ネーネリヨン(おっぱい姫)

かささぎの渡せる橋

ネーネリヨン(おっぱい姫)



 昔々、それはそれは美しく心の優しい娘さんがいました。娘さんの家は本当は貴族の家だったのですが、今ではすっかり貧乏になってしまい、娘さんは他の家の召使として働きに出ることになりました。頑張り屋な娘さんは全然嫌がらずにとても懸命に働いていましたけれども、娘さんはお仕えしている家の者たちからはとても蔑まれていました。


 なぜかというと、娘さんのおっぱいがとても大きくて、いやらしい形をしていたからです。この頃の人々は、おっぱいが大きいことはとても下品でだらしのないことだ、おっぱいが大きくなるのは心がいやしいから罰を受けたのだ、というふうに考えていたのです。だから、娘さんは「ネーネリヨン」―「おっぱい姫」と呼ばれて蔑まれ、物笑いの種にされておりました。


 さて、そんなある日、お城で母乳の品評会が開かれることになりました。おっぱいが大きすぎる人のことはみんな好きではありませんが、おっぱいからおいしい母乳を出す人のことはみんな尊敬し、素晴らしい人だと思っています。それで、お城では時々母乳品評会が行われ、おっぱい姫が働いている家にも招待状が届きました。奥さんや娘たちはもちろん、召使の女たちもみんな母乳品評会に行きます。上手くいけば、娘たちや召使の誰かが王子様のお嫁さんとして選ばれるかもしれないからです。家の女たちは、みんな大はしゃぎです。


 でも、おっぱい姫だけは、下品なおっぱいを持つ女は品評会にふさわしくない、と言われ、家でお留守番を言いつけられました。実のところ、おっぱい姫の母乳は上品でまろやかな味をしていて、とてもおいしいものです。品評会に出したら、大人気になることは間違いなしでしょう。だから、母乳品評会に参加したいと思っていたのですが、それは叶いません。



 「ああ、私のおっぱい、どうしてこんななんでしょう。私のミルク、みんなにもお披露目したいですわ」



 みんなが行ってしまった後、おっぱい姫は自分のおっぱいを一通り揉んでみて、がっくりと肩を落としていました。


 すると、おっぱい姫の家の扉を、コンコン、と叩く音がしました。おっぱい姫が見に行ってみると、不思議な感じのお婆さんが家の前に立っていました。



 「おっぱい姫がいるっていう家はここかえ?」


 「ええ、私がおっぱい姫ですわ。お婆さまはどなたですの?」


 「私は貧乏に困って、人から物をもらって過ごしておる。聞けばおっぱい姫、そなたは頑張り屋で心優しいと聞いた。そこでお願いじゃ。なんとかそなたの母乳を恵んではくれんかのう」


 「あらまあ、それは大変でしょう。私のおっぱいを飲んで、お腹いっぱいになってくださいな」



 おっぱい姫は両手でもつかみきれないほどの大きなおっぱいを剥き出しにすると、ぷっくり膨らんだ桜色の乳首をお婆さんの口元に差し出します。お婆さんはおっぱい姫のおっぱいにかぶりつき、母乳をちゅうちゅうと吸いました。美味しそうに母乳を飲んでくれるお婆さんを見ると、おっぱい姫もとても嬉しくなりました。


 やがてお婆さんはお腹いっぱいになったのか、おっぱいから口を離しました。するとお婆さんはたちまち魔女の格好になり、



 「なるほどなるほど。いつもそなたのことはよーく見ておったが、私の見込んだ通りそなたは良い子であり、おっぱいからは美味しい母乳が出る。やはりそなたは、今日の母乳品評会に行くべきじゃ」



 とおっぱい姫に言いました。



 「でも、私のおっぱいは大きすぎてはしたないですわ。品評会に出たら、きっと笑われてしまいますわよ」


 「ふーむ、私は大きなおっぱいが下品であるなんてちっとも思わんがのう……けれども、大勢の者が言うことならまずは従うしかないやもしれん。仕方がない、こうしておくとするかのう」



 魔女は魔法の杖でおっぱい姫のおっぱいを叩きます。するとおっぱい姫のおっぱいはするすると小さくなり、手のひらに収まってしまうまでになりました。



 「あらあら?私のおっぱいが?」


 「その大きさなら人から笑われることはなかろう。さて、早速品評会に……と言いたいところじゃが、召使の中でもいっとうぼろぼろな恰好ではのう。品評会にいる家族に気付かれるのも面倒じゃろうし、ここはちょっと変装もしておくとしよう」



 魔女はおっぱい姫に煌びやかなドレスをプレゼントしてくれ、みすぼらしくぼさぼさだった髪は綺麗に整えられて、色は変装のため魔女の魔法で元の金色から鮮やかなピンク色へと変わりました。



 「さあ、母乳品評会に行きなされ。おっと、しかし、おっぱいを小さくする術はそう長くは持たんでの。しばらくすると術が解けてそなたのおっぱいは元の大きさに戻ってしまうじゃろう。そうじゃな、夜中の12時までには城を出るのじゃ」


 「はい、行ってきますわね」



 こうして、おっぱい姫は喜んで王城へと行きました。


 さて、お城の大広間では、母乳品評会がもう盛り上がっていました。どこの家の娘さんの母乳は濃くてとろけるようだとか、どこの奥さんの母乳は甘さが絶妙だとか、うちの家ではお母さんより娘さんより、新しく入った召使の母乳がいいとか、みんな色々な女の母乳を飲んでは感想を言い合っていて、とても賑やかです。


 でも、王子様はあまり楽しそうではありません。お付きの人や大臣たちが色々な人の母乳を王子様に飲ませてみるのですが、王子様にはどの母乳もいまひとつ決め手になりませんでした。


 そんな中、おっぱい姫もグラスを手に取って、何人かの人に自分の母乳を飲んでもらいました。魔法でおっぱいを小さくされているせいで、ちょっと胸がスカスカな感じがするのは変な気持ちでしたけれども、おっぱい姫の母乳は、おっぱい姫が自分でこっそり自慢にしている通り、色々な人に、



 「こんなに美味しい母乳は飲んだことがない」



 と、褒められました。そのうちおっぱい姫の周りにはおっぱい姫の母乳を求める人がいっぱい集まって、とても賑わいました。


 それに気づいた王子様が、おっぱい姫のところにやってきました。



 「ぼくに、おっぱいを飲ませてくれませんか?」



 王子様に母乳を飲ませてあげると、王子様はとても喜んで



 「あなたのミルクが一番おいしいよ。そうだ、この品評会の優勝はあなたにしよう。表彰式では、盛大にお祝いしよう」



 と言ってくれました。おっぱい姫は天にも昇る気持ちでした。


 しかし、品評会のパーティーはとても盛り上がっていたため、表彰式が始まったのは、12時の30分前ぐらいでした。



 「どうしましょう、私のおっぱいが元に戻ってしまいますわ」



 おっぱい姫のおっぱいにかけられた術は少しずつ解けはじめ、おっぱい姫は自分の胸がぐぐぐっとせりあがりそうになるのを感じました。


 それでも、表彰式は進みます。大臣の長話や前の人の表彰のせいで、時間はどんどん過ぎて行ってしまいます。そして、いよいよおっぱい姫が優勝の表彰を受けるために、みんなの前に進み出ました。


 しかし、その時です。ごーん。ごーん。12時の鐘が鳴り響きました。



 「ああっ、おっぱいが!」



 おっぱい姫のおっぱいにかけられた術が解けてしまい、おっぱい姫のおっぱいがぐぐーんと一気に大きく膨らみました。おっぱい姫のドレスはおっぱいが膨らむのに負けてびりびりっと裂けてしまい、おっぱい姫の大きくて重くて丸々と膨らんだおっぱいが、ぼよよん、と飛び出します。品評会に出ていた人たちも、本当の姿を露にしたおっぱい姫のおっぱいにとても驚き、呆れました。



 「まあ、なんてだらしのない、醜いおっぱいなんでしょう」


 「あんなおっぱいから出た母乳を飲んでいたと思うと、気分が悪い」


 「あんたみたいな下品なおっぱいの人なんて、この品評会にふさわしくありません」



 と、みんなおっぱい姫とおっぱいに口々に文句を言いました。おっぱい姫は



 「ああ、なんということですの。こんな恥ずかしいおっぱいを人前に見せてしまうなんて、情けなくて悔しいですわ」



 と、シクシク泣き崩れました。


 しかし、王子様がおっぱい姫の前に進み出ます。



 「ああ、泣かないで、おっぱい姫。さあ立って。顔を上げて、おっぱいを見せて」



 おっぱい姫は王子様の言う通り、泣きながら立ち上がりました。


 すると、王子様は突然、おっぱい姫のおっぱいに思いっきりかぶりつき、母乳をちゅうちゅうと吸い始めます。みんなびっくりするあまり、口もきけません。おっぱい姫は最初は驚いて思わず泣き止み、王子様にされるがままにおっぱいを吸われていましたが、しばらくすると優しい笑顔で胸を張り、王子様におっぱいをあげました。母乳を夢中で吸う王子様の舌がおっぱいを這い乳首をつつくと、なんだかとても気持ちがよくなります。



 「なんと美味しいミルクなんだろう。それにあなたのおっぱいは柔らかくて、温かくて、吸っていると安心する。なんと素敵なおっぱいなんだろう。ぼくは、あなたと結婚します」



 それを聞いていた人は仰天して、ぼーっと上を向いたり、目を丸くして立ち尽くしていたりするだけでした。


 するとそこへ、魔女のお婆さんが現れます。



 「おやおや、気になって様子を見に来てみたら、思いがけず王子様と幸せな時間になったようじゃのう、おっぱい姫」


 「はい、ありがとうございます、お婆様」


 「礼には及ばぬよ。優しくて頑張り屋のお前だからこそおいしい母乳を出すことができ、王子様にも見初められることができたのじゃ。わしはちょっとだけ術で手助けをしただけじゃよ」



 魔女はそうしておっぱい姫を祝福し、おっぱい姫は王子様と結婚して幸せになったのでした。





 そうそう、あの後、ちょっと面白いことがありました。魔女はおっぱい姫に声を掛けた後、みんなの前で、



 「ふーむ、そなたらも大きなおっぱいも悪くないとは思わぬかのう。そうじゃ、いいことを思いついた。それっ」



 と、杖を一振りしました。


 するとあら不思議。品評会の会場にいた女たちのおっぱいが次々と膨らんでいき、ドレスを突き破ってぼよーん、ぼよーんと飛び出してきたではありませんか。大きなおっぱいだらけになった会場は大騒ぎです。



 「しばらくそうやって大きなおっぱいを体験してみるといい。下品だのいやしいだの言わずに、見て、揉んで、吸って、飲んで、大きなおっぱいの魅力を覚えて帰りなされ。おっぱい姫のおっぱいに夢中な王子様のようにの、かっかっかっ」



 魔女はそう楽しそうに笑いました。


 そのせいかどうかはわかりませんが、それ以来、おっぱい姫のように大きなおっぱいを持っている人がいじめられることは、すっかりなくなったそうですよ。

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