第一章 運命の学園祭
第一話 最悪の新学期幕開け
二学期――受験生にとって重要な時期に突入した。長かった夏休みを終えて久しぶりの学校に光輝は少なからず緊張していた。
「久しぶりだな。二人とも」
光輝の家の前で英莉香が待っていた。
「せいぜい一週間ぶりだろ」
「光砂、相変わらずお前の兄貴は乙女心をぶち壊しにするのが好きなやつだな」
「こいつに乙女心なんてわかるわけがないじゃない」
今日から新学期なのに、朝っぱらからひどい言われようだ。
学校に到着し、久しぶりのクラスの喧騒――一学期の最初のころとは違う自分がここにいる。少し緊張はしているが周りからの視線にも恐れない。
「オッス光輝。宿題全部できたか?」
純がやってきた。夏休み中も何度かゲームセンターで一緒に遊んでいた。
「まあなんとかな」
「そういや、受験する高校も決めた?」
「あー……まだ確定はしていないけど。そろそろ決めなきゃいけないんだよな。親にも言われたし。どうするかな。普通科の学校にしようとは思っているんだけどさ」
そんなことを話していると恵が入ってくるのが見えた。
(……)
やはりどこか心の中で嫌な気分になるのがわかった。もっとも、嫌いな人間を見ていい気分になることなんてことはない。
始業式が終わってホームルームの時間になると、席替えとなった。
(席替え……)
ようやく一学期でとりあえず同じ班の人間とは話すようにできたものの、また別の人間と同じ班になると思うとちょっと気が引けた。
(けど、仕方ない。できれば伸一か純と一緒の班になれればいいんだが――もしくはターニャでもいいけど)
席替えはくじで決められた。一人一人がくじを引いて黒板に書いてある通りの番号の席に移動する。男子が奇数、女子が偶数の数字の入ったくじを引いた。
光輝はくじを引いて黒板を見てみた。
(おっ、窓側じゃないか、って一番前か……)
窓側なのは歓迎だが、一番前というのは微妙だった。
そして早速席を移動することとなった。が――
(ぐっ……! どうして――)
ドウシテオマエガソコニクルンダヨ――光輝の後ろの席の相手は光輝を見るとすぐに視線をそらした。光輝の後ろの席は、天敵である恵だった。
(最悪――最悪だ!!)
光輝はギリギリと歯を食いしばりながら心の中で叫んだ。よりによって自分の真後ろだなんて――
(こんなクソ女にずっと後ろから見張られるのか……? マジでクソだ――)
絶望に陥りながら散々に恵に対して毒づいていた。最悪のスタートだ――光輝は頭を抱えた。
◇ ◇ ◇
ホームルームが終わるまでずっと光輝は「最悪だ」と心の中で連呼していた。
隣や前でも嫌だが、よりによって真後ろという、光輝にとって一番落ち着かないポジションである。プリントを前の席から配るときも(光輝の主観ではあるが)そっけない取り方だったし、この先ずっとこれが続くのかと思うと本当に憂鬱な気分になっていた。
「俺、また登校拒否してもいいかな?」
学校からの帰り、光輝は英莉香と光砂の二人に恵が後ろの席になったことの愚痴を漏らしていた。
「何バカなこと言っているのよ。それじゃ今までのことが水の泡になるでしょ。二学期早々もう少しマシなことを考えなさいよ」
光砂は相変わらず辛辣だった。
「おまけに一番前の席だし、本当最悪な二学期だ」
「授業に集中できるじゃないか。二学期は一番重要な時期だからな」
英莉香はフォローしたつもりだったが、逆効果だった。
「あークソ! お前はいいよな! 特等席で!」
英莉香は窓側一番後ろという一番の特等席だった。光輝は英莉香を羨みながらため息ばかりついていた。
◇ ◇ ◇
光輝は家に帰ってからも恵のことで気が滅入っていた。
(一体俺が何をしたっていうんだ? この仕打ちはひどすぎる。夏休みの宿題だって、受験勉強だって一応頑張っていたじゃないか……)
いずれにしても今日は全く勉強する気にはなれなかったので、例によってビリヤードを打ちに行くことにした。
「光輝くん、どうしたの。そんなマンガみたいに落ち込んだ顔して」
ビリヤード場の店主が光輝の表情を見て言った。
「親父さん、俺、もうダメかもしれない」
「あの子にフラれたのか」
「それならまだマシ……いや、彼女じゃないから」
光輝は一人で打ちながら色々と考えていた。このまま徹底的に自分の背中に見えないシールドを張り巡らせて恵を無視するか、それとも仲直りするか――
(……)
仲直り――絶対的に不可能なことは光輝にはわかっていた。あれだけのことをしたのだから――
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