第25話 リフレクションシールド
懐に余裕ができたこともあり三日目は情報収集を主にすることにした。とはいえスキルの検証は続けなければならない。なので今日も外に出てヤムゴ草の採集がてら身体が鈍らないように軽く運動をする。それが終われば早速検証だ。
昨日は落とし穴で何とか乗り切ったが現在俺たちにある攻撃手段は俺の魔力操作くらいだ。でも落とし穴はガチで危ないものなので大抵はこれで乗り切れそうではある。
ただそれだけでは受けに回ることになるし高ランク依頼のモンスターには効果が薄いやつも出てくるだろう。そんな相手なら瞬時に生き埋めにしても這い上がって来そうだ。飛行タイプには『こうかがないようだ』ってなるしな。
もちろん危険は避けたい。しかしそれだけでは消費する時間が多いのでどこかで危ない橋を渡らないといけない。
それは愚かな選択かもしれないが、でも時間は戻らない。いや、もしかしたら元の世界に戻ったときには時間はあの時のままかもしれないし肉体年齢も戻るかもしれない。しかしそれは確約されている事ではないのでそんな有るかも分からない希望に縋る訳にもいかないのが現実だ。だから時間は戻らないと予想して一日でも早く戻るために手を尽くす。
ヤムゴ草集めも終わったので昨夜の実験の結果を報告し合う。
「まず俺の武具創造の結果から話すな。寝る前に昨日買った解体用ナイフと同じ物を作ってみた。結果は一本作るのがやっとでほぼMAXまで回復してたMPが25%まで減ってた」
「それだと戦闘中はもちろん日中にもおいそれと使えないな」
「そうだな。あとは習熟度でコストが減少するかMPが増加することを願って寝る前の日課にするのが今できる精一杯の事かな」
大樹の意見に賛同し次はこちらの実験結果を報告する。
「俺の方は寝る前に固定シールドを出しといた。起きたときにもそのまま残っててMPもほぼMAXだったから一度出したら一晩程度は消えずに残るみたいだな。もしかしたら自分で解除するか破壊されない限りそのままかもしれないな」
それともう二つ、つい先ほど判明してことがある。
「あとさっきお前にシールドを付けたがどうやら展開してるシールドの位置が何となく判るっぽいな」
この副次的効果は役に立ちそうだ。
「あとスキルに変化があったぞ」
「ん? おっ、シールドスキルのレベルが2になって括弧の中にリフレクションってあるな」
そうなのだ。昨日は一角兎にたくさん使ったからかシールドスキルのレベルがUPしていたのだ。そしてそれによって新たなシールド(効果?)が増えていた。なので早速試してみる。
リフレクションと意識しながら出したシールドは紙のように薄い物だった。大きさは自由に変えられるものの厚みは変えられなかった。
大樹はストレージから野球ボールより少し大きめの石を取り出しピッチャーのようにワインドアップで構える。
「待て待て待て。そのサイズだと重さは結構あるだろ。それを上手投げすると肩や肘を痛めるぞ。それに名称から反射するものだと思うからそのまま同じ軌道で返ってきてお前に当たるかもしれない。もしかしたら倍返し効果も有るかもしれないからここは下手投げにしとけ」
「レベル2で倍返しまであるか? まぁそのまま返ってきたら危ないから下手投げってのは賛成だが」
下手投げでさせるのにはもう一つ理由が有って、もし山なりの軌道で当たってその角度がシールドに対して九〇度ではなく同じ軌道で返っていくなら相手の予想外の攻撃に使えそうだからだ。
大樹はリフレクションシールドの近くの木の影に隠れるような位置に着く。俺も念のため木の影に隠れると大樹は手に持ってた石を下手投げでリフレクションシールドに向かって投げた。すると──
バリン、とリフレクションシールドが割れた。
「………」
「………」
気まずい空気が流れる。リフレクションとあるのにこれは予想できなかった。
「も、もしかしたら大きさに気を取られ強度の意識が足りなかったのかもな。だからそれを意識してもう一度出すよ」
「そ、そうだな。人間だもの、失敗くらいあるさ」
割れたシールドは消えたので今度はめっちゃ固いイメージでリフレクションシールドを出す。大樹はさっきと同じ石を手に戻すと下手投げでもう一度投げた。
バリン、とさっきと結果は変わらなかった。
またも流れる沈黙。大樹は無言でピンポン球くらいの大きさの石をストレージから出すとこっちを見ながらシールドの有った位置を指差す。もう一度出せって事なのだろう。俺はまたも固さをイメージして同じ場所にリフレクションシールドを展開する。
大樹はもはや木の影に身を隠さずダーツの矢を投げるように肘を固定して腕と手首を使って石を投げた。
山なりではなかったものの重力に引かれた石は下に軌道を変えながらシールドに当たり『バリン』と突き抜けた。
もう言葉は無かった。大樹は今度は指の先くらいの小石を手に持ちこちらをを見てきたので、
肩に肘、そして手首を使って軽く投げられた小石はリフレクションシールドに当たり跳ね返って地面に落ちた。見た感じでは物理法則そのままだった。
時間が止まったかのように静寂が辺りを支配する。そして大樹が近づいてきて俺の肩に手を置くと満面の笑みで言った。
「使えねーっ」
「【もうやめて! とっくに
条件付けでやるのかともう一度試したが結局それも割れた。
あんまりな結果に落ち込んでいたが嫌な予想が頭を
慌てて以前のシールドを意識しながらスキルを使うと厚みの有るシールドが展開された。強度や展開数を調べたが以前と同じだったので安堵する。意識すれば使い分けれるみたいだ。
「前のも変わらず使えるようだな。強度や効果はスキルレベルが上がれば比例して上がる感じなのかね」
「たぶんそうなんだろうな。反射って強いイメージ有るから無双できるかもと思ったけどこの
スキルレベルといえば冒険者ギルドのマスターであるゴリアスの斬術もレベル制でⅥだったが、20年くらいは使ってそうなスキルがⅥ止まりなら無双できるほどの高レベルにするのは難しそうだ。
「スキルレベルに関しては焦ってもしょうがないな。それに真面目な話、俺は
大樹の持ってるスキルは武具創造にストレージ、そして鑑定だ。武具創造はさっき話したようにナイフサイズの物を作るだけでMAXMPのおよそ4分の3を消費するので回復時間を考慮しても一日に作れるのは2,3本といったところだろう。
鑑定で得られる情報は有力でスキルがわかれば少なくとも奇襲の効果は薄くなるしHPやMPがわかれば臨機応変に立ち回れる。称号も場合によっては値千金の情報をくれる。だが防御の補助にはなっても攻撃に転用は無理だろうし閲覧中は隙になるかもしれないデメリットがある。
あとはストレージか。
「攻撃に使えそうなのはストレージだけで、落とし穴の他にまともな使い道がないか考えたけど攻撃以外の方法だけ浮かんだな」
もしかして昨日の川を見つけたやつか? と大樹に訊くとどうやら当たりみたいだ。
昨日、一角兎を落とし穴にダイブさせたあと二匹だけ血抜きするために川を探そうとしたとき大樹はその位置を知っていた。
ずっと共に行動してた俺にはあの場所に川があることを知ることはできなかったのにも関わらず大樹にはそれが分かった。所持スキルから考えてもあのタイミングで知れたのは一角兎に使ったストレージしかないと思ったんだよな。
大樹は膝くらいの高さのストレージを地面に広げると確信を持って言う。
「ヤムゴ草の大体の位置がわかるな。こっちか」
大樹に付いていき三枚ほど採集する。これは間違いなく場所がわかっているな。思えば冒険者試験のときに目を向けずに木剣をストレージで回収してたから、その延長にある使い方だろう。
「擬似的な
「あとこれは生き物の位置か? 収納できないのが感覚で判るからたぶんそうだろう」
本物の探索スキルよりは性能が劣るだろうが無いよりはずっと良い。
「でもこれは直接攻撃じゃないんだよな。できれば直接攻撃できる使い方がないものか」
「それならいくつか案を用意しといたぞ」
いくつか実験をした後に出る前に買っといた火打石を使い川辺で火を着ける練習を少ししてその日はすぐに街に戻った。
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