第4話 マイナスチャーム
くそビッチこと藤崎ユイは、サキュバスだった。
別に珍しい事ではない。世界中に伝説的なファンタジー住人の末裔は幾らでもいらっしゃる。
俺達の住む世界には異世界からの転移者がいて、エルフだのドワーフだの、そしてサキュバスでも転移してこちらの社会にやって来る。
国際法で排他されず保護の対象になっており、そのまま社会に溶け込みこちらで結婚して子孫を残す。藤崎がサキュバスとは知らなかったが、彼女は転移者ではなくその末裔だった。
「なる程、お前がサキュバスというのは分かった。だが、俺を変態呼ばわりする理由がわからないぞ」
ここの確認をしておかないと、俺は安心出来ない。
バレていないならば、完璧に優等生を演じ切るのみだ。
「それはね、実は私ってサキュバスの才能がおかしいの」
「才能がおかしい?」
「そう。私の魅了は体質でマイナスレベルなの。つまりね、服がエロくなればなる程、相手が真面目になって私に欲情せず、逆に厚着をすればする程欲情されて、これからの季節大変なんだよ」
「なんだ、それ? そんな事があるのか?」
「あるよぉ。だから本当は制服もきちんと着たいんだけど周囲の男子に欲情されてしまうから、こうしてはだけさせてバランスをとってるの」
「嘘だろ? どんな理由だ。大体そんな馬鹿な事があるのか?」
「たまに隔世遺伝でこういう特性が生まれるみたい」
「うーむ、驚きだが、わかった、そうならそれでいい! だが主旨をずらすな。俺が変態だという理由を聞かされてないぞ」
「ふふん、それはね、あの夏のプール授業の時、男子全員が私の水着姿を見た瞬間、マイナスチャームの影響でみんな急に真面目に泳ぎだしたでしょ。でも阿波だけは、顔を真っ赤にして、その、あの、とても言いにくいんだけど、……がふくらんでいたし……」
「ぬはっ!」
俺は思わず崩れ落ちそうになるのを辛うじて堪えた。
あれは忘れもしない夏の日。女の裸に興味のない変態である俺が、事もあろうに不覚にも、くそビッチの水着姿に欲情してしまったのだ。
もちろん、急いでプールに飛び込んだのだが、あの、その、ばれていたんですね。
「おかしいよね? 私のマイナスチャームを浴びて真面目にならないという事は、阿波の性癖って絶対に変態だよね!」
「ぐはっ!」
俺は膝から崩れ落ちた。
駄目だ、ばれた。種族特性を持ってして、俺の変態性癖は藤崎に看破されてしまった。
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