第25話 ゲートの受付嬢
「あ~、ダメだったか……」
宣伝動画の撮影日が決まったその日の夜、俺はミアたちと一緒にダンジョンパークの入り口ゲートで登録作業や案内などをしてくれる受付嬢を、各ギルドにお願いした結果をミアから聞いていた。
俺の反応通り、各ギルドともに受付嬢を引き受けてはくれなかった。
「現在、各ギルドともに引っ越し作業などで手いっぱいらしく、こちらに回せる人材は無いと……」
「あ~、町が増えたから住民の移動も始まっているんだった……」
これは、こちらのミスだ。
ダンジョンの改造で、第一階層の町が増えて各ギルドともに人員整理に忙しい時に、こちらのお願いを聞けとはいかないよな……。
「マスター、どうしますか?」
「ん~、DPもあるし、ここは新しいホムンクルスを増やすしかないな」
「分かりました。必要人員は、二十人です。全員女性型を希望しますか?」
ファンタジーダンジョンパークの顔ともいえる入り口ゲートの受付嬢だ、全員女性でそろえるしかないだろう。
……いや、イケメンも混ぜておこう。
「いや、五人だけ男性型にしてくれ。
ただそこは、パークの受付だから、全員見目麗しく頼む」
「畏まりました」
ミアは、ダンジョンの操作画面を出すと、ダンジョンポイント交換操作を行う。
従者の項目から、ホムンクルスを選び、容姿を操作。そして、性別で女性型を十五人、男性型を五人と設定し、交換画面をタップした。
すると、二十の魔法陣がダンジョン操作室の床に並び、裸の見目麗しい男女が二十人出現する。
出現を確認すると、男女は俺に向かって跪き頭を下げた。
「マイ、マスター。あなた様への忠誠を誓います」
「ありがとう、忠誠を受け取る。
ではまず、彼女から服を受け取り着てくれ。そのままの姿では、話しづらいからな」
「了解です、マスター」
そう言うと、二十人は立ち上がり、エレノアとソフィアが用意していた服を受け取り着替え始めた。
だが、そこは生まれたての弊害か、うまく着ることができなくてミアたちが手伝っていた。
五分ほどで全員が服を着ると、俺の前に整列する。
「さて、君たちにはこれから名前を付ける。
そして、ミアたちから知識をインストールされたら君たちの仕事を紹介しよう。
では、右端の彼女からだ……」
俺は一人一人の前に立ち、名前を告げていく。
十五人の女性と五人の男性に名前を付けていく、これが滅茶苦茶難しい作業だった。
よくラノベや漫画などで、何十人の名付けをしている場面があるが、俺はこの二十人でギブアップだ。
だが、携帯片手にネットで調べて名付けた。
彼、彼女たちの容姿をサッと見て、似合いそうな名前を見つけて名付けていく。
そうしないと、ホムンクルスは魔物化してしまうらしい。
後、忠誠を誓ってくれたらそれを受け取ると言葉にすること。
そうすることで、人格が形成されるのだとか。
俺が名付けをした後、ミアが名付けが終わったホムンクルスの頭を掴み知識をインストールしていく。
この知識は、生きていくうえでの常識やダンジョンの知識、ダンジョン外の情報などなどだ。もちろん、地球の知識も入っている。
特に、日本の知識が半数を占めているが。
……とにかく、全員の名付けを終え知識をインストールし終えると、再び全員が見える位置に立ち、仕事を紹介する。
「さて、君たちの仕事は入り口ゲートでの受付だ。
冒険者登録や、お客の案内などを行ってもらいたい」
「マスター、それは必要なことなのですね?」
「もちろんだ。それに、君たちはこのダンジョンの顔ともいえる受付になる。
何せ、このダンジョンパークに来た客が、最初に会うダンジョンの住人だからな」
「分かりました」
「ミア、冒険者登録をするにあたって、冒険者ギルドの許可は貰ってあるよね?」
「はい、ギルドマスター本人から許可をいただきました」
よし、これで冒険者登録できる。
登録者管理は、冒険者ギルド本部の管理頭脳がうまくやってくれるだろう。
管理頭脳とは、各ギルドの本部にある人間の脳のような姿をした記憶媒体だ。
俺がDPで交換した管理頭脳を、各ギルドへ斡旋して使ってもらっている。本当は、コンピューターを用意できれば良かったんだが、何か違う気がしたんだよな。
ファンタジー世界の住人が、パソコンを操作している姿は見てみたいが強制する必要はない。
ダンジョンの最初の町に移動し、南門の先に用意した入り口ゲート。
歩いて移動できる距離にあり、まるで国境の監視所だな。
入り口ゲートの右側に見える大きな建物は、外の世界から運ばれる荷物の受け取りや、外の世界へ運び出す物の出荷場となっている。
ダンジョンの町に、ダンジョン外の企業のお店ができれば荷物を運びこまないといけない。そのために作った場所だ。
そして、左側は駐車場から動く歩道を用意し受付までの補助としている。
正面ゲートには、登録受付と入場ゲートがある。
入場ゲートは、駅の自動改札のように造った魔道具だ。冒険者登録を終えてもらったギルドカードをセンサーにかざして入場できるようになっている。
入場後は、まっすぐ南門に向かう道になっている。
「……大きなゲートですね、マスター」
「俺の友達が、大勢客が来ると言っていたから大きく造ったんだ」
陸斗の意見を取り入れ、大きなゲートを用意した。
これで客が来なかったら、無駄なゲートとして紹介されるのだろうか?
受付業務を任せるホムンクルスを、登録所内部へ連れてきた。
長いカウンターがあり、そこをいくつか区切っていて、来られた客の冒険者登録作業をしていく。
そして、ギルドカードができたら渡し、入り口ゲートの案内をして終わり。
登録は必要事項の記入と、ギルドカードへ血を一滴垂らす、この二点。
そして、血を垂らされたカードは足元の投入口のあるボックスに投入すれば、すぐにギルドカードとなってボックスの上部から出てくる。
このボックスも、魔道具だ。
ただし、町の各ギルドにある登録ボックスはもっと大きくできているが……。
「あと休憩するときは、この扉の中の部屋でしてくれ。
くれぐれも、お客に不快な思いはさせないようにね」
「了解しました」
カウンターの整理や、登録書などの整理をしながら俺の注意を聞く。
登録所の奥にある赤い扉の先は、みんなの休憩所になっている。また、その部屋の中には転移所もあり、俺のダンジョン操作室に繋がってもいるのだ。
何かあれば、すぐに連絡が付くようにと用心のために用意した。
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