もあったので依頼を引き受けたのだ。


「そういえば、例の物は持ってきた?」

「こっちでの身分証でしょ?

確か免許証とか言っていた……、これにゃ!」

「莉緒……」

「あわわわ。ヘ、変な口癖になってしまっているにゃ」

「あ、あはは……」


列に並んでいたため、周りの人の視線をごまかすために変な口癖と言ってごまかす。

どうやら、痛い女の子と誤解したようだ。

私は、乾いた笑いしか出なかったが……。


でもこっちでは、身分証に免許証なるものが使われるらしい。

それか、もう一つのマイナンバーカードなるものを使うとか。


エレノアさんからは、私たちの分をどちらも用意してもらったが、よく考えたらこれって偽造カードじゃないのかな?

まあ、ダンジョン技術で作ったものだから、バレる心配はないと思うのだが……。



そして、私の心配は杞憂に終わり、無事、登録完了してダンジョンに入ることができた。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る