1話
◇
夏……。眩しい日差しが容赦なく照りつける季節……。
「暑い暑い暑い暑い、何で夏ってこんなに暑いのかしら」
「夏だからだろ」
夏は暑い、当たり前だ。
七月中旬。
修学旅行、期末テスト、夏季クラスマッチを終えた、県立桜木高校には夏休みムードが流れていた。
「ねえ、五月の蠅って書いて、五月蠅い(うるさい)って読むじゃない」
「そうだな、それがどうした?」
「七月か八月の蝉って書いて、七月蝉いの方が合っていると思わない?」
この、漢字に文句を付けている美少女が白鳥美和子。
自称白魔導師であり、おれ高村秀の御主人様でもある。
おれが白鳥の下僕にされてから、早や、一年と数ヶ月。
今日も今日とて、こいつのお供をしている訳で……。
「それよりも、五月蠅いか七月蝉いか、よ。どう考えたって、蝉の方がうるさいじゃない。この蝉の鳴き声が暑さを助長させているのよ」
セミが鳴いていると、夏って感じだもんな。
「おれにとっては、どっちでもいいんだけどな」
うるさいを漢字で書かないから。
「そうね、高村君は蠅という字も蝉という字も書けないものね。残念でした」
白鳥は毒舌キャラである。特に、おれに対しては酷い。
本人は「ツンデレ」と言っているが、デレが極端に少ない。見れたら、超ラッキー。
「そういえば、また恋愛相談が来てたぞ」
自称白魔導師、白鳥様をこの学校で知らない者はいない。
かなりの美少女だから嫌でも目立つし、何せキャラが濃いのだ。白魔導師って……。
白魔導師の使命なのか、白鳥の気まぐれなのかは分からないが、悩み相談を請け負っている。
白鳥の本命は心霊的な悩みだが、今までほとんどが恋の悩みであった。
高校生だから、仕方ないけど。
「何で、こう暑いのに恋なんかするのかしら。見てるこっちも暑くなるわ」
夏休み前だからな。彼氏彼女を作っておきたいんだろう。
「で、どうすんだ? 今日は止めるか?」
「まあ、仕方ないから受けてあげるわよ」
こんな奴のアドバイスで上手くいくのかと思うだろうが、実際に上手くいっている。
カップル誕生も、それなりに多い。
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