第150話 戦争に向けて



Side ディアナ


私たちは、いまだこのクレンベルスの町にいる。

冒険者ギルドなど、空賊によって破壊された建物を現在再建している最中だ。

そのため、冒険者が依頼を受けるのはここ、避難所として利用していた訓練所が臨時の冒険者ギルドとして活用されていた。


この訓練所に避難していた町の住人は、空賊の全員を捕縛したとの知らせで避難解除となり、それぞれの自宅へと帰還していた。

ただ、私たちが泊まっていた宿も被害を受けたため、この訓練所に避難している人は少数だがいた。


「シーラさん、私たちはいつまでこの町に滞在するんですか?」

「それがねぇ、まだ分からないのよねぇ~」

「……何かあったんですか?」

「それが、どうも東側が騒がしいとかで情報収集を求められているみたいなの」

「東側? この町からの、ですか?」

「いえ、ダンジョンがある町からの、ね」

「……ということは、何か冒険者にも依頼が来るんですかね?」

「分からないわ~」


これからどうするのか、シーラさんと話し合っていると臨時冒険者ギルドの受付が騒がしくなった。

緊急依頼が入ったらしい、大声で告知している……。


『緊急! 緊急依頼です!

バストルの町にダンジョンが出現しました!

ブリーンガル王国は、これを討伐するため準備を進めています!

冒険者には、後方支援の依頼が来ました!!

依頼料は、一人金貨一枚!

ランク関係なく、募集中です!!』


耳を澄ませて、受付嬢が大声で告知する依頼を聞いてシーラさんを見る。

シーラさんも、驚いた表情で私を見ていた。


「シーラさん、これって……」

「す、すぐに、連絡しないと」


私たちは、頷き合ってすぐにみんなの泊まっている部屋へ急いだ。

このことをリーナたちに知らせて、ダンジョンにも知らせるためだ。

魔導通信で知らせるか、ダンジョンへ帰還するかは分からないが……。




▽    ▽    ▽




Side 五十嵐颯太


午前中の授業が終わり、お昼は何にしようか考えているとミアから携帯に連絡が入った。

ブルブルと振動した携帯を持ち、教室から出てから確認する。


「……ミアからか? 珍しいな……」


普段、ミアは連絡などせずに帰ってから直接知らせてくれるのに携帯にメッセージをくれるとは……。

俺は、すぐにミアからのメッセージを確認した。


「……戦争が始まるようです?

至急、対策会議を開きますので出席をお願いします、か。

ん~、素人の俺が参加してもな……。

メッセージは受け取った、こちらでも相談してみる、対策会議の結果を後で知らせてくれ、と。これでよし」


後は、父さんたち家族に連絡。

異世界側で戦争が始まりそうです、対策家族会議をお願いします、と。

これで、今日か明日にでも家族会議ができるだろう。


後は、陸斗たちに話してどうするか相談してみるか。

……たぶん、戦争うんぬんよりも異世界に行ってみたいと言われるような気がするが……。




お昼を、学校の食堂を食べ終えてから教室に戻り陸斗たちに相談した。


「異世界に行きたいでござる!!」


話をして、真っ先に陸斗に言われた。

予想通り過ぎて、呆れてしまったが……。


「行ってどうするのよ、陸斗。

もしかして忘れてるの? 私たち、魔法とか使えないのよ?」

「そ、そういえばそうだった……。

だ、だが佐々原、異世界だぞ? 異世界。

行こうと思っても、絶対に行けない場所だぞ?」

「だよな! 颯太、俺も異世界に行ってみたい!!」

「俺も、俺も!」


佐々原が、現実を突きつけたが、陸斗、悟、恭太郎が異世界行きを切望している。

圧もかなりのものだ。


「異世界はいいけど、行ってどうするんだ?

ダンジョンパークと、あまり変わらない世界が広がっているだけだけど?」

「そうなの? それなら、わざわざ行く必要もないか……」

「そんなことないぞ、悟。

ダンジョンパークでは、規制されている部分があるが、異世界には無いんだぞ?」

「規制されている部分? もしかして……」

「そう! エロだ!」

「エロか!!」

「それは、確認に行かねばなるまい!!」

「……あなたたち、サイテー……」


陸斗、悟、恭太郎が、エロのために異世界に行きたくなっている。

だが、凛たち女子に白い目で見られているぞ……。


「陸斗、あなたも同じ穴の狢なの?」

「……確か俺、最初に話したはずなんだけど?」

「……何だっけ?」

「戦争が起こりそうだから、どうすればいいかって話。

で、陸斗がどこで戦争が? とか質問して来て、異世界側の町でと言ったら……」

「ああ、分かった。もういいわ。また話が脱線するから……」

「んで、どうするかなんだけど?」


ここで、始めてみんなの顔が真剣になる。

戦争が起こりそうな町、こちら側はどうするべきなのか。

町の住民を避難させるのは当然として、攻めてくる兵士たちをどうするか、だ。


「なあ颯太、戦争回避は……」

「回避は無理だと思う。

相手側の都合で攻めてくるわけだし……。

俺たちは、防御するだけじゃないか?」

「それじゃあ、反撃をするかしないか、だな。

ダンジョンは、反撃をするんだろ?」

「おそらく、反撃しないといつまでも攻めてくると思うし、和解するにしてもこちらの力を見せる必要があると思う」

「力か……。

そう言えば、異世界の戦争ってどんなもので戦うんだ?」


……そういえば、戦い方って知らないな。

でも、剣と魔法の世界だし、中世ヨーロッパであった戦いが参考になるか?


「やっぱり、剣と魔法で戦うんじゃないのか?」

「弓とかも使うでしょう?」

「武器は、剣、槍、弓、後何がある?」

「モーニングスターが、出てくるか?」

「近接戦闘があるんだから、出てくるんじゃないのか?

全身鎧を装備した騎士とかも出てくるんだろ?」

「出るよな……。

後は、魔剣とかか?」

「魔剣! いいね~。後は、聖剣とか?」

「おお、勇者が使う聖剣か~。

そうだ、攻城兵器とかはどうなんだ?」

「閉じられた門をこじ開ける? それとも城壁を打ち破る兵器か?」

「それこそ、魔法で破壊するんじゃないのか?」


……何か、すごい盛りあがっているが戦争の話だよな?

異世界とはいえ、人が死んだりする話なんだから、もう少し何とかならないかな……。


ん~、相談相手も間違えたかも……。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る