エロいだけが、サキュバスじゃありません!
福山典雅
第1話 学校NO1のビッチから相談を受けた
「阿波、ちょっと相談があるんだけど」
突然、放課後に藤崎ユイから廊下で声をかけられ俺は戸惑った。
なぜなら、彼女はうちの高校でもNO1のくそビッチだからだ。
悔しいがスタイル抜群のくそビッチ。確信犯的に制服の胸元はだらしなく開かれ、溢れんばかりの双丘がカラフルなブラをチラ見させながら覗いている。
ブレザーのスカートは短く、すらっと伸びたなまめかしい生足が肉付きの微妙な膨らみを帯び、時折下着まで見えてしまう。
しかもストレートなパリピ―ギャル系ではなく、案外真面目な発言もする小奇麗な可愛い系ギャルだ。見るからにあざとい。
そんなくそビッチの無双ぶりは体育会系男子を軽々と制圧し、先生はおろか理事長まで屈服させるチートである。
俺はこんなくそビッチが大嫌いだ。
なぜなら、高校入学以来学年一位の成績をキープし、剣道部では二年生にして主将を務め、品行方正、謹厳実直、質実剛健、ご近所さんから「阿波さんところの琢磨ちゃん、うちのお婿に欲しいわ!」と中高年からも抜群の支持を得る模範的優等生の俺だ。
こんなくそビッチは見るのも汚らわしい!
「藤崎、話とはなんだ。俺は忙しい」
冷酷な視線に嫌悪を上乗せし、低い声で冷たく言い放った。
早く俺の視界から消えろ、いや存在自体を人類にさらすな。
だが、くそビッチはお構いなしに、両手を後ろ手に組み、胸元をツンと強調しつつ俺との距離を詰めた。
「阿波に頼みごとがあるの」
その顔は俺以外なら誰もが篭絡してしまう、そんな甘い微笑みを浮かべていた。
だが、間合いにはうるさい俺だ。剣道部だからな。
頼み事か、一般学生にはそのあざとい色仕掛けが通じるだろうが、俺を舐めるなよ。
人間にはパーソナルスペースが存在する。
親しくない人間が踏み込むと、自然と自衛して距離を空けてしまうエリアだ。
お前みたいなくそビッチでも、全く接点のない俺がいきなり近づけば逆に驚くだろう、いやビビれ、そしてさっさと消え失せろ。
俺は素早く一歩踏み込み、後の先を取り逆に怯ませようとした。
「あっ!」
「えっ!」
藤崎は俺の踏み込みに一切怯む事なく進み、気が付けばお互いが唐突にぶつかり合う程の至近距離となってしまっていた。
身長差五センチ。そして俺達の距離も五センチ。
藤崎はちょっと驚いた風にその瞳を身開き、柔らかそうに膨らんだ唇を僅かに開いた。さらに豊かな胸はもう俺の胸板に当たる寸前で、開け放たれたブラウスから覗く双丘がふるんと揺れる。
「キスの距離だね」
藤崎はからかうようにはにかみ、鮮やかな追撃の甘い声を囁く。
俺は慌てて後退せざるを得なかった。
「ば、そんな事言うな!」
まるで負け犬の遠吠えみたいに叫んでしまった。
屈辱だ!
俺の脳裏に、全国大会決勝で先に一本先取された時の苦い思い出が駆け巡った。
駄目だ、ここで心を乱す事は己を捨てるも同然。
ましてやこんなくそビッチにペースを握られてたまるか!
俺は古武道で習った精神安定する呼吸方法を素早く実践する。よし、落ち着いた。
「おい、藤さ……!」
俺が言葉を発した瞬間、再びくそビッチの顔は俺の目の前にあった。
「阿波、そんなに警戒しないで」
批判するのか甘えているのか、まるで判断つかない声色だ。
くっ、これか、これなのか!
上目遣い「お願いの型」。
俺の鼻腔に甘ったるい女子特有の匂いが立ち込め、理性を凌駕せんとする脳内ホルモンを分泌させようとしている!
多くの男はこれで撃沈だ。拒むことの出来ない精神攻撃になすすべもなく陥落し、ただ「う、うん」と照れるだけだろう。
だが、俺は違う!
鋼の精神を越えたウルツァイト窒化ホウ素精神がある! (知らないなら調べて)
くそビッチに支配されてなるものか!
「ば、ちげぇよぉ!」
再び負け犬の遠吠えみたいに叫んでしまった。
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