23話
数日後、午前の補講が終わり、白鳥の病室にて。
「はあ? また、あそこに行くのかよ?」
白鳥からの指令が下っていた。
「前は、中途半端で終わってしまったじゃない。だから、今度は、高村君、烏丸君、薫の三人で行くのよ。勿論、セバスチャンも同行させて構わないわよ」
あの廃病院にもう一度行けと言っているのだ。
烏丸が取り憑かれ、白鳥が骨折し、おれがビビリまくっていた、あの廃病院である。
いい思い出は一つもない。出来ることなら、もう二度と行きたくない。
「何よ、私の命令が聞けないっていうの?」
女王様め……。
「分かったよ、行けばいいんだろ、行けば」
その夜、というか深夜。
次の日も補講だってのに、白鳥はお構いなしだ。
廃病院は、今日も不気味だった。
「お~、何か出そうな雰囲気やね。ちょっと、ワクワクするわ~」
薫は楽しそうだ。おかしいぞ、お前。これは、ゲームじゃねえぞ。
「では、私は車で待っておりますので」
何で、いつも車内待機なんだよ、セバスチャン。
もしかして、怖がりなのか。実は、今、ポーカーフェイスしてんじゃないか。
「どうしたんだい、高村君? 早く行こうよ」
「そやで。呪われた廃病院、探検開始や~」
薫がおれの腕をグイグイと引っ張っていく。
「ちょ、止めろ。ま、まだ心の準備が……」
「ここで、百物語とかしたら楽しそうやね」
こんな所でも、爽やか笑顔だ。
ていうか、それはマジで止めろ。怖過ぎる。
「でも、百物語は変な霊を呼ぶともいうよ。止めた方が良いと思うな」
「そうだぞ、烏丸がまた取り憑かれたら、どうすんだよ。霊媒体質なんだぞ、烏丸は」
「え~、でも今回は霊除けのお守り持ってるから、大丈夫なんと違う?」
そう、おれ達三人は白鳥から霊除けのお守りをもらっているのだ。
しかも、本物の魔導師であるという白鳥の祖母作。
効果は絶大なはずである。
「こんな話があるんやけど。ある病院に一人の医者が居ってな。それなりに腕のある医者やったんやと。ある日、緊急で患者が運ばれて来たんや。それで、ちょうど、その医者が当直やったんで、緊急オペをすることになった。患者は出血多量で、危ない状況だったんよ。そりゃもう、血だらけやったって。その医者は、何とか助けようとしたんやけど、ダメやった。患者は亡くなってしもたんよ。
で、患者の血がな、壁に付いてしもて、医者が拭いても拭いても、血は取れへんかったんよ。……で、その後、手術に失敗したことが頭から離れんようになった医者は、とうとうノイローゼみたいにおかしくなってしもた。それから、医者はすぐに自殺して、今も何処かで霊となって彷徨っているんやと。……そういえば、あそこにある赤いシミも取れへんかったみたいやね」
「や、止めろよ。あんなん血じゃねえよ、多分」
「でも、ここは手術室やね」
ていうか、何でこういう時に(以下略)を使わないんだよ。語りまくってんじゃねえよ。
「そういえば、さっきから、メスを持った医者が高村君の方をジーっと見てるけど」
烏丸がおれの耳元で囁いた。
「うわああああ」
またもや、情けなく悲鳴を上げるおれ。
「ご、ごめんね。冗談だよ。……あっ、でも霊はいるみたい」
「やっぱ、何かいるんじゃねえか~」
ビビリまくるおれ。
「えっ、この部屋に霊おるん?」
「うん」
「じゃあ、わいがここでカメラ回してるから、二人で地下室の方行っとってええで。わい、ここで、霊と睨めっこしてはるから」
「何で、お前そんなに楽しそうなんだよ!」
「ここは逢坂君に任せて。ほら、行くよ、高村君」
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