6話

「私の所に恋愛相談に来る子の約四割が、烏丸君狙いなのよね。諦めなさいとキッパリ言いたいのだけれど、中々そうもいかないのよね。あの手この手を尽くしたけれど、ことごとく敗北よ」

 あの手この手とは、簡単に言えばワイロだ。

 プチセレブな白鳥様は、そいつの欲しい物(ゲームとか)や高級お菓子で釣るのだ。

 相談者(主に女子)の良い所を伝えたり、アピールさせてもターゲットがなびかなかった場合の、最終手段だ。

試しに付き合ってみれば、意外と上手く行ったという事例も少なくはない。

もちろん、お互いが両思いっぽかったら、そんなことはしない。告白場所をセッティングして、自信を付けさせて終了、ハッピーエンドだ。

しかし、烏丸にだけは何をしても効果がなかった。

基本、ワイロを贈りに行くのはおれだが、烏丸だけは白鳥が直談判に行った。

ついに、現金が出て来たのはさすがに引いた。

『お金で人の心は買えないよ』

 その時の烏丸の名言である。

 白鳥の心に刻まれていることを願う。

「烏丸君には本当に参ったわ。振られても、彼を嫌いになった子は一人もいないのですもの」

「振り方も紳士的だもんな」


『君の気持ちは、とても嬉しいよ。でも、僕は君とは付き合えない。ごめんね。……僕を好きになってくれて、ありがとう』

 とても優しい笑顔で言うとのことだ。


 そりゃ、嫌いにはなれないよ。

「彼、男子からも告白されたそうよ。やんわりと断ったらしいけど」

「おれが女だったら、惚れてるかもな」

「それに、彼の粗を探そうにも、見付からないのよね」

 溜め息を吐く白鳥。

「……ベタ褒めだな」

 白鳥に褒められる男子は烏丸くらいだ。

「やっぱり、もう少し早く調査に乗り出すべきだったわね。……粗の無い人間なんて、いないのだから。烏丸君の弱みを見付けるわよ」

「お前、今、すごく嫌な奴みたいだぞ」

 完全に悪役じゃねえか。

 お前、一応、ヒロインだぞ。

「そういえば、高村君。あなた、修学旅行で行動班も、旅館の部屋も烏丸君と一緒だったわよね?」

「ああ、そうだけど……」

「四六時中、一緒だったのなら、弱みの一つも見付けられたわよね?」

「確かに、四六時中、一緒だったけど……。別に、いつもと変わらなかったぞ」

「本当、あなたって使えないわね。夜とか、何も語り合わなかったの?」

 女子と同じにすんじゃねえよ。

「枕投げはした。後は疲れてたから、すぐに寝た」

「男子って、本当に馬鹿……」

 呆れる白鳥。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る