第201話 これからの生活
Side クラナ
「では、これから行く町には本当にダンジョンがあるのですね?」
「ええ、ダンジョンの中にも町があって、いろんな種族の人たちが暮らしていますよ」
妹のユリナに、これから向かう町に着いていろいろと話してくれているのが、私たちを助けてくれたディアナさん、リーナさん、ルリィさんの三人の冒険者。
パーティー名はないが、昔から三人でいつも依頼などを受けていたらしい。
他にも、シーラさんという女性や商人をしているカブルさん。
そして、御者をしているトラビンさんだ。
何でも、私たちが浮遊帆船で運ばれて降り立った町、クレンベルスにいたのだが、その町である程度生活ができるようになったため、里帰りで旅をしていたのだか。
私たちは、運よくそこで救われたのですね。
「お姉様、お姉様。
ダンジョンの町では、天使族がいるそうですよ」
「まあ、天使族といえば浮遊大陸の住人である、あの?」
「そうです! 私、天使族って幻の種族と本に書かれていたのを思い出しました。
いつか会ってみたいと思っていたのに、こんなに早く夢がかなうなんて……」
「ユリナ、まだ会ってもいないのに夢がかなうなんて……」
「はっ、そうでした……」
その後、二人で笑い合いました。
その笑いに連れられて、ディアナさんたちも笑っていました。
「ところで執事さん、襲ってきた連中に心当たりは?」
『いえ、まったくわかりません。
私たちが、狙われるようなことはないはずなのですが……」
「まあ、今考えてもしょうがないか……」
そんな話をしていると、馬車の速度がゆっくりになりました。
これなら、歩いている方が早い気がしますが……。
「トラビンさん、どうしたの?」
「ああ、人だよディアナさん。
荷物もった人々が、ずっと続いているんだ……」
「人々の……列?」
「こりゃあ、難民だな。
ダンジョンの町へ行く行列だ……」
「すごいな……」
ずっと、人の列が続いていました。
街道の半分を占拠して、人の列が続いています。
「……この方たちもまた、政変に巻き込まれ、町や村を追われた方たちなのでしょうか?」
「おそらくは……」
「あの方たちのやることは、本当に徹底していますのね……」
「あの方って? 誰のことだ、クラナ」
興味があるのか、ディアナさんが聞いてきます。
まあ、聞いたところで何もできることはないでしょうから……。
「ブリーンガル王国の宰相、ホストールという男です。
今の国王陛下である、フィレット陛下の後見人をしている方です」
「後見人?」
「はい、フィレット陛下はまだ幼く、後見人が必要でした。
本来なら、第二王子のリオンさまが王位につくはずでしたが、何者かに暗殺されてしまい、仕方なくフィレット陛下が王位についたとか」
「……何だが、きな臭い話だねぇ~」
「その辺りの噂はたえずありました。
宰相が、リオンさまを暗殺したのだとか、前王妃様を篭絡させたとか……」
「まあ、根も葉もない噂なんだろうが……。
真実も混ざっていそうだよな……」
「で、その宰相様が、クラナさんたちを狙ったと?」
「おそらくは……」
おそらく、私かユリナを捕まえて、投獄されている父の心を折ろうというつもりなのでしょう。
父は第二王子を王位につかせるために、尽力しておりましたから……。
第二王子派の筆頭、といってもよいほどでした。
その父が膝を折れば、第二王子派は瓦解し、第三王子のフィレット陛下の地位は安泰ということでしょう。
そして、後見人となった宰相が王国を裏から支配する。
「それで、その宰相って優秀なのか?」
「いえ、優秀とはいえません。
貴族主上主義の塊みたいな男です。
おそらく今後、王国から逃げ出す民は増えるものと思います……」
「あちゃ~、これは、報告案件か?」
「報告しないと、まずいでしょうね……」
「どこかに報告されるのですか?」
「ああ、ギルドに報告するのよ。
それで、冒険者ギルドが動いて王国の内情とか調べてくれるわ。
そして、難民の受け入れとか、いろいろ町のお偉いさんたちが決めるのでしょうね」
「わ、私たちのことは……」
「大丈夫よ。王国に告げ口するような真似はしないわ。
それよりも、これからどうするかを考えないと……」
「……町に着いてから、どうするか」
ただ、逃げることだけ考えていましたが、私たちも生活していかなければなりません。
生きていくには、働かなければ……。
私たちに、何ができるのでしょうか……。
▽ ▽ ▽
Side ロブレン男爵
失敗! 失敗! 失敗!
まったく、無能な部下ばかりで頭が痛くなる!
「申し訳ございません……」
「きさまを護衛の騎士に紛れ込ませていたのは、こんな報告をさせるためではないぞ!」
「わ、分かっております……」
ユリナを攫ってくることができなくなった今、別の方法であの男を屈服させなければならんとは……。
近頃、宰相様の機嫌がすこぶる悪い。
こちらに、八つ当たりしそうなほどだ。
こうなれば、あの男の妻であるセブレーナを使うしかあるまい。
薬漬けにして、いい感じに壊れかけているからな。
それに、主人の言うことに従うようになったと報告が来たようだし……。
ククク、あの男がどんな顔をするか楽しみだ……。
「それにしても、ダンジョンのある町か。
宰相様が知ったら、再び戦いをはじめそうだな……」
何せ、対ダンジョン戦の武器を買い集めているという話だからな……。
国庫のお金を、使い込んでいなければよいのだが……。
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