ピッチ・ピーチ
わらびさん
ピッチ・ピーチ
疲れを感じることなく我が家に着いた。老いぼれ爺さんだった私は、若人の身体を手に入れた。おまけに顔も整っている。
〈乗り替え計画〉は現実のものとなったのだ。
転機は一週間前、桃太郎が鬼ヶ島偵察から一時帰還した際に訪れた。
「脳移植?」
私が聞き返すと桃太郎は「ええ」と頷いた。
「親玉の赤鬼は、若い鬼に脳を移植し身体を乗り換えることで若返り、永久に生きながらえていたようです」
まさかそんな――。
「とにかく、私は再び鬼ヶ島へ向かいます」
――もしそれが事実なら、夢にまで見た〈乗り替え計画〉が実現するかもしれない。
「待て桃太郎。わしも行こう」
家内の反対を振り切って私は家を出た。
私は足元に転がった死体に目をやる。若返った私に家内を絞め殺すことなど容易い。
さて、桃太郎の身体に乗り換えたことだし、若い女を探すとするか。〈乗り替え計画〉もいよいよ大詰めだ。
ピッチ・ピーチ わらびさん @warabi3
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