第52話 疑問と事の始まり
守りの指輪
装備者が窮地に陥った時、光のシールドが発生し装備者を守る。
それと同時に、シールドに触れたものを麻痺させる。
「……ねぇ颯太、私にもくれたこの指輪って」
「ミアたちと同じものだよ。
ただし、それぞれで似合う宝石を嵌めているから、一つ一つがオリジナルといってもいいかな」
自分の指に嵌められた指輪を眺めながら、凛は俺に聞いてくる。
例のしつこい男の事で、万が一を考えて俺の大切な女性に指輪を作って渡した。
婚約や結婚指輪というものじゃないから、人差し指など邪魔にならない指に嵌めてもらっていたが、早速役にたったようだ。
ミアたちがいくら強くても、ちょっとした油断で大変な目にあうこともあるものだ。
今回のことがいい例だな。
「ところで、捕まえた暴漢たちはどうなるの?
いくらダンジョン内で起きたことだとしても、警察を介しないわけにはいかないでしょ?」
「そこは考えてあるよ。
あの時と同じように、生涯不能にして種無しになる呪いをかけて警察へ渡すようにしている」
今回も同じように呪いをかけて、警察へ引き渡すことになるだろう。
ダンジョンの中とはいえ、ファンタジーダンジョンパークのある場所は一応日本なのだ。こればかりは、しょうがないのである。
「……あ、ちょっと疑問に思ったんだけど、呪いって魔素を使うんでしょ?
じゃあ、魔素の無い地球だと呪いの効果はあるの?」
「ああ、凛も勘違いしているのか」
「勘違い?」
「そう、呪いは魔素を使って掛けるけど、維持は生命力を使うんだよ。
つまり、命削って呪いを維持してるってこと」
「それって……」
「そ、生きている限り、ずっと呪われ続けるってこと」
呪いは、魔法ではない。
確かに、呪いを相手に掛けるときは魔素を使うが維持は掛けられた者の生命力を使っている。
そのため、呪いにかかった方は目に見えて衰えていくのだ。
だからこそ、元気を取り戻すには解呪するしかない。
「それより凛、もうすぐ宿泊研修だろ?」
「ええ、準備はもうできてるわ。それで、この指輪は嵌めたままでいいの?」
「もちろん。絶対外さないようにね。
それと、朝のホームルームで配られた冊子見たか? 赤い字で大きく書かれてた注意書きを」
今日の朝のホームルームで、担任から配られた宿泊研修についての小冊子に、去年と同じ赤い字で大きく注意書きがあった。
やはり、女性暴行事件が起きる可能性があるそうだ。
テントで寝泊まりするときや、宿泊施設で倉庫などのあまり使われていない部屋などで注意するように書かれていた。
……何というか、男は性獣と思われている感じだ。
男は誰でも、女性に襲いかかるわけではないのだが、これは手を打っておくことにした。
それが、守護の指輪だ。
だが、これも数が限られているため狙われそうな女性に、限定して渡さないといけない。
しかも、その指輪をつけるかどうかも問題になってくる。
他の物を作った方がいいのかな……。
▽ ▽ ▽
Side セフィーヌ
「クソッ、は、な、せ~」
「おいおい、どこ行こうってんだよ。えぇ?」
こいつら、何考えているんだ?!
ここは、町の中にある私の店だぞ? 日中、堂々と襲いに来るなんて……。
私の店で、こんなことをしてただで済むと思っているのか?
私の店は、最初の町の北側にある。
最初の町から、中央の町へと乗合馬車などを使う人々を客として営業していた。売っているものは、ポーションなどを中心とした小物が大半だ。
それに客も、外から来た客がほとんどで利益もトントンといったところ。
儲けるために商売するなら、最初の町ではしていない。
何せ、今の最初の町は住民相手に商売するようにしないと、成り立たなくなっていたからだ。そんな最初の町で商売をする私の店は、儲けを考えないでするしかない。
だが、それでも外の客を相手にするのは楽しかった。
こいつらが来るまでは……。
「でけぇ胸してんだから、楽しませろよ。お客は神様だろ?
金なら払ってやるからよぉ~」
「ここは娼館じゃない! 欲望を満足させたきゃ、中央の町へ行け!」
「中央の町~? そんなとこ行かなくても、あんたが相手してくれりゃいいんだよ!」
私は髪を引っ張られ、男の前に倒される。
そして、私が倒れたことを確認するとおもむろにズボンを降ろし始めた。
「どうだ? 大きいだろ?」
「! そんな小さいもので、何をする気だ!」
「ハァ?! ふざけんなよ! 俺のは小さくねぇよっ!!」
「おい! いつまでやってんだよ。時間がねぇんだ、やるなら早くしろ!」
「チッ、だったら、両手放すなよ?」
「クッ! クゥッ!!」
私は体をねじり抵抗するが、二人がかりで抑えられてて満足に抵抗できない。
私の店は小物を扱う店なため、店舗としてはそんなに広くない。そのため、こいつらが入ってくれば満員だ。
今も、従業員のカレンとルーシーが裸にされて弄られている。
最後の砦は護っているが、いつ襲いかかられるか分からない。今にも二人の抵抗の声が小さくなっているのが分かる。
「良いねぇ、クッ殺なんてそそられるぜ~」
「だよな~」
「はい、そこまで~」
店内の雰囲気とは違った声が、入り口から聞こえる。
私は、店の入り口から見える位置だったのでそっちに視線を向けると、女性が一人立っていた。
そして、私が助けてと叫ぶ前に女性は魔法を使った。
「【スリープ】」
睡眠魔法を使うと、店の中にいる全員がバタバタとその場に倒れ眠ってしまった。
「次に、襲われていた女性たち三人に……【起床】」
「……あ、わ、私……う、うう……」
「カレン! ルーシー!」
「店長~」
私の側で寝ている男どもを振り払って立ちあがると、店の奥で泣いている従業員のカレンとルーシーの側による。
そこには、裸の男どもが重なるように倒れて眠っていた。
「大丈夫?! 傷つけられなかった?」
「店長~、何とか守れました~」
「わ、私も……うう…」
私たちは三人で抱き合い、無事だったことを喜んだ。
そこへ、入り口から私たちを助けてくれた女性が声を掛ける。
「まずは服を着てください。
それから、衛兵を呼んでもらえますか?」
「は、はい!」
私たちは、怖がるカレンとルーシーと一緒に店を出て、衛兵の詰所がある北門へ向かった。店のことを、私たちを助けてくれた女性に任せて……。
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