第11話 友達に相談する
母は、家の中にいて俺たちを出迎えてくれたけど、俺が友達と部屋にいることを告げると何か欲しいときは言ってくるように言われる。
よくある、お邪魔する母親ではないらしい。
その後、俺は凛と陸斗を俺の部屋に案内する。
俺の家は、広い土地に建てられた平屋の家だ。庭もあり、部屋数も多いので家族四人では使わない部屋が結構ある。
父方の祖父が建てた家らしいが、俺たち家族と同居を考えていたのかな。
それなら、同居できずに亡くなってしまったのは、心残りだったのだと思う。
それはさておき、凛と陸斗を俺の部屋に招き入れた。
「ここが、俺の部屋だ」
「玄関から、結構歩くんだよな颯太」
「でも、やさしそうなお母さんだよね。
初めてあいさつしたはずなのに、笑顔で迎えてくれるなんて……」
いや、それが普通じゃないのか?
どこの家庭も、最初は笑顔で出迎えるものだと思うが……。
「凛の家は違うのか?」
「私の家は、お父さんが友達チェックとか言って連れてきた友達を見定める決まりがあるんだ。
お父さん曰く、友達は選ばないと人生棒に振るぞ! とか何とか」
凛の父親、どんだけ娘が可愛いんだ?!
これって、娘が欲しければこの父を殺せ! とか何と言って、友達でも恋人でも、婚約者でも仁王立ちで凛の前に立ちふさがりそうだな……。
「凛のお父さん、めんどくせ~」
「……そこは陸斗に、同意してやるよ」
「大変だな、凛」
「颯太……」
俺は凛に同情し、部屋の中へ入るように促した。
いつまでも、部屋の前で喋っているわけにはいかないだろう。
陸斗が俺の部屋に入ると、勝手知ったる何とやらですぐに、机の側にある椅子を引くと座る。だが、この部屋に椅子は陸斗が座った一脚だけ。
そのため、自然と俺はベッドの端に座る。
「凛、いつまで俺の部屋を見ているんだ?
俺の相談を聞いてくれるんだろ? 早く座れよ」
「ん? あ、ああ……」
俺と陸斗が座っているところを見て、顔を赤くした後、俺の隣に座った。
俺の部屋に、来客用の椅子とかないからな。
いつも使っているベッドの端で悪いが、我慢してくれ。
「それで、相談ってなんだ?」
「そ、そうだ颯太。私たちに相談したいことがあるんだろ?」
急にまじめに話す陸斗、いまだに少し顔が赤い凛。
家族より話しやすいかと、軽い気持ちで凛と陸斗に話を聞いてもらおうと思ったんだが、何から話せばいいのだろうか?
……とりあえず、素直に話してみよう。
こういう時は、素直にウソ偽りなく話す方がいいと思う。
「あ~、実はな……」
「うん……」
「俺、異世界から帰ってきたんだよ」
俺が話始めると、真剣な表情になる凛。
そして、陸斗もここだけは真剣に聞くつもりのようだ。
「向こうの世界に召喚されて、十年もの間働かせられた。
しかも、俺は魔力がないとかでダンジョンコアを体内に埋め込まれてさ、ダンジョンマスターになってしまったんだ」
「……」
「……」
「俺がダンジョンを作ると、俺たちを召喚した国がいろいろと命令してくるんだよ。問題解決のためにダンジョンを使えってな」
俺は、凛と陸斗が黙って俺の話を聞いてくれているうちに、すべてを話した。
異世界に召喚されたからの日々、ダンジョンマスターになってからの日々を。
そして一通り話し終えると、陸斗が言った。
「颯太、今頃中二病か?」
「いや、違うって。中二病はすでに治ってるよ。
中二の頃はやらかした思い出もあるが、それは過去のことだ」
「颯太が真剣に悩んでいたみたいだから、あんなに真剣に心配したのに!
中二病だったなんて……」
いやいやいや、こんなのどう説明すればいいんだよ。
って、魔法は……おぼえてないから見せられないか。それなら、ダンジョンを見せるしかないな。
「待て待て凛。俺は真剣なんだ。
今、証拠を見せてやる!」
「証拠って……」
凛が怒りながらベッドから立ち上がったので、俺はダンジョンへ続く扉を召喚することにした。
あのダンジョンへ続く青い扉を召喚すれば、否が応でも信じてくれるはず。
「【ダンジョン扉召喚】」
俺が呪文を唱えると、部屋の空いたスペースに青白い魔法陣が出現する。
「ええっ?!」
「なっ!!」
青白い魔法陣から、青い枠の扉が競りあがってきた。そして、俺の背を超える二メートルぐらいの高さの扉が出現した。
扉が完全に召喚されると、床の青白い魔法陣は消えた。
「この扉の先にある物をどうするかってのが、俺の悩みなんだ。
頼む、凛、陸斗。お前らの考えを聞かせてく……れ……」
凛と陸斗は、召喚した青い扉を凝視したまま固まっている。
どうやら驚きすぎて、頭が現実に付いて行ってないのだろう。こういう時は、少し待つのが大人の対応だ。
自分の頭で考え整理をつけると、すぐに動けるようになるはずだ。
二人がフリーズして三分後、まずは凛が動き出した。
青い扉を確認し、周りを見渡して俺を見つけるとすぐに近寄り俺の体を触りながら調べ始めた。
「な、何をしているんだ? 凛」
「異世界に行ったんだろ?! 大丈夫か? 大きなケガとかしてないか?」
「……信じてくれるのか?」
俺のその言葉に、凛は怒った表情で俺を睨んだ。
「当たり前だろう!? あんな扉を召喚できるものが、この日本に、いや、この地球にいるわけがない!
少なくとも、私は見たことも聞いたこともない!
……それに、友達のことを信じなくてどうするんだよ」
「凛……」
――――コン、コン。
そこへ、ドアをノックする音が聞こえる。
俺と凛は、その音が俺の部屋の入り口からではなく、召喚した青い扉から聞こえたのでそちらを向くと、いつの間にか動き出した陸斗が青い扉をノックしていた。
「う~ん、ただの木でできた扉だな。
この部屋の床に、仕掛けもないだろうし……」
そう言って考えながら、青い扉を叩いたり周りを歩きながら調べたりして結論を出したようだ。
そして、晴れ晴れした表情で俺を見る。
「すげぇよ、颯太! 本当に異世界に行ってたんだな!
で、颯太のできることは、扉を召喚することだけか? 何かチートなスキルとか魔法とか使えないのか? 異世界召喚の定番だろ?」
俺の友達ながら、陸斗はマイペースだな。
気になる所が、そこなのかと少し呆れてしまった。
「……それが、勇者召喚陣を無理やり異世界人召喚陣に変えたせいでな、チートなスキルとか魔法はなかったんだよ」
「おいおい、それはダメなパターンの召喚じゃないのか?」
「ああ、召喚されてすぐにそれが分かったよ」
俺は、凛と陸斗に異世界召喚された時やその後のことなんかを、時々二人からの質問に答えながら、分かるように話していく。
今度は、異世界召喚されたことを信じての俺の話を聞いてくれたので、ようやく俺の境遇を理解してくれたようだ。
「……よく頑張ったな颯太」
そう言うと、凛は俺に抱き着いて背中をやさしく叩く。
それだけで、俺の心は少し救われたようになる。
「……なるほどな、ダンジョンマスターか。
今のこの現代で、ダンジョンマスターとしてどう生きるのか……」
陸斗は、俺のダンジョンマスターとしての価値を考え、どうするのかを真剣に考えている。
俺は、どうするれば……。
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