第71話 捕り物騒動
Side 河口卓二
中央の町に到着し、まずは冒険者ギルドを目指すことになった。
俺たちは、ダンジョン都市を拠点としている冒険者だが、町を移動したときは冒険者ギルドに他の町へ移動したことや到着したことを知らせなければならない。
何故なら、居場所が分からなくなれば捜索しなければならなくなるからだ。
冒険者は、依頼やダンジョン探索など死んでしまうことがある。
そんな時、一週間生存が確認できなければ捜索依頼が冒険者ギルドから出る。
それも、冒険者ギルドの年間予算を使ってだ。
だからこそ、居場所を把握し生存を確認することになった。
冒険者ギルドに登録する際も、注意事項の一つとして記載されていた。
まあ、一週間は短いかもしれないとのことでどこに行くかで確認期間がまちまちになっている。
ギルドからの依頼なら一週間だが、ダンジョン探索なら十日となっている。
ファンタジーダンジョンパークから出た場合は、退園した時点で確認期間が停止し再び入園したとき確認されることになる。
さて、俺たちはエルフのフィーリカのことを心配しながら冒険者ギルドを目指して大通りを歩いていると、前方から二人のエルフが走って来た。
「ああっ! ご主人! フィーリカにゃ!」
「ああ、確認した!」
「ご主人様、フィーリカの後ろからエルフの兵士らしきものたちが追いかけてきているようです」
「助けるぞ!」
「「はい!」」
状況を確認して、すぐに俺たちは行動に移した。
俺は、フィーリカと連れの女性に声をかけ、二人をかばうように立ちふさがった。
猫獣人のミリルは、追いかけてくる兵士を武術でけん制して足を止めさせる。
そして、魔族のノービスは他の方向から向かってきているエルフの兵士たちを、魔法でけん制した。
「フィーリカ! 大丈夫か?!」
「ご主人様!」
「! 何で、ここにいるのよ!」
俺の後ろにフィーリカたちをかばい、こちらを警戒している兵士たちを睨みつける。
ミリルもノービスも、俺と同じように兵士たちを睨んでいた。
「貴様ら! 我らがどこの兵か分かって邪魔をするつもりか!」
「彼女たちは、俺にとって大切な人だ! その女性を守って何が悪い!」
「ふ、ふざけたことをぬかすな!
その二人は、フィランド様の所有物だ! 邪魔だてするなら容赦はしないぞ!」
フィーリカを所有物だと?!
俺の大切な女性を、所有物扱いするとは……。
俺は腰に下げていたショットガンタイプの魔導銃を取ると、すぐに腰に付けていた魔導弾入りの薬莢を取り出しショットガンタイプの魔導銃に装填する。
初めて見るのか、エルフの兵士たちは持っていた棒を構えるだけで特に警戒している感じはない。
「もう一度言う、彼女たちは俺の大切な人だ。
彼女たちを傷つけるなら、俺も守るために反撃する!」
「貴様ごときが、崇高なる我らエルフの兵士をどうにかできると思うな!」
ミリルとノービスも武器を構える。
エルフの兵士たちが一斉に、俺たちに襲いかかろうとしたとき、頭上から声が響いた!
「待ちなさい! 双方退きなさい!!」
どこから声がと、上を見ようとすると女性が上から降りてきた。
そして、兵士と俺たちの間に着地してエルフの兵士を睨んでいる。
俺たちを囲んでいるほかの兵士たちも、驚いて足が止まっていた。
「シルフィラ様! 大丈夫ですか?!」
「大丈夫よ! 時間がなくて飛び降りたけど、間に合ったようね」
褐色肌のエルフと思われる美しい女性は、周りを確認後俺やフィーリカたちを見て答えていた。
俺が上を見上げれば、飛び降りたと思われる二階の窓にメイド姿の女性が下を見ていた。
「シ、シルフィラ様……」
「フィーリカ、知っている人?」
「あ、はい。シルフィラ様は、エルフ種族の今の代表者です」
「……それって、エルフの一番偉い人?」
「はい、そうです、ご主人様」
俺は、フィーリカの呼び方を直すために注意した。
「もうご主人様じゃないだろ? 俺のことは名前で呼んでくれ、フィーリカ」
「は、はい。……卓二様」
「!」
フィーリカに、笑顔で名前を呼ばれ、俺はいま顔がものすごく熱い。
おそらく真っ赤になっていると思う。
そして、フィーリカもまた目線を下げて顔を真っ赤にしていた。
は、恥ずかしい!
「んんっ! ここは私の顔を立てて退きなさい!
そして、命令したフィランド・ウルーフスを連れてきなさい!」
「き、きさま! 至高の貴族家であるウルーフス家の次期当主様を呼び捨てにした挙句、連れてこいなどと……」
「至高の貴族家? エルフの貴族は十三家のはずよ。
その中に、ウルーフスなんて家名の家は存在しないわ!」
「当然だ! エルフ十三家はすでに過去の貴族! 今は新しい十三家になっている!
その中で、ウルーフス家は第二位の地位についている貴族だ!
貴様のような劣等エルフが、呼び捨てにしていいお方ではないわ!!」
「劣等エルフ? 海エルフをそう呼ぶってことは、至上主義者が台頭しているってことかしら?」
兵士たちは、ゆっくりゆっくり包囲を小さくしていく。
何があろうと、引く気はないってことか?
「劣等エルフだろうが、至高のエルフだろうが関係ないわ!
今のエルフ種族の代表は私よ! 私の命令が聞けないということは、エルフ全体を敵にするということよ! 退きなさい!!」
「クッ!」
「……隊長、ここは退きましょう」
「しかし、フィランド様の命令はどうする」
「フィランド様に、ありのままを話せば許してもらえますよ。
エルフ種族の代表に邪魔をされたとなれば、私たちでは退くしかないことはわかりきったことですから」
「……已むをえんか。全員、引くぞ!!」
そう隊長と呼ばれていたエルフの兵士が合図すると、兵士たちはすぐにその場から引いていった。
そして、兵士がいなくなったことを確認して俺たちも戦闘態勢を解除した。
「フィーリカ!」
「ミリル! ノービス!」
猫獣人のミリルと魔族のノービスは、エルフのフィーリカと抱き合って再会を喜んだ。
それから、妹のエーリカを紹介してもらった後、飛び降りてきたシルフィラ様に話を聞きたいからと、建物の中に案内された。
そして、二階にある応接間に案内されると、そこには二人のすごい美人と俺と同じ日本人がいた。
しかも、俺より若く、年下だとすぐに分かった。
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