回想 ④
一人残された明日雛は、思い出を回想していた。
王人には言わなかった、本当の思い出を。
『蓮二君!』
明日雛は飛び降り、落下を始めた蓮二に捕まった。
そして、彼の下敷きになろうとする。
『……明日……雛……?』
その時、落下しながら、一瞬彼は意識を取り戻していた。
『蓮……二……君……何……を……』
蓮二は、重力に押しつぶされながらも体を無理やり折り曲げた。
そして……自分自身をクッションの様にして、明日雛の下に潜り込ませた。
『蓮二君……駄……目……』
『明日雛…………好きだ……死ぬな……』
蓮二は、明日雛の命だけでも守ろうとした。
それは、明日雛が彼にやろうとしたことと同じだった。
明日雛が王人に語った思い出の中には、ただ一つだけ嘘が混じっていた。
彼女は、それだけは誰にも話すことが出来なかった。
蓮二との最後の思い出は……彼女の心の中にしか、もう存在していなかった。
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