第332話 対策を話し合う



Side 五十嵐颯太


「……助けるにしても、詳しいことは分かっているの? ルナ」

「少し調べました」


そう言って、ルナは手帳を取り出し調べてきたことを喋りはじめる。


「名前は、神田彩。十九歳。○○大学の一年生です。

自身の自由に使えるお金を稼ぐため、バイトに募集したところそれが闇バイトでした。

自身の個人情報漏洩と家族のことで脅され、仕方なく窃盗を犯しました。

また、九州ダンジョンパークでケットシーをテイムして従魔としていたこともバレて、窃盗に使うように指示され、仕方なくケットシーを窃盗に使用して成功率をあげさせられたようです……」

「ん~、闇バイトか……」

「でもそれは、自身で闇バイトだと見抜けずに応募してしまったことが、迂闊だったのでは?」


ミアは、辛辣だね。

そうだとしても、そこは責めてはいけないような気がするけど……。


「いえ、その応募も普通のバイトを紹介する雑誌で応募したようです。

ところが、その応募したバイトが……」

「闇バイトだったと……。

普通のバイト募集雑誌にまで、闇バイト募集の手が伸びているとはねぇ……」

「なるほど。それでは、仕方ありませんね。

ルナ、すみません。言い過ぎました」

「いえ、大丈夫です」


自分が間違っていたと、すぐに認めて謝る。

ミアは、本当にできた巫女だよな~。


「ところで、何故ケットシーが窃盗にむいているんだ?」

「それはマスター、ケットシーは猫の特徴を持っているからです」

「猫の特徴……」

「まずは肉球です。

これがあることにより、足音を立てずに移動できます。

さらに、小柄で体が柔らかい。

これで、狭い場所でも簡単に忍び込むことができます」

「へぇ~、まさに怪盗ということか」


忍者みたいだけど、あえて言うならニャンジャか?

……まあかわいい呼び名はともかく、彼女とケットシーを助けるにはどうすればいいか。


「それでルナ、そのケットシーのマスターは窃盗をやめたがっているの?」

「はい、すぐにでもやめたいようです。

警察に、何度も出頭しようとして闇バイトの連中に邪魔されているようですので」

「なるほど……」

「それと、その闇バイトの連中なんですが……」

「何かあったの?」

「……その彩さんの父親に、詐欺を仕掛けたようで……」

「まさかルナ、その詐欺に?」

「はい、父親がまんまと引っ掛かりかなりの借金をしたようで……」

「借金? いくら借金したの?」

「二億円、だそうです……」

「二億円?!」


え? 何で、そんな額の借金ができるんだ?

出来ても、せいぜい数千万だろう?


「その彩さんのお父さんは、何をしている人なんだ?」

「運搬業の社員です。

何か、責任のある役職とかにはついていません」

「……それで借金二億?

よく貸してくれるところが、って、まさか?!」

「はい、闇金で借りたとか……」

「……なるほどね。

綾さんに、おかしな真似をさせないために父親を人質にとったわけだ。

その闇金業者も、闇バイト連中の息のかかった業者ってことか……」

「おそらくは……」


これは、大掛かりな組織が絡んでいそうだな。

テレビのニュースでも、外国から指示する連中がいるとか拠点が海外の刑務所とか、いろいろやっていたからな~。


俺は、コアルームにいるミアとエレノアの顔を見る。

すると、二人とも頷いてくれる。

そして、最後にルナを見ると頭を下げる。


お願いしますということだろう。

俺は頷いて、エレノアに指示を出す。


「エレノア、ちょっと拠点とか調べてくれるか?」

「分かったわ」

「ミアは、彩さんの身辺調査を頼む」

「分かりました」

「あのマスター、まだ何かあるのですか?」

「父親にだけ、手を出しているとは思えないでしょ?

赤い人も言っていました。

戦いとは、いつも二手三手先を考えて行うものだ、と」

「あ、赤い人、ですか?」

「……まあ、赤い人はいいんだけど。

とにかく二手三手先を読む、ということは父親だけで安心はできないでしょ?」

「た、確かに……」


そうだ、闇バイトの連中が父親だけに仕掛けているとは思えない。

綾さんが知らないだけで、他の家族にも手が及んでいるかもしれない。

助けるなら、ちゃんと助けないとね……。




▽    ▽    ▽




Side セーラ


気配と姿を消して庭から中の様子を窺っていると、ウィンリィという女の子に見つかり魔法を使われそうになったので、姿を現しました。


『誰だ!』

「私は、ダンジョン巫女のセーラといいます。

あなたたちに、お話がってきました」

『話?』

『レイジ、中に入ってもらいましょう?』

『でも……』

『外は寒いわよ? それにあの人、悪い人に見えないし……』

『シリィがそう言うなら……』


というわけで、私は家の中へ通されました。

風の精霊のシリィには、感謝しなければなりませんね。


家の中に入れてもらい、リビングに通されソファに座るように勧められました。

私は、勧められたとおりにソファに座ります。

そして、家の中を見渡し従魔を確認しました。


キッチンで、お茶の用意をしているのが風の精霊の従魔のシリィですね。

その横で、手伝っている青年がマスターのレイジさんでしょう。

ならば、私の前のソファに座って私を睨んでいるのがウィンリィと呼ばれていた精霊ですね。


……なるほど、ウィンリィは水の精霊ですか。

では、その横でお菓子に夢中なのが、大喰らいのカノンでしょうか?

ならば自動的に、テーブルの所で椅子に座ってお酒を飲んでいるのがリリィなんでしょうね。


ん~、カノンは火の精霊みたいですね。

ならば……、リリィは土の精霊です。

すごい、四属性の精霊を従魔にしているなんて……。


「……どうだ? 私たちの正体が分かったか?」

「……四属性の精霊、ですね?」

「その通り! で、あんたはダンジョン巫女らしいが?」


……もしかして、ダンジョン巫女を知らない?

まさか……。







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