第225話 アメリカのダンジョンパーク構想
Side 五十嵐颯太
朝食を終えた後、俺は父さんに質問する。
「そういえば、アメリカダンジョンパークの開園地って決まったの?
ダンジョン企画で決めさせてくれって言っていたから、待っているんだけど……」
「それなんだが、候補地が絞れなくてな。
一応、竜巻の多い地域で開園するのがいいんじゃないかと言っているんだが……」
「何で、そんな地域を選ぶの?」
「麗奈、それは俺のダンジョンパークが、災害の影響を受けないからだよ。
だから、避難場所としての活用も視野に入れているからだろう」
「へぇ~、そうなんだ~」
実際、ダンジョンパークから外に出ると大雨だったことが何度かある。
さらに、台風が近づいて強風吹き荒れる日でも、ダンジョンパーク内は穏やかなものだった。
また、地震が起きた日でも、ダンジョンパーク内にいては分からず外に出て始めて地震があったことを知ったなんて話もある。
そんな訳で、ダンジョンパークは災害時の避難場所にも指定されているほどだ。
「まあ、アメリカの候補地は父さんに任せるから、決まったら教えてくれ。
それまでは、アメリカダンジョンの構想でも練っているよ」
「ねぇ、お兄ちゃん、アメリカダンジョンパークはどんな感じにするの?」
「日本にあるダンジョンパークでは、物足りないと思うんだよね。
だから、少し中身を変えることにしたんだよ」
アメリカダンジョンパークは、日本のダンジョンパークと繋げるかどうか考えていたんだが、一応繋がりを持たせることにした。
ただし、最初にある町から行けるようにはしない。
また、日本のダンジョンパークのような交流型ではなくガッツリと自分で体験できる参加型を目指す予定だ。
もちろん、異世界人との交流も考えてある。
大きさや広さは、日本の物と同じ感じだ。
食材を作る階層はそのままに、アメリカと貿易をする予定。
冒険者ギルドなどはそのままで、稼げるダンジョンパークは残そうと思っている。
後は、どうするかな……。
▽ ▽ ▽
Side ???
「おめでとうございます」
「フム、ありがとう。
それにしても、我が国にあのような遺跡があったとはな。
それで、中はもう調べたのか?」
「それはこれからです。
ですが、遺跡の中はかなり広大な様子。
調査団を組み、送り込みませんと……」
「そこはもう手配してある。
役職だけの教授が、我が国にはごまんといるからな。
そいつらを使って、調べ上げるんだ」
「はい、わかりました」
北にあのような遺跡があるとな、一体誰が造ったのやら……。
それに、埋まっていたというのも気になる。
何もなければよいのだが……。
遺跡調査が本格的に始まって、数日後、男が執務室に飛び込んできた。
「大変です! 遺跡の中から、化け物が現れました!」
「何? どんな化け物だ?」
「豚の顔をした二足歩行の化け物です。
まるで、猪八戒のようなやつです」
「猪八戒だと?!
それで、そいつはどうなった?」
「調査団について行った、軍によって倒されましたが犠牲者が出ました……」
「犠牲者?」
「はい、調査団の教授の何人かが犠牲に……」
「ならば補充しろ!
人手はあるのだ、いくらでも用意できるだろう」
「はっ、畏まりました」
男は、執務室を出ていった。
しかし、猪八戒だと?
ふざけた遺跡だ、もう少し陸軍を投入して安全を確保してやるか。
私は、机の上の受話器をとると内線で人を呼び出す……。
▽ ▽ ▽
Side アリアナ
「凛、おはよう」
「おはよう、アリアナ。
今日もその髪形、素敵ね?」
「そう? ありがとう」
この前の、クラス全員で行ったダンジョンパークのおかげで、大内凛との距離を少し縮めることができたようだ。
渡辺陸斗とは、彼がああいう性格だし話しやすいのだが、五十嵐颯太とはなかなか距離を縮められないでいる。
ただ今朝は、興味深い話を五十嵐颯太から聞くことになった。
「アメリカダンジョンパーク、ですか?」
「そう、アメリカでの開園場所に困っているようなんだよね」
「困ることなんてあるの?」
「父さんの話では、開園場所は災害の多い地域でやるって言っているんだよ。
例えば、竜巻で困っているところとかね」
「でも普通は、そういう地域は避けるものじゃないの?」
「普通はね?
でも、ダンジョンパーク内は、別空間とでもいうのかな?
そんな感じになっていて、災害に強いんだよ。
だから、避難場所としても提供できるように考えているみたい」
「へぇ~」
ちょ、ちょっと待って!?
何、今の会話!?
おかしいと思うところが、たくさんあったわよ?
特に、ダンジョンパークは別空間って何?!
そんな、ファンタジーな設定があります……いや、ファンタジーな感じだったわね。
ついこの間、私も体験したわ。
確かに、住人は特殊メイクなんてものじゃなかった。
そこにいて、生きていた。
CGでも、バーチャルでもない、ちゃんと生身で血の通っている生物が、そこで生きて私の目の前にいた。
私は、犬獣人の子供と手を繋いだけど、やわらかくて、表情も豊かでロボットの類ではなかった。
また、顔が狼そのものの獣人とも話したわね。
最初は、びっくりしたけど話しているうちに打ち解けて……。
その獣人さんも、確かに生きていた。
「ねぇ、颯太。
アメリカにダンジョンパークを開園するとき、注意しないといけないことがあるんじゃない?」
「注意? 何かあったかな?」
「ほら、向こうは人種差別に敏感じゃない?
それに、犯罪とかも多いって聞くし……」
「人種差別?
ダンジョンパークで、肌の色とか気にしている場合じゃないだろ?
パーク内には、多種多様な人種であふれているのにさ」
「ああ、そういえばそうだよね~」
私は、五十嵐君と凛の話にクスリと笑ってしまった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます