英雄になりたいと、少年は叫んだ【旧版】

野崎ハルカ

第一章:旅立ち

一話、少年の独白

 英雄えいゆうと、そう呼ばれる存在がいる。

 猛威もういるった強大な魔物まもの打倒だとうした実力者。人々を困らせた問題を解決に導いた賢者けんじゃ

 人一人ひとりが成せる最大限の偉業いぎょうを成した人にあたえられる、認められた称号しょうごう

 

 小さい村の村長の家。その小さな本棚ほんだなえられた商人や書店から仕入れた数冊の英雄譚えいゆうたん

 それを目にしたとき、幼い自分は英雄えいゆうとしてたたえられたかれらに魅了みりょうされた。


 魔物まもの脅威きょういも届かない国のお膝元ひざもと。そこに生まれそこで育った小さな少年にとって。

 壮大そうだい冒険ぼうけんや強力な敵との戦闘せんとう、悪をたおして人々を救うというのはその退屈たいくつな日々をいろどる劇薬になった。

 棒きれを持っての英雄えいゆう真似まね。同年代を集めたごっこ遊び。それをするまでに長い時間はかからなかった。


 いつか世界を回って英雄えいゆうに。未知を冒険ぼうけん魔物まものたおして仲間と一緒いっしょに栄光を。

 野原に寝転ねころんでいる時も、木陰こかげの下木の棒をるった時も、いつだってそれは自分の頭にあった。

 ちかって未来を夢見て、そして年を取っていく。


 そう。確かにぼく英雄えいゆうになりたかった。

 家族の前で、友の前で、堂々とそう宣言した。

 そのために出来ることはしようと、

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る