虚ろに潜む現実に

田無 竜

第一章『【虚】 ある書籍の文言』

紹介




 さて、こちらにありますは、とある人物の執筆した書籍ですわ。

 内容は、とても現実的ではない、明らかにフィクションの物語。

 わたくしの感想を言わせていただけるのなら、愚にもつかない、ホラーサスペンスのなりそこない……と言ったところでしょうか。

 ああ、あくまでわたくしの感想であって、一般評価ではありませんわよ。


 御覧になりますか?

 それとも、わたくしの方から音読いたしましょうか?

 フフ、冗談ですわ。わたくしには読み聞かせの才能は有りませんもの。

 ぜひ、ご自分でご覧になって下さいませ。


 ……え?

 わたくしとこの書籍の関係?

 そうですわね、確かに一見何の意味があるのか、わかりませんわね。

 でも、わたくしとこの書籍には確かに関係がありますわ。

 それは、貴方がこの書籍をご覧になればわかるはず。


 どうぞ、ご覧ください。

 この、理解不能で、荒唐無稽で、複雑怪奇な物語を。

 貴方御自身の手で――。

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