第50話 暴漢対策
「おかしな男に絡まれた?」
外務省から避難民を受け入れるための場所を確認するため、一人の女性が訪ねてきた。
宮近さんという人なのだが、俺は案内をミアとエレノアに任せたのだ。
というか、その宮近さんからの希望だったので任せたのだ。
その宮近さんを案内している最中、おかしな男が声をかけてきたらしい。
自分をイケメンとうぬぼれて、ミアとエレノアに俺のものになれとか叫んだそうだ。
……恥ずかしい奴だな。
「それで、ミアとエレノアは無視をした、と?」
「はい、仕事の邪魔だったので」
「まったく、不快な男でした!」
ミアは仕事を優先し、エレノアは不快と感じたようだ。
イケメンだとしても、必ずしも意中の女性を射止められるわけではない、ということだな。
「マスター、そんな男がミアたちをどうにかできるとは思えませんが、対策はしておいたほうがよろしいかと思います」
「そうだな、ソフィアの言う通りだ」
そこで、俺はダンジョン操作を行うボードを出現させると、ある魔道具を出現させる。
ここは俺の部屋で、魔素が無い地球なのだが、ダンジョンと繋がっている俺は魔素が無くても関係なく作業ができる。
ホント、いつの間にか俺自身、チートな能力を持ったものだ……。
ボードを操作し、表示された『完成』をタップすると、机の上に三つの指輪が出現した。
「マスター、これは?」
俺はその指輪を、ミアたちそれぞれの手を取り嵌めてあげる。
ただし、左手薬指に嵌めるような指輪ではないので、そこは魔道具として人差し指に嵌めた。
「これは、ダンジョンポイントと交換した『守護の指輪』だよ。
嵌めている対象者が、危険な目にあう時起動し、俺の元に転移するようにできている。
しかも、魔法が使えないマジックキャンセルルームでも起動する優れ物だ」
「そんなすごいものを、私たちのために……」
「ミア、エレノア、ソフィアは俺にとって大切な女性たちだからな。
傷つかれると困るんだよ」
「マスター……」
「フフ、大好きですマスター」
そうソフィアが言うと、ミアたちは俺に抱き着いてきた。
ホムンクルスとはいえ、大切な女性であることは変わらないし、傷つける奴は許せないよ。
しかし、そのおかしな奴ってどんなイケメンなんだろうな……。
▽ ▽ ▽
次の日の朝、教室でいつものように凛たちと雑談していると、陸斗がいつものように騒ぎながら俺に近づいてきた。
「颯太、颯太! 面白い募集が掲示板に出てるぞ!」
「……面白い募集?」
「ああ、これだ!」
陸斗は、自身のスマホの画面を俺たちに見せてくれる。
そこには、よく使われる掲示板の募集欄があり、その一番上に掲載されていた。
閲覧数が結構多いようだ。
「えっと、『恋のお手伝いお願いします! 特に強面の方優遇。想いをよせている女性への切っ掛けに協力してください! 』って、結構ベタね……」
「だが、それで協力者への報酬に金一封だぞ!?
金一封ということは、一万円だ! おいしいお手伝いバイトだろ?」
「いや、金一封が一万円かどうかなんてわからないだろ?」
報酬はともかく、この協力者の募集。昨日のミアたちの話と繋がるような気がするんだよな。ということは、これを書き込んだのは例のイケメン君か。
だが、この募集からどんなことをするのか予想がつくが、大丈夫なのだろうか?
協力をお願いした強面の人たちに、ミアたちを襲ってもらい、そこを例のイケメン君が助けるということだろうか。
乙女のピンチに、颯爽と現れ救ってくれたヒーローに惚れる。
「でも、よく考えたらこれって相手の気持ち考えてないよな……」
「そうなのよね~。私だったら、助けに来たのが想いをよせている人でない限り、お礼を言って終わりな気がするわ」
そう、これはきっかけづくりとしてはいいが、これで恋に落ちるということは、現実ではありえない。
漫画やアニメ、ラノベならばあるかもしれないが……。
凛の言う通り、普通はお礼を言って終わる。
つまり例のイケメン君は、お金を捨てるような行為をしているのだが、気がついているのだろうか?
「それより陸斗、今度の宿泊研修って、どこに行くか聞いてるか?」
「宿泊研修か? 今月の末だったか?
確か、沢木のキャンプ場じゃなかったか?
この高校は、毎年そこのはずだったような……」
宿泊研修といっても、どこかの施設に二泊三日で泊まるわけではなく、生徒たちでキャンプをして過ごし協力して何かを成し遂げるということを経験しようとか。
そんな目標があったような……。
「でもこのキャンプ、先輩の話じゃ毎年何かしらの問題が起こるらしいよ?」
「悟、何だよ、その問題って……」
「いや、部活の先輩の話じゃ、毎年、レイプ未遂事件が起こるらしいんだよ。
ほら、キャンプってことで外で寝ることになるだろ?
それで、襲うバカが出るんだって」
それって、欲望に忠実な奴がいるってことか?
でも未遂事件ということは、成功した奴はいないということか?
「それって、事実なのか? フェイクじゃないのか?」
「さぁ、都市伝説化しているんじゃないか? でも、必ず襲われそうになった女子が出るのは確かなんだ。
去年の宿泊研修の小冊子見せてもらったら、注意書きにでかでかと赤文字で書かれてあったし」
「赤文字で、でかでかと?
……もしかして、襲われる女子が出るからじゃなくて、その都市伝説が浸透しているから襲おうとする男子が現れるんじゃ……」
これは、キャンプで見張りが必要になるな。
しかも、テントをどこに張るかも考えないといけない気がしてきたぞ。
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