「純情小曲集」萩原朔太郎

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     「 こころ」


 こころをばなににたとへん

 こころはあぢさゐの花

 ももいろに咲く日はあれど

 うすむらさきの思ひ出ばかりはせんなくて。


 こころはまた夕闇の園生のふきあげ

 音なき音のあゆむひびきに

 こころはひとつによりて悲しめども

 かなしめどもあるかひなしや

 ああこのこころをばなににたとへん。


 こころは二人の旅びと

 されど道づれのたえて物言ふことなければ

 わがこころはいつもかくさびしきなり。


 出典:詩集『純情小曲集』(愛憐詩篇) 萩原朔太郎 より

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 今回は萩原朔太郎の詩集「純情小曲集」を、ご紹介します。


この本は……


******明治から昭和にかけて口語自由詩を確立したとされる萩原朔太郎の第四詩集。1925(大正14)年刊行。少年期の頃の作品を集めた「愛憐詩篇」と、近年の作品を集めた郷土望郷詩からなる。


     ◇◇◇


 萩原朔太郎といえば、処女詩集『月に吠える』や、続いて刊行された『青猫』を思い出される方も多いかと思いますが、冒頭でご紹介した詩「こころ」もまた、好きな詩としてあげられることの多い一篇ですね。


 最近ふと気がつくと口ずさんでいる「こころ」

情緒溢れ、そして深々と寂しいこの詩は、わたしの心ともまた重なるようで……。

 この詩自体は、朔太郎の少年期の頃の作品ですが、萩原朔太郎は、この年齢になって改めて沁みる詩が多いです。


 それと共に

 〇大のミステリーファン。

 〇暑さに弱く暑い時期には毎年弱っていたが、寒さには強かった。

 と、何だか親近感も増します。


 そして……朔太郎の生涯にわたっての"苦悩"

 研ぎ澄まされた剥き出しの感性ゆえの(臆病さや気の弱さとも)

 深い孤独感や消えない心の飢餓感、絶望、無力感を抱えながらの生きにくさを"書くこと"で昇華させていった詩人に思いを馳せるのです。


     ◇◇◇ 


 詩集『純情小曲集』は、インターネットの電子図書館、青空文庫でも読むことができます(他の萩原朔太郎作品も)

 紙の本として手元に置きたい方には、岩波文庫の『萩原朔太郎詩集』三好達治 選 もオススメです。

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